2020年7月18日土曜日
Carne Cruda di Cavallo 馬肉のカルネクルーダ
馬のロース肉はくせもなくさっぱりした味わい、軽めのドルチェットと合わせたい夏の北イタリアの香り漂う一皿です。
ユッケやレバ刺しなどの生肉料理の提供が食品衛生法で規制されてからかれこれ10年近くが経ちました。
お好きだった方にはなんともご愁傷様な話ですよね。
きっかけは富山県内の焼肉店で2011年に発生した大規模食中毒事件。
そこで提供されたユッケを食べた被害者の数は200名近く。
そのうち5名もの方が死亡するという事態にまで発展しました。
原因はレバーを切った包丁やまな板を使ってユッケを作っていたことでレバーに付着していた腸管出血性大腸菌=O157が混入したため。
この焼肉店だけでなく、お店に肉を卸していた加工業者の衛生管理にも問題があったと言われています。
同年には食品衛生法が改正され、一定の規格基準要件に適合しなければ牛の肉を生食用として取扱うことができなくなりました。
つまり厳密にはユッケの提供は禁止されたわけではなかったのですが、規格基準要件のうち生食用の食肉専用設備の設置というのが個人経営の中小焼肉店などではハードルが高く、事実上これらのお店ではユッケの提供が困難となったわけです。
要件を満たすことのできる大規模な資本系の店舗でも、肉の処理方法や保管方法などで細かな基準があるため手間暇がかかるうえ、肉の多くの部分をトリミングして廃棄しなければならないため、それなりの高値で提供しないと採算が取れないことになりました。
一方、O157に汚染された直接原因であるレバーについては、以前からレバーの外側に菌が付着しているのは知られていて、レバーの内部には菌は生息していないとされていたため、レバ刺し向けにきちんと外側を処理したものは生食しても安全だとされていました。
しかし、この事件をきっかけに行われた当局による調査で、牛レバーの外側だけでなく内部からもO157が検出されたことがわかりました。
これにより、新鮮なレバーであっても生で安全に食べることができないとの判断に至り、翌年には食品衛生法がさらに改正されて牛のレバーを生食用として販売したり提供したりすることが禁止されました。
こちらは条件つきではなく、完全に禁止となったわけです。
牛肉に限らず、鶏肉や豚肉にも食中毒の原因となるカンピロバクターやサルモネラ菌、O157などが付着していることがあります。
たた、先のユッケの話にもあるとおり、そもそも肉の組織にはこれらは生息しておらず、内臓の中にいた細菌が付着したもの。
そのため、外側をかりっと焼いて中はレアというステーキなどの料理は安全に食べることができます。
ただ、鶏や豚はそもそも中までしっかり火を通して食べるのが一般的。
なのでとくに法律で規制されることはありませんでした。
そんななか、馬肉は加熱するよりも馬刺しで食べる方が一般的ですが、とくに法律で規制されることなく現在も生で提供することが可能です。
なぜなんでしょうか。
馬は、牛や豚といった他の家畜と比べ体温が40度と高いそうです。
そのため雑菌が増殖しにくく、そもそも菌を保有していないことから、生で安全に食べられるというのが理由。
もちろんそれだけではなく、厚生労働省が示す生食用食肉の衛生基準をガイドラインとし、食肉加工処理場や飲食店において万全の衛生管理を心掛けているのは言うまでもありません。
さて、今日は馬肉料理で有名な熊本から取り寄せた馬刺し用ロース肉を北イタリアはピエモンテ 州の郷土料理カルネクルーダに仕立てます。
カルネクルーダはカルネクルーダバットゥータとも呼ばれ、直訳すると生の肉の叩きと言う意味。
手切りした馬肉を包丁の背で叩き、刻んだにんにくやケイパーとともにオリーブオイルでマリネします。
ピエモンテといえば美食の宝庫にしてバローロやバルバレスコといった重厚な赤ワインの産地として有名。
でも地元で普段からよく飲まれているデイリーワインは、高価なこれらではなく、より優しい味わいのドルチェット。
さっぱりした味わいのカルネクルーダにもドルチェットを合わせます。
Ingredienti (per 2 persone)
馬刺し用ロース肉 | 100g | ||
にんにく | 1片 | ||
新玉ねぎ | 1/8個 | ||
塩蔵ケイパー | 大さじ1 | ||
オリーブオイル | 大さじ3 | ||
パルミジャーノ | 適量 | ||
ルッコラセルバティカ | 好きなだけ | ||
レモン | 1/4個 | ||
粗塩 | 適量 | ||
黒胡椒 | 適量 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
まな板と包丁をよく消毒します。にんにくは細みじん切りに、新玉ねぎは粗みじん切りにします。
塩蔵ケイパーはしばらくぬるま湯につけてから粗く刻みます。
馬肉を6mm角大に刻み、包丁の背で軽く叩いて粗いミンチにします。
軽く塩胡椒をふり、刻んだにんにくやケイパーとともにボウルに移してオリーブオイルを加えてよく混ぜ、冷蔵庫でなじませます。
平皿に敷き詰めるようにして盛りつけ、黒胡椒を挽きパルミジャーノを削りかけ、真ん中にルコラの葉を乗せます。
食べる直前にレモンを搾りかければ出来上がり。
関連記事 - イタリアの夏の冷菜
Sarde Marinate con Finocchio 入梅鰯のマリネ フェンネルの香り |
Insalata di Pomodori Verdi e Boccontini Fior di Latte グリーントマトとボッコンチーニのカプレーゼ |
Filetto di Maiale Tonnato 豚フィレ肉の冷製トンナート |
Melanzane Marinate 夏茄子のマリネ |
0 件のコメント:
コメントを投稿