2015年6月20日土曜日

Arrosticini Abruzzesi 羊肉の串焼き アッロスティチーニ

見た目は日本の焼きとりか東南アジアのサテみたいですが、これは仔羊を竹串に刺して炭火で焼いた、アッロスティチーニというれっきとしたイタリア料理。
長靴半島を縦断するアペニン山脈を境に、首都ローマのあるラツィオ州と隣接するアブルッツォ州というところの郷土料理です。

外国人にとってはあまり馴染みがない州のひとつ アブルッツォ。
どんなところかというと、地理的にはローマの東側にありイタリア中部に位置していますが、歴史上 14世紀から19世紀のイタリア統一までの長きにわたりカンパーニャやプーリア、カラブリアなどシチリアを除く南部全域を治めてきたナポリ王国の支配下にあったことから、現在でも南イタリア系の文化が色濃く残る地域。
アドリア海に面していますが平野のように開けた土地はほとんどなく、国立公園にも指定されている雄大な山々と手つかずの豊かな自然が魅力の"緑の州"で、冬はローマからほど近いスキーリゾートとしても人気。
主な産業は観光業のほかでは農業や酪農で、夏の間この山々で羊に牧草を食べさせ、冬にはジプシーのように暖かい南のプーリア州あたりまで大移動するトランスマンツァという羊の遊牧が今も行われています。

この伝統的な遊牧がもたらした独特の食文化と料理については、またの機会に記事にします。

さて、串焼料理は全国的にはスピエディーニと呼ばれ、肉やカラフルな野菜などを交互に刺したブロシェットのようなものや前菜向きの小さなピンチョスみたいなものまでいろいろあります。
でもアッロスティチーニの場合は串に刺すのは羊肉と決まっています。
アブルッツォ州では肉といえば羊、街にはアッロスティチーニの専門店があったり、家庭にもたいがい専用の焼き台があるというほど地元では人気の定番料理なんですねぇ。

日本の焼きとりは塩かタレをつけて焼きますが、アッロスティチーニはシンプルに塩のみか、少しローズマリーの香りを添えて焼きます。
羊肉の独特の風味が苦手な人もいますが、今日のようにローズマリーとオリーブオイルでマリネしてから焼いて、レモンを搾りかけて食べると美味しくいただけます。
味はちょっとカシラにも似ていてビールが欲しくなる系の旨さですが、あちらの料理は大概ワインと一緒に味わうことを前提にした味の構成になっていて、羊肉独特の風味も含め、タンニンのしっかりしたワインが良い調味料になります。

合わせるのは同じアブルッツォ州産でイタリアワインを代表する銘柄のひとつでもある モンテプルチアーノ ダブルッツォ。
ジューシーで風味豊かな羊肉によく合います。

Ingredienti (per 4 persone)

ラムロース400g
ローズマリー2枝
オリーブオイル適量
適量
レモン1個

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

羊肉はロースト用などのかたまり肉を用意します。
肉は2cm角ぐらいの大きさに切り分けます。
ローズマリーとオリーブオイルに肉を漬けてしばらくマリネにしてから竹串に刺していきます。

あちらではきちんと立方体に切った肉が整然と串に刺さったものが流通していますが、それは冷凍肉を棒状に切って横から串を刺してから機械で縦に切り揃えた工場生産品です。
日本だとそういう形状のものはいかにも冷凍品という感じで好まれないので、普通の焼きとりのように適当に串に刺します。

ベランダや庭で炭火を起こせる場合は炭火焼きにします。
このとき串が焦げないように焼き網の上に薄い煉瓦などを並行に置いて仮設の焼き台を作り、こまめに串を回しながら焼き上げます。
炭火が無理な場合は魚焼きグリルを使います。
手前や奥の方にあまり火があたらない構造ならそのまま串を焦がさずに焼けますが、焦げてしまう場合は、ちょっと面倒ですがアルミホイルで串を巻いてから焼きます。

肉が焼きあがってしまうよりちょっと前、肉の表面がまだジューシーなうちに塩をふって味をつけます。
皿に並べてローズマリーの枝を飾り、レモンをたっぷり搾ってオリーブオイルを垂らしかければ出来上がり。

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