2018年8月26日日曜日

Filetto di Maiale Tonnato 豚フィレ肉の冷製トンナート

淡白なヴィテッロ(仔牛)に風味が近い豚フィレ肉を香味野菜とともにしっとりと茹でて、いわゆるツナマヨソースをたっぷり添えていただく北イタリア伝統のトンナート。
こってりしてそうな見た目と違い酸味や苦みがあって意外とさっぱり、冷たくしていただく夏のおもてなしにぴったりな冷菜です。

夏のイタリア料理というとトマトやパプリカ、茄子、ズッキーニなどの色鮮やかな夏野菜にバジリコなどの香草、タコやムール貝などの魚介をふんだんに使った前菜やパスタを思い浮かべますよね。
夏に限らずともそもそも日本人が漠然と抱くイタリア料理のイメージはこんな南イタリア風な感じですが、夏ともなればなおさらです。
でも、その感覚は都会に暮らすイタリア人にとってもある意味同じで、夏のバカンスで冷えたワインとともにとるレストランでの食事はやはりきらきらと眩しい地中海料理たち。
イタリア人ってあー見えても普段の食事はハムやチーズにパンといった家にいつもある質素なもので済ませたりしてますので、野菜や魚介類をふんだんに使った地中海料理はそれはもう豪華で非日常的なディナー。
そしてそれがそのまま夏料理のイメージとして刻まれているんですね。

一方、北イタリアの夏の食の光景は例えばベリーやアプリコットや桃や無花果などの木の実やフルーツ、アルプスの麓で作られる夏山チーズや生ハム、お米のサラダ、湖水地方で獲れるウナギやマスなどの淡水魚、野ウサギなどの夏ジビエ、そしてサマートリュフなど。
煌びやかな夏の南イタリア料理が主に夏野菜と海の幸で構成されるなら北イタリアはもっぱら山の幸のイメージ。
ちょっぴり地味だけど、どこか日本の東北の夏のような雰囲気があって郷愁を誘います。

そんな北イタリアの夏の定番のひとつが今日のトンナート。
フランスやスイスと国境を接するピエモンテ州の郷土料理です。
ピエモンテといえば、フィギュアスケートの荒川静香さんが金メダルに輝いたトリノオリンピックの開催地として記憶に新しいですね。
長く貴族が支配したこの地は、丘の上に古城がそびえ立ち、古い村落や教会が点在するなど中世ヨーロッパの面影の残る土地柄。
アルバの白トリュフ、バローロやバルバレスコなどの重厚な赤ワイン、そのワインに合うボッリートミストやブラザートといった肉料理などが有名ですが、海のない内陸部に位置することもあり水産加工品を上手に食生活に取り入れた名物料理もあります。
例えばオイル漬けのツナやアンチョビを使った有名な郷土料理が今日のトンナートやバーニャカウダ。
ツナ缶を使うのは現代風、ツナ缶などなかった時代には塩漬けや乾物に加工されたマグロが使われていたそうです。

ところでマグロの産地といえばピエモンテから遠く離れた南イタリアのシチリアやサルディーニャ。
統一国家となり流通も発達した現代ならともかく、古の時代にわざわざなんでそんなものをソースに使おうと思ったんでしょうか。
マグロの他にもアンチョビもケイパーもレモンもシチリアの名産品。
牛肉だけは酪農が盛んな北イタリアのものですが、伝統的な郷土料理というわりになぜか地中海食材のオンパレードなんですよね。
さらには卵黄と酢とオイルを乳化して作るマヨネーズはお隣フランス風だし、冷たい料理をあまり食べないイタリアで冷たい肉料理。
いろいろと興味深い料理でもあります。

トンナートは本来ヴィテッロと呼ばれる仔牛肉で作られますが、仔牛が手に入りにくい日本はもちろん、本場イタリアでも、肉質がわりと近い豚のフィレ肉や鶏の胸肉を使って作られることもあります。
ソースのバリエーションもいろいろ、ツナサンドの中身みたいに繊維を残したペースト状のものや、なめらかに仕上げた緩いソース状のもの、生の卵黄ではなく茹で卵の黄身を使ったものや、現代風にマヨネーズを使ったものなど様々。
トンナートソースはこの料理に限らずサラダやパスタのソースにしたりクロスティーニに乗せたりと、いろいろ使いまわしもききますよ。

Ingredienti (per 4 persone)

豚フィレ肉500g
にんにく1片
玉ねぎ1/2個
にんじん1/2本
セロリ1/2本
ローリエ1枚
白ワイン1/2カップ
適量
粒胡椒適量
レモン1/2個
塩漬けケイパー(飾り用)適量
per la Salsa Tonnata
オイル漬けツナ80g
マヨネーズ100g
アンチョビ1枚
塩漬けケイパー小さじ1
レモン1/2個
適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

豚フィレ肉を糸で縛り、塩胡椒をまぶしてしばらく置きます。
玉ねぎとにんにくは丸ごと茹でるので皮を剥くだけ、にんじんはヘタを取って皮を剥き、セロリは筋をとって三等分ほどに切り分けます。

鍋に肉を置き入れて白ワインを注ぎ、隙間に香味野菜とローリエを詰めひたひたになる程度の水を加えて火にかけます。
沸騰したら弱火にして、蓋をして40分ほど煮ます。
火を止めたら煮汁ごと粗熱をとり、冷めたら肉を取り出し糸をほどいて冷蔵庫で冷やします。

肉を冷やしている間にトンナートソースを作ります。
塩を洗い流したケイパーとアンチョビをすり鉢でなめらかにすり潰し、漬け汁を切ったツナとたっぷりのマヨネーズを加えて繊維が残る程度にすり潰し、レモンの搾り汁と黒胡椒を加えて混ぜ合わせます。
味を見て必要であれば塩で調整し冷蔵庫で冷やしておきます。

よく冷えた肉をお好みの厚さにスライスし皿に並べます。
通常トンナートは薄くスライスしますが今日はあえてやや厚め。
トンナートソースをかけケイパーを散らせば出来上がり。

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