2017年10月21日土曜日

Sarde Scottate 秋鰯の炙り

塩で軽く〆めた鰯の皮目をバーナーで香ばしく炙り、オリーブオイルをまわしかけていただくシンプルだけど超絶旨い秋の前菜。
じゅわっと滴り落ちた脂が燻されて燻煙の香りも移るので、レアなのに炭火焼きのような味わいの一品です。

今年は秋の味覚を代表する秋刀魚が不漁ですよね。
恒例の目黒の秋刀魚祭りなんかも急遽昨年獲れた冷凍ものをふるまったなんてニュースが象徴的でした。
ここにきてようやく水揚げも戻り値段もこなれてきたけど、見るからに痩せ細っていて脂もあまり乗ってないという状況では、いくら安くても買って食べたいとは思わないですよね。
関東などでは今年は夏も長雨と冷夏で消化不良に終わったというのに、秋いちばんのお楽しみまで不発とは切なすぎますが、秋刀魚の代わりに同じ青魚の鰯の美味しさを再確認してみるのもいいですよ。
秋は回遊性の青魚たちが夏場にたっぷり餌を食べまるまると太る季節、秋刀魚だけでなく鰯だっていちばん美味しくなる時期です。

かつては獲れすぎて大衆魚の代名詞だったイワシも、漁獲量が激減して高級魚の仲間入りをする日も近いなどと言われて久しいですが、最近になってようやく改善の兆しがでてきています。
今年はとくに豊漁で前年比5倍ペースの水揚げがあるそうですよ。
数十年の周期でレジームシフト=魚種交代が繰り返されるという仮説はこちらの記事で説明していて、イワシの不漁は既に底を打ち反転上昇に向かうと予測されていましたが、その仮説を立証するかのような状況が続いているというわけですね。
冬に備えて皮下脂肪をたっぷりとつけるので脂の乗りも申し分ないし、豊漁続きで値段が安いのも嬉しい限りです。
きらきらとして鮮度抜群のものはまずは刺身で。
脂の融点が低いので口に含むとすっと溶けて旨みが広がるし、脳の機能を活性化したり血液だってさらさらにしてくれますよ。

刺身を味わったら次はどうするかって話ですが、塩焼きもいいし煮魚ももちろん旨いんですが、その前に是非試してみたいのが炙り。
炙るというのはご存知のとおり、焼くのとは違って中まで火を通さずに半生の状態で表面だけ香ばしく焼き目をつけること。
昔からあるものだと鰹のたたきがそうだし、最近では回転寿司なんかで炙りトロとか炙りサーモンなんかが流行ってますよね。
刺身で美味しい魚介はほぼ例外なく、炙るともっと美味しくなります。
加熱することによって生のときはあまり感じなかった甘みや旨み成分が前面に出てきて、焼き目の香ばしさもそこに加わります。
それでいて中はレアの刺身なので、炉端焼きと刺身の両方の美味しさが一度に味わえるようなものなんですね。
魚だけでなく活タコ、イカ、海老、帆立などの貝類、生シラス、さらにウニまでもが、さっと炙ることで生よりも断然美味しくなります。
そして、炙るというひと手間の効果がいちばん絶大なのが、とろとろに脂が乗りまくった秋刀魚や鰯などの秋の青魚。
白く凝固していた脂が温められることで溶けるので生では感じなかった脂本来の旨みが口の中に広がるのと、落ちた脂が燻されることによって燻煙効果で炭火焼きのような味わいになります。

さて、このブログではイワシ料理はこれまでも何度も登場しています。
トマトで煮込んだアンコーナ風スカペーチェ(南蛮漬け)、鰯の身でパン粉とレーズンと松の実を巻いて焼いたパレルモ風ベッカフィーコポルペッティーニ(つみれ)のパスタシチリア風インヴォルティーニなどを取り上げてきましたが、なんといってもマリネなどの刺身料理は最多出場で今日の炙り(たたき)を含めるとなんと6回。
直近では今年の梅雨の時期にミントを散らした入梅鰯のマリネを載せたばかりなので今年だけでも二度目。
イワシ愛が止まりません。笑
今日のように中は生のままで表面だけさっと炙った香ばしい炙り(たたき)は、いかにも日本的な流れをくむ和製イタリアン。
普段はオーソドックスなイタリアの家庭料理のようなものが好みですが、とくに季節感を出したいときや繊細な盛付け、そしてやはりなんといっても刺身料理では和食の考え方を取り入れたくなるんですよねぇ。


Ingredienti (per 2 persone)

マイワシ(大)4尾
粗塩大さじ4
にんにく2片
オリーブオイル大さじ3
白ワイン大さじ1
ローリエ1枚
レモン1/4個
ベビーリーフ適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

イワシは頭を落とし、手開きではなく包丁を使って三枚におろしてから流水でよく洗います。
両面にたっぷりの粗塩をふってジップロックなどに入れ、スライスしたにんにく、ローリエ、白ワイン少々を加えて優しく揉むように馴染ませ冷蔵庫で15分ほど〆めます。
塩の浸透圧でイワシから水分が出ますが魚臭さも一緒に抜けます。

イワシを流水で洗い流してから水気をふきとります。
シンクなど火が燃え移る危険がない場所に魚グリルのトレイを置いて、イワシを並べてクッキングバーナーで皮目を炙ります。
いい感じに焦げ目がついたら皮目は完了、野菜に生臭さが移らないよう裏返して両面を炙ります。
途中、トレイにぽたぽた落ちた脂めがけてバーナーの炎をあてるようにすると、燻煙の香りもイワシに移って香ばしく仕上がります。

半身を二等分か三等分に切り分け、ベビーリーフを敷いた皿にどさっと盛り付け、上から軽くレモンを搾りかけます。
オリーブオイルをまわしかけ、軽く黒胡椒を挽けば出来上がり。

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