2018年9月22日土曜日

Funghi e Salvia Fritti 舞茸とセージのフリット

天ぷらなど揚げて美味しいきのこの舞茸とスパイシーな香りのセージを高温の油でさくっと揚げた秋の香りのフリット盛合せ。
揚げたて熱々に岩塩と黒胡椒を挽いて削ったパルミジャーノでふんわり香りづけした、シンプルだけど舞茸の旨みが引き立つ一皿です。

ある食材を使って何か料理を作ろうってなったら、切って並べるだけの刺身やサラダを除けば、なんらかの加熱調理をするわけですよね。
加熱する目的ですが、まずは生だと食べられない食材に火を通すことで安全に食べられるようにすること、そして脂肪やたんぱく質が融けたり旨み成分に変質することで素材を軟らかくしたり風味を良くしたりし、さらに出汁や調味料の味も染み込んで美味しく食べられるようにする。
だいたいこんな感じでしょうか。
その加熱調理のやり方ですが、ちょっと考えてみればわかることですが大まかには焼く(炒める)、煮る(茹でる)、揚げる、蒸す、の四種類ぐらいしかバリエーションがありません。
料理のレシピは検索すれば世界中に星の数ほどあるという時代ですが、火を通す方法はとどのつまりそれしかないんですねぇ。

そのうちの例えば焼くという調理法。
日本語だとフライパンで焼くのも、鉄板で焼くのも、オーブンや七輪やバーベキューで焼くのも全部同じ焼くという言葉を使いますよね。
一方、もともと狩猟民族で長らく肉とパンを主食としてきた西洋では、焼くという調理法はとくに重要で、表現もより細分化されています。
英語圏の場合は、フライパンで焼くのがフライ、バーベキューのように下からの火でこんがり網焼きにするのがグリル、オーブンで焼く場合は水分のある素材を乾燥した熱気で焼き上げるのがベイク、肉のかたまりなどをじっくり長時間焼くのがロースト、高温の天火で表面に焦げ目がつくよう炙るように焼くのをブロイルといいます。
欧米ではどこの家のキッチンにも大型オーブンが据付けになってるのが当たり前というだけあって、オーブン調理の表現は多彩ですね。
あとは同じパンを焼くのも生地から焼くのは先のベイクで、朝食などで食パンの両面に焦げ目をつけて焼くのはトーストです。
鰹の叩きのように、中まで火を通さず表面だけを香ばしく炙る焼き方はシアーといいますが、最近は日本語のタタキでも通じたりします。

ところで油で揚げるのもフライパンで焼くのと同じフライを使います。
フライパンで焼くときは油をしくわけですので、英語圏では油で揚げるのもその延長のようなものと考えてるのでしょうか。
厳密にはスティアーフライもしくはパンフライとディープフライという使い分けこそあるものの、熱した油で調理するという点で調理法として同じ括りでとらえているようで、そこをあえて区別することにさしたる重要性はなかったんでしょう。
揚げもの文化の先進国といえばなんといっても中国。
中華鍋を強火にかけて高温の油でかりっと揚げた油淋鶏や春巻や排骨、炒めものでも一旦油通し=素揚げにして短時間で均一に素材に火が通るようにしてから炒める酢豚や青椒肉絲、茄子味噌炒めなどが中華料理の真骨頂ですよね。

一方、西アジアや中東、地中海沿岸でも揚げもの文化が発展しました。
遊牧民が小麦や豆を栽培したり羊や山羊を飼い定住するようになると、あたりに自生するオリーブを搾油して良質の食用油が抽出できることを発見し、紀元前には既にオリーブの栽培が始まりました。
オリーブオイルの登場はこの地域の人々の食生活を飛躍的に豊かにしたことは想像に難くないですが、さらにそれまで焼くか煮込むぐらいしかなかったところに油で揚げる=フリットが加わったわけです。
高温の油で表面がかりっと固まり中の水分や旨みが閉じ込められるのでしっとり軟らかく火が通って、煮ても焼いても硬くて食べられなかった食材も美味しく食べられるようになりました。
さらに小麦粉の衣をつけて揚げると衣の中で素材が蒸し上げられるのでふっくらとジューシーに揚がるんですよねぇ。
貧相な調理法しかなかった時代に突如として登場したフリット、きっとえもいわれぬ美味しさだったに違いありません。

さて、日本でおなじみの天ぷらも、元は安土桃山時代にポルトガルから長崎に伝わったフリットが起源と言われています。
その後は江戸時代の屋台文化等を経て庶民的な料理として発展を遂げ、今や日本を訪れる外国人にも人気の日本料理を代表する一品です。
秋の天ぷらの主役はやはりきのこ。
油で揚げて美味しいのはなんといっても舞茸です。
今日は舞茸と大葉の天ぷらをイメージした舞茸とセージのフリット。
衣は厚くしすぎずに素材が見える程度の天ぷらに近い仕立て、ほんのりチーズの香りを纏わせて舞茸の旨みを引き立てます。

Ingredienti (per 4 persone)

舞茸2パック
セージ10枝
薄力粉適量
ビール(または炭酸水)150ml
適量
パルミジャーノ適量
レモン1/4個
岩塩適量
黒胡椒適量
オリーブオイル適量
サラダ油適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

舞茸は小房に分けます。
セージは葉を茎から外しますが枝先の新芽はそのまま使います。
パルミジャーノはパウダー状にすりおろしておきます。

ボウルに薄力粉と塩少々を入れ、ビールまたは炭酸水を注いで氷を加え菜箸などでさっくりと混ぜ合わせます。
混ぜすぎるとグルテンが出て粘りが出てしまいます。

深めのフライパンにサラダ油を注ぎ入れ、オリーブオイル少々を足して170℃に熱します。
オリーブオイルだけで揚げると味が重たくなってしまうので、あくまでサラダ油をベースにオリーブオイルの香りを足す程度にします。

舞茸とセージを順にボウルの衣にくぐらせ、熱した油に投入して全体がかりっとなるまで揚げます。
少なめの量の油で揚げる場合は、材料を一度に入れ過ぎると油の温度が下がってしまうので、時間差をつくり少しづつ投入してください。

揚がったら油を切って皿に盛り、岩塩と黒胡椒を挽きかけます。
舞茸の上を中心ににパウダー状に削ったチーズをぱらぱらとふりかけ、レモンを搾りかければ出来上がり。

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