2019年9月1日日曜日

Fritto di Funghi Prugnolo 本占地茸のフリット

童話の絵本でよく見る西洋きのこみたいにずんぐりして愛くるしい姿の本しめじ茸を、高温でさっと揚げて薄い衣の下に秋の薫りを閉じ込めた本占地茸のフリット。
香り松茸、味占地と言われるだけあって食味は国産きのこでは最高峰、揚げたてにパルミジャーノをぱらぱらとふって熱々をいただきます。

残暑のなかにも時おり秋を感じる時期になりました。
日中はまだ真夏日に達するかどうかという暑さですが、連日の寝苦しい熱帯夜からは解放されて朝晩はかなり過ごしやすくなりましたね。
それに夜はコオロギたちの音色が賑やかで秋の訪れを感じます。
今年の立秋は8月8日でしたので立秋から早や一月ほどが経ちました。
暦の上ではとうに秋本番ですが、実際の気候は一ヶ月ほどずれるのと、8月は残暑が厳しく学校も夏休みなので、感覚的には8月末までが夏。
気象庁も9月から11月までの3ヶ月間が秋と定めています。
ただ、爽やかな秋晴れが続くようになるのはもう一月ほど先のこと。
今の時期はまだ夏から秋への季節の変わり目であり、秋雨前線の停滞や台風の襲来などにより気温も高く雨の多い日が続きます。
実は、秋は一年で最も雨の多い季節。
梅雨の時期よりも多いというから意外です。
そして、この適度に気温が高く雨が多い気候が茸の発生を促します。
きのこが秋の味覚とされている所以です。

きのこは一見すると他の野菜と同様に植物の一種のように見えますが、実際には植物ではなくカビと同じ菌類。
地球上の生態系循環サイクルの最終工程を担っています。
どういうことかというと、樹木などの植物は土壌中の無機物を吸収して光合成によって有機物を合成(生産)し、葉や実などの有機物を動物が摂取(消費)して生命活動を維持しています。
枯れた植物や動物の死骸などの有機物は、かつて(白亜紀以前まで)は分解されずにそのまま化石となって堆積するしかなく、長い年月を経て石油や石炭などの化石燃料になったんですが、ある時から菌類が登場しこれらの有機物を分解(還元)して無機物に変え、最終的に土にかえすという役目を担うようになりました。
菌類が還元した無機物は再び植物が吸収するので、ここで初めて物質が循環するというサイクルが形成され、地球上の生態系が半永久的に維持されるようになったんです。

ところで、バクテリアのような微生物ならまだしも、あんな愛くるしい形をしたきのこがどうやって有機物を分解してるのでしょうか。
実は、私たちがきのこと呼んでるアレは子実体と呼ばれ、胞子を飛ばすための道具に過ぎず、ご本尊様は土中や朽木の中に巣食ってカビの根のような菌糸を張り巡らしているんです。
オオクワガタを飼育したことのある方ならよくご存知かと思いますが、菌糸ビンの中に詰めたオガクズの隙間という隙間に白い菌糸がびっしり張り巡らされるんですが、あれがきのこの本体です。
きのこは胞子を飛ばすことで繁殖するんですが、雨が降り続いたりして気温や湿度などの条件が揃うと子実体を発生させるというわけです。

話がちょっと科学的になってきましたが、バイオテクノロジーの進歩で10年ほど前に人工栽培に成功したきのこが今日の本しめじ。
栽培ものといっても値段はそこそこ高価ですが、人工栽培など不可能とされていた時代は幻のきのこと呼ばれ、天然ものが市場に出回ることはきわめて稀で、高級料亭でしか味わうことができない希少食材でした。
香り松茸、味しめじなどと言いますが、そのしめじとはブナシメジなどのことではなく、この本しめじを指した言葉。
ずんぐりして全体に丸っこいところが童話の絵本のイラストのようでもあり、ちょっとポルチーニにも似て西洋きのこ風の外観をしてますが、味はポルチーニやトリュフと違って日本人が好むきのこの味そのもの。
西洋人と日本人では好むきのこの風味がそもそも違うんですね。

旨みの強い本しめじは、和食なら網焼きにして醤油をちょっとたらすか天ぷらなどがおすすめの食べ方。
ならば、イタリア料理の場合もグリルしてオリーブオイルやバルサミコをかけたり、今日のようなフリットにすると美味。
香りはさほど強くないので、揚げたての熱々にパルミジャーノをかけて芳醇な香りをプラス。
塩と黒胡椒を挽いて、仕上げにレモンを搾りかければ、秋の夜長の良きワインのつまみになりますよ。




Ingredienti (per 2 persone)

本しめじ10本
小麦粉適量
ベーキングパウダー少量
氷水適量
サラダ油適量
オリーブオイル適量
岩塩適量
黒胡椒適量
レモン1/4個
プレッツェーモロ5枝
パルミジャーノ適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

本しめじは洗わずにそのまま縦半分にカットします。
レモンは櫛切りに、プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)は粗みじん切りに、パルミジャーノはすりおろしておきます。

小麦粉にごく少量のベーキングパウダーを混ぜ、ボウルに氷水とともに入れて軽くかき混ぜて、ゆるめの衣を作ります。
粉と水とが完全に混ざりきらなくても大丈夫です。

サラダ油に風味づけでオリーブオイルを少量加えて火にかけます。
きのこに軽く小麦粉をふり、余分な粉をはたいてから衣にくぐらせて、190℃に熱した油でからっと揚げます。

油を切って皿に盛り、岩塩と黒胡椒を挽きかけます。
すりおろしたパルミジャーノをぱらぱらとふりかけ、パセリを散らし、櫛切りのレモンを添えれば出来上がり。

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