2018年5月12日土曜日

Lingua Bollita con Salsa Verde 茹でたん

青葉の季節が似合う牛たんを香味野菜と一緒に弱火でじっくり茹でて、箸で切れるほど軟らかく仕上げたイタリア風茹でたん=ボッリート。
火を止めたら鍋ごと一晩置いてブロードの旨みを肉に戻し、温め直して分厚く切り出し山葵ではなくサルサヴェルデを添えていただきます。

日本では焼いて食べることの方が多い牛たん。
ぷりっとして弾力のある歯ごたえが心地よく、噛むと旨みがじゅわっとしみ出てきてどこまでもジューシー。
炭火焼きの香ばしさとも相俟ってお酒もご飯もめっちゃ進む美味しさ。
そしてなぜか懐かしい気持ちになる日本人好みの味でもあります。
牛たんって焼肉屋でレモン搾って食べるあの薄っぺらいやつね、なんていまだに混同してる人もいるかもしれませんが、どちらも牛のタン=舌ではありますが、焼肉屋で食べる薄いやつは普通は牛たんとは呼ばずにタン塩と呼びますよね。
牛たんと呼ぶ場合は仙台名物のアレと決まっています。
厚切りの牛たん数枚にぴりっと辛い南蛮味噌漬け、キャベツ、麦ご飯、テールスープなどがセットになった定食スタイルがお約束ですよね。

その仙台風の牛たん、かなり歴史が古いかと思いきやそうでもなくて、戦後日本に駐留していた米軍向けの牛肉の余りものだった舌(タン)と尾(テール)を有効利用しようと考案されたものなんです。
牛たん焼き発祥の店が勾当台公園のほど近くに店を構える太助。
今年でちょうど創業70年を迎えるそうです。
誰かが繁盛すれば真似て追随するのが世の常、㐂助(喜助)とか福助、善治郎など似たような名前の店が次々できて今じゃどこも老舗です。
新興勢力では伊達の牛タンや利久などのチェーン店なんかも有名だし、駅ナカには寿司通りと並んで牛たん通りなる名店街ができ、出張などの移動の合間にも手軽に仙台名物を味わえるようになりました。

さて、タン塩もこりっとして美味しいんですが、牛たんは噛んだときにジューシーな旨みが滲み出てきて味もわりと濃厚、つまりどちらも同じ牛の舌なのに味がかなり違うんです。
タン塩は薄くて牛たんは厚切りだからでしょうか。
それとも牛たんはプロの職人が焼いてくれるからでしょうか。
まぁそれも多少は味の違いの要因かもしれませんが、いちばんの理由はただ切って焼くだけのタン塩に対して牛たんは熟成させることで旨みを引き出してるからなんです。
分厚くスライスしたら両面に浅く切り込みを入れて、粗塩と酒をふって元のように貼り合わせてラップに包み、冷蔵庫で何日か馴染ませます。
数日後、肉を剥がすときに糸を引いたりしてちょっとこれ大丈夫かってぐらいがほどよく熟成された状態。
たんぱく質が分解されてアミノ酸に変化することで旨みが増すとともに肉の硬い部分も適度に軟らかくなります。

根元に近い部分=芯タンの方がより軟らかく脂も乗って美味しいので、牛たん焼きには芯タンや真ん中のミドルと呼ばれる部分を使います。
舌先に近い方は比較的硬いので舌シチューとか舌カレー、そして今日の茹でタンのように煮込み料理に向いています。
分厚く切って煮汁と一緒に皿に盛り山葵をちょんと乗せた茹でたんは、箸で切れるほど軟らかく酒のつまみにもってこいですよねぇ。

肉を食べることにおいては日本よりはるかに先進国のイタリアですが、こと牛タンの調理法に関してはほぼ例外なく茹でるだけ。
ピエモンテ州の有名なボッリートミストでは、牛タンも含めいろいろな部位の肉塊を丸ごとの香味野菜と一緒に大釜で茹でて豪快に切り分け、ソースを何種類か添えて食べます。
定番なのはパセリと生にんにく、ビネガー、オリーブオイルを合わせた緑のソースという意味のサルサヴェルデ。
少し舌にぴりっとくる感じが山葵にも似て、茹でタンによく合います。





Ingredienti (per 5 persone)

牛たんブロック1本(約1kg)
にんにく2片
玉ねぎ中3個
にんじん2本
セロリ1本
ローリエ2枚
セージ2枝
適量
黒胡椒適量
per la Salsa Verde
プレッツェーモロ20枝
にんにく1/4片
アンチョビ1/2枚
塩漬けケイパー小さじ1
ワインヴィネガー小さじ1
オリーブオイル大さじ2
パン粉小さじ1
少々

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

あらかじめ皮が切除してある剥きタンを買い求めて解凍し、流水で血を洗い流して布巾で水気を拭いておきます。
玉ねぎとにんにくは丸ごと茹でるので皮を剥くだけ、にんじんはヘタを取って皮を剥き、セロリは筋をとって三等分ほどに切り分けます。

なるべく大きな深鍋に玉ねぎを並べ、その上に肉を重ねます。
隙間ににんじん、にんにく、セロリを入れて水をひたひたに張って塩をふり、ローリエ、セージを加えて火にかけ、沸騰したらごく弱火にして蓋をしてじっくり3時間ほど茹で、火を止めて鍋ごと一晩放置します。

サルサヴェルデはプレッツェーモロ(イタリアンパセリ)、にんにく、ケイパーを刻んですり鉢に入れ、他の材料とともにすり潰します。
密閉すれば冷蔵庫で数週間は日保ちします。

翌日、鍋を温めなおして牛タンだけを取り出し分厚く切り分けます。
スープ皿に牛たんを置き入れ熱々のスープを注いで黒胡椒を挽きかけ、山葵を乗せる要領でサルサヴェルデをちょんと添えれば出来上がり。

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