2019年9月7日土曜日
Rigatoni alla Vaccinara ローマ風牛テール煮込みのパスタ リガトーニ
二日目のカレーみたいに味がよく馴染んだローマ風の牛テール煮込みは肉がほどよく煮崩れてコラーゲンたっぷりでとろとろ、歯ごたえのあるリガトーニを合わせるところもローマ風です。
今や日本人にとっても身近な食べものイタリアン。
お洒落な高級レストランでちょっぴり気取って食べるというイメージもある一方で、サイゼリヤやグラッチェガーデンズのようにイタリアンに特化したカジュアルなチェーン店も増え、安価なのになかなか本格的な味を手軽に味わうこともできます。
とくにパスタは家庭でも普通にお昼や夕食の選択肢のひとつになり得るコンテンツですし、手軽なレトルト製品や冷凍食品、職場や外出先ならコンビニ弁当のパスタなどもとても充実しています。
にんにくの香りとたっぷりのオリーブオイル、濃いめの塩味でチーズをふんだんに使う調理法は、出汁と醤油で薄く味つけして白飯と味噌汁でいただく和食とは対極にあるかのようですが、むしろ日本人の口に合う日本人好みの外国料理のひとつ。
共通するのは季節感を大切にすることと、フレンチのように素材の味がわからなくなるほど濃厚なソースで味つけせずに、素材そのものの味をなるべく損ねず大切にするということ。
ちゃんと通じるものがあるから自然と好まれるようになったんですね。
さて、そんなイタリア料理の本質は大きく二つあると思います。
ひとつはルネッサンス期に確立された貴族の料理。
当時のイタリア(統一国家ではなかったですが)では、フィレンツェがルネッサンス開花の街として栄華をきわめていて経済的にも文化的にもヨーロッパの他の諸国を圧倒していました。
食事作法に関しても、フランスをはじめとするヨーロッパ各地の宮廷の宴席ではまだ木製や錫で作られた大皿に料理が盛られ、肉の料理などはナイフで切り取って手づかみで食べるのが正式なものだったんですが、イタリアでは既に一人一人に銀器や陶器の皿が用意されて、取り分けた料理をナイフとフォークを使って食べるという、現代に近いスマートで清潔な食事作法が確立していました。
メディチ家のカトリーヌ妃がフランス王家に嫁いだ際、お抱えコックやスタイリストなど千人規模の付き人や世話係を帯同していったことで、この分野では後進国だったフランスにも煌びやかな宮廷料理が伝わり、現在のテーブルマナーやコース料理体型の基礎となったわけです。
今でこそ西洋料理の中心はフレンチと考えられていますが、元となったのは実はイタリア料理だったんですねぇ。
もうひとつの本質がクチーナポーヴェラ=いわゆる貧乏人の料理。
経済的に貧しい時代の質素な料理や、残りものを使い回したり無駄なく使いきるというもったいない精神の料理です。
かちかちに硬くなったパンを捨てずに再利用したのがパンツァネッラやパッパアルポモドーロ、アクアコッタといったトスカーナの田舎料理。
富裕層が食べない内臓肉などを貧しい労働者たちが工夫して食べたのがローマやナポリなどに多いホルモン料理。
高価なチーズの代わりにパン粉をかけただけのシチリア風のパスタや、袋にちょっとづつ残ったショートパスタを寄せ集めて一品作ってしまうナポリのパスタミスタ、肉やソーセージをたっぷりのトマトで煮込んで残ったソースだけをかけて食べるパスタも南イタリア風です。
日本ではソースだけで具がないパスタなんて家庭でも作らないですが、肉を煮込んだあとに残った旨みのしみ出たトマトソースで作るパスタは貧乏どころかむしろ贅沢だと思いますけどねぇ。
Coda alla Vaccinara という名前の牛テール煮込みはローマならではの有名な郷土料理ですが、もともとはやはり貧乏料理。
その貧乏料理すら残ってしまいパスタのソースに使いまわした最終形が今日の一皿、究極の貧乏料理というわけです。
ソースがローマ風なのでパスタも歯ごたえがっつりのリガトーニ。
ほどよく煮崩れた牛肉がとろとろでコラーゲンたっぷりの一皿ですが、ご家庭で作る場合は普通にビーフシチューの残りでお試しください。
Ingredienti (per 2 persone)
リガトーニ | 220g | ||
ビーフシチューなどの残り | レードル3杯 | ||
にんにく | 1片 | ||
赤ワイン | 大さじ2 | ||
オリーブオイル | 大さじ2 | ||
塩 | 小さじ1 | ||
黒胡椒 | 適量 | ||
プレッツェーモロ | 5枝 | ||
パルミジャーノ | 適量 | ||
パスタの茹で汁 | レードル1.5杯 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
にんにくは包丁の腹で潰し、プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)は粗みじん切りに、パルミジャーノは粉状にすりおろしておきます。フライパンにオリーブオイルをたっぷりしいてにんにくとともに弱火にかけ、香りが出てきたらシチューの残りを加えます。
必要に応じて赤ワイン、塩、胡椒で味を調整します。
同時に隣でパスタを茹で始めます。
リガトーニは大きくて厚みもあるので茹で時間は長めです。
パスタのグルテンが十分に溶け出た頃合の茹で汁をフライパンに加え、ソースを少しのばします。
パスタがソースを吸いたがるので、ソースの水分をやや多めにしておく必要があるためです。
パスタは表示よりやや早めに上げフライパンに移したら手早くあおり、パスタにソースを吸わせながら煮含めていきます。
もう一度味を見て必要なら塩で味を調整します。
皿に盛って黒胡椒を挽き香りづけにオリーブオイルをたらし、チーズと刻んだプレッツェーモロ(イタリアンパセリ)を散らせば出来上がり。
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