2017年5月13日土曜日

Trippa all'Insalata トリッパの冷製サラダ仕立て

しっかりと下処理した牛の胃袋と赤玉ねぎをオリーブオイルとレモンの酸味のきいたドレッシングで和えたトリッパの冷製。
初夏の陽気に誘われて週末の昼下がりともなると冷えたワインを抜いてベランダに出てみたくなったりしますが、そんなシチュエーションにもよく似合うさっぱりしたサラダ仕立ての一皿です。

イタリア料理というと大概トマトやオリーブオイルやチーズをたっぷり使ったパスタやピッツァだったり、ムール貝やタコやイカなどの魚介や野菜中心の健康的でお洒落な地中海料理を思い浮かべますよね。
それもあながち間違いではないですが、イタリアも他のヨーロッパ諸国同様れっきとした肉食文化の国、魚や野菜よりもずっとたくさんの肉を食べますし、貧困の時代を経てきたこともありどんな部位でも無駄なく使う内臓料理なんかが多いのも特徴です。
なかでも定番なのがトリッパをトマトソースで煮込んだフィレンツェ風やローマ風で、家庭料理としてごく普通の主婦でも作るし、クセもなく食べやすいので内臓料理の入門編としてもお勧めです。

トリッパとは四つある牛の胃袋のうちの二番目の胃袋のこと。
一番目から三番目までの胃は反芻胃と呼ばれ、牧草をもぐもぐさせては口と胃の間で行ったり来たりさせて繊維を消化しやすくする部位。
そのため生のトリッパには消化を助けるバクテリアが大量に住んでいて色は真っ黒で臭いもきつくグロテスク。
食べられるようにするには黒い付着物をたわしでごしごし落としてからヴィネガーや香味野菜と一緒に根気よく下茹でする必要があります。
最初は家族が鼻をつまんで出ていくほど強烈な悪臭が立ち込めますが、何度か茹でこぼしていくうちにだんだん豚骨や牛テールスープみたいな美味しそうな匂いに変わってきます。
しっかり下処理されたトリッパはさほどクセもなく、適度な歯ごたえがあって噛むと旨みがじゅわっと滲み出てくる至福の逸品。
ちなみに六角形のひだひだの見た目からか日本ではハチノスと呼ばれ、第一胃袋=ミノ、第三胃袋=センマイ、第四胃袋(本来の胃に近い働きをする臓器)=ギアラとともにホルモン好きにはおなじみの部位。
七輪で焼いて食べるとどれも旨いですよねぇ。

日本ではホルモン焼きのほか、串に刺して焼くモツ焼き、味噌煮込み、博多風もつ鍋、家庭的なところでレバニラ炒めなどがおなじみですが、バリエーションはそれほど多くありません。
田畑を耕し魚を捕って暮らしてきた日本人と狩猟民族系の西欧人とではやはり肉食の歴史や奥行きという点でその差は歴然で、それが内臓料理ともなればなおさらです。
ホルモン=放るもんとも言うぐらいなので内臓はそもそも食用にせずに捨ててしまう部位、外見もグロテスクで独特の臭気があることなどから商品として店頭に並ぶこともあまりなかったわけです。
とはいえ需要がない=安価だったことから、戦後の復興期の頃に地方でモツを使った郷土料理が生まれたり大衆居酒屋のメニューに欠かせないなど、裏街道的に支持されてきたんですね。

さて、トリッパの冷製なら韓国風に胡麻油や辛味噌で食べても旨いしさっぱりとポン酢で食べても美味しいですが、イタリア料理なら柑橘ソースとオリーブオイルのドレッシングでサラダ仕立てにするのがおすすめ。
季節柄、明るい時間帯から冷えた白ワインを抜いてベランダで風にあたりながらつまむと季節を感じられていいですね。


Ingredienti (per 2 persone)

下処理済のトリッパ200g
赤たまねぎ1/2個
レモン1個
オリーブオイル適量
にんにくごく少量
ローリエ1枚
プレッツェーモロ5枝
適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

ハチノスは水でよく洗って付着物などを掃除します。
深鍋に水を満たして酢を加え、潰したにんにく2片、ローリエ2枚、クズ香味野菜(セロリの葉、にんじんのヘタなど)とともにハチノスを深鍋に入れて中火で2時間ほど下茹でします。
下茹でが完了したハチノスは、火を止めて煮汁にひたしたまま放置して粗熱をとり、短冊状に切り分けます。

ごく少量のにんにくをみじん切りに、レモン半部は搾ってジュースに、もう半分は薄くスライスしてから銀杏切りにします。
にんにくとレモンジュース、オリーブオイル、ローリエをボウルに入れ塩胡椒て味付けしてから泡立て器で攪拌してドレッシングにします。

赤玉ねぎをスライスして、銀杏切りのレモン、ハチノスを別のボウルに合わせ、ドレッシングを注いでさっくり混ぜ合わせます。
皿に盛り付けて粗みじん切りのプレッツェーモロ(イタリアンパセリ)を散らし黒胡椒を挽きかければ出来上がり。

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