2019年3月23日土曜日

Pesciolini Fritti con Erbe Selvatiche 黍魚子と山菜のフリット

銀白色の帯状の模様が美しい旬のキビナゴにふっくらと衣をまとわせ、山菜とともに香ばしく揚げた黍魚子と山菜のフリット。
のどかな海辺の田舎町できらきら光る春の海をのんびり眺めていたい、そんな想いに駆られる春の海の幸と山の幸のあい盛りです。

キビナゴという魚をご存知でしょうか。
成魚でも小指ほどの大きさでカタクチイワシやワカサギを少し小ぶりにしたぐらいの小魚で、細長い流線形のスタイルに銀白色の帯と黒い線が一本入った美しい色が特徴的な魚です。
春頃になると波の静かな入江や港の中まで入ってきて水面近くを群れで泳いでいるので、この時期に堤防で釣りをしていて見かけたことがあるという方もいるかもしれません。
暖かい海域を好むので太平洋側では房総半島あたりまで、日本海側では山陰ぐらいまでが生息域。
このため、東日本よりも九州や四国など西日本でキビナゴ漁が盛んで、鹿児島県や長崎県、高知県などが産地として有名です。
とくに鹿児島県では、各都道府県の漁協などが季節ごとに自信をもって勧める地魚=プライドフィッシュに選定しているほどです。

キビナゴ料理ですが、まず思いつくのがキビナゴのお刺身を折りたたみ菊の花をかたどって美しく盛りつけた菊花造り。
鹿児島県を代表する郷土料理のひとつで、農林水産省主宰の農山漁村の郷土料理百選にも選定されています。
薩摩の料理にはこのキビナゴの菊花造りのほかに地鶏を刺身やたたきで食べる鶏刺し、さつま揚げ、黒豚のしゃぶしゃぶやとんこつと呼ばれる黒豚のあばら肉の煮込み、味噌おでんなどがよく知られていて、一緒に飲む酒はもちろん焼酎ということになります。
豪快で男前な薩摩料理に芋焼酎の香りがたまらんたい。

豪快で男前と書きましたが、小さなキビナゴを刺身にするのに一尾一尾ちまちま捌くのはむしろ繊細さが要求される作業。
食べる方はひと口か、人によっては二尾食いとか三尾食いしますので、キビナゴの刺身は労多くして報いが少ないんです。
もっと味わって食べてくれればいいのにねぇ。笑
刺身のほかでは唐揚げや塩焼きなどでも美味しく食べられます。
小魚は頭も内臓も気にならずに食べられますし、漁でウロコもすっかり落ちてしまってるので下処理不要。
塩焼きにする場合は一尾づつでは裏返したりがしづらいので、まとめて五尾ぐらい串に刺して焼きます。
いちばん手っ取り早いのが唐揚げで、ワカサギなどもそうですが小魚はまとめて油で揚げてしまうのがいちばん簡単です。

最近では小さな魚体という利点を活かしてキビナゴの和製アンチョビやオリーブオイル漬けのような加工品も商品化されています。
そのままで前菜に、かりっと炙ったバゲットに乗せてブルスケッタに、ピッツァの具やパスタソースの隠し味にしても美味しそう。
加工品は食べたことないですが、キビナゴはイタリア料理との親和性がすこぶる良いので、なかなか着眼点がいいと思います。
機会があったら試してみたいですね。

さて、今日は加工品ではなく鮮魚のキビナゴのイタリア料理。
繊細な作業は苦手なのと春らしくワタの苦みも生かしたいので、丸ごと油で揚げてフリットに仕立てます。
キビナゴが春の海の幸の代表なら、山の幸は山菜類。
アクや苦みのある山菜は油との相性がとにかくいいので、天ぷらなどの揚げもので美味しいですよね。
今日は山独活を使いましたが、山菜は総じてほんのり苦みがあるので、ふきのとうでも、たらの芽でも、何を使っても合いそうです。
春の陽気のなか春素材のフリットと冷えた白ワインでのんびりまったりするのもたまにはいいもんですね。




Ingredienti (per 2 persone)

キビナゴ120g
山うど1本
適量
岩塩適量
黒胡椒適量
強力粉適量
ビール(または炭酸水)適量
サラダオイル適量
オリーブオイル適量
レモン1/4個
プレッツェーモロ5枝

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

キビナゴは流水でさっと洗って水気を切っておきます。
山うどは穂先をひと口サイズに切り分け産毛を包丁の背でしごき取り、白い茎は皮を剥き薄い短冊状に切って酢水につけておきます。
強力粉と塩少々をビールなど炭酸水でさっと溶いておきます。

揚げる順番は最初に低温で山菜、次に油の温度を上げて魚介です。
サラダ油を160℃に熱します。
山うどを溶いた衣に浸してかりっと揚げます。

油の温度を180℃ぐらいまで上げます。
キビナゴを衣にくぐらせてからっと揚げます。
あまり火を通し過ぎない程度に揚げた方が美味です。

皿に盛って岩塩と黒胡椒を挽きかけます。
レモンを添え、プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)のみじん切りを散らせば出来上がり。

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