2019年3月16日土曜日

Ventosa di Piovra Cruda 水蛸の吸盤のクルード

むっちりと太いミズダコの脚から外した大きな吸盤をさっと湯引きして身がぷりっと締まったところをいただく吸盤の湯引きのクルード。
吸盤の湯引きとくればポン酢に紅葉おろしなんですがオリーブオイルと頗る相性がいいのもタコ、こりっとした食感と微かな甘みと春の陽気で冷えたワインが止まらなくなる一皿です。

ナポリなど南イタリアで、マリネトマト煮込みなどの料理にしばしば使われるタコは、ある意味わりとイタリアっぽい食材のひとつ。
でも、それ以上に無類のタコ好きで知られるのが日本人です。
タコを食用にしない国や地域は結構たくさんあるので、それもあってか世界の漁獲量のなんと70%が日本で消費されているそうですよ。
日本のどこでそんなに食べてるかというと、タコといえばやはり関西。
タコ焼きや明石焼きといった食文化が根づいてますからねぇ。
関西だけでなく全国的にも、寿司ネタや酢の物、おでんダネやお正月のおせち料理などにタコは欠かせません。

かつては宮城の志津川や兵庫の明石に代表される瀬戸内海が産地として有名でしたが、今や国産のタコなど一般消費者にとっては高嶺の花。
というより店頭で目にすることなどまずありません。
おなじみなのが西アフリカのモーリタリアやモロッコからの輸入品で、日本の需要をまかなうために商社が数十年前に開発した新興産地です。
アフリカではタコは食用にしないので、日本人はよくこんな気持ち悪いものを食べるなぁとか思いながら漁に勤しんでるのでしょうか。

日本で食用にされるタコは主に三種類あります。
普段よく目にするタコがマダコで、タコの赤ちゃんみたいに小さいのがイイダコ、そして今日使ったのがミズダコです。
マダコは先ほどのように国内産は希少で輸入に頼っている状況ですが、逆にミズダコはほとんどが国産。
冷涼な海域に生息する世界最大のタコで、北海道で多く漁獲されるため北海タコの別名があります。
普段マダコとミズダコの違いを意識せず買ってる方もいるかもですが、輸入が中心のマダコは水揚げ後すぐに浜茹でにされ、くるんと丸まった脚と頭の一部が一緒に売られています。
一方のミズダコは太い脚が一本売りされていたりします。
生でも流通するミズダコは刺身にできますので、脚を薄くスライスしたみずみずしい半透明のタコしゃぶや、紅葉おろしと小口ねぎとポン酢で食べる活タコの刺身などにはミズダコが使われます。

タコの旬は諸説あり、半夏生(梅雨の中旬頃)に食べる習慣があったり土用のタコは親にも食わすなという諺があったり、麦わらタコの呼称があるなど、夏が旬とされることが多いんですが、実際には年間を通じてあまり味に変化がなく、いつ食べても美味しいのがタコ。
季節感を出すのは仕立てる料理次第だというわけです。
ふっくら炊いた蛸飯は春のイメージだし、たこ焼きや唐揚げや酢の物は夏に食べたくなるし、熱々のおでんは秋冬。
そして身が透き通ったミズダコの刺身は冬から春にかけてが美味。
身の水分量が多いのと仄かに甘みがあるところがちょっと春の貝類にも似ているため、よけい春らしさを印象づけてくれます。

ミズダコを刺身にする場合、まず太い脚の吸盤を切り落として皮を剥き筒状の白身にしたあと、生のままでは軟らかすぎて切れないため半冷凍にしてから薄くスライスしていきます。
吸盤は白身の部分との食感の違いから刺身では外すことが多いですが、もちろん捨てることなく賄い料理や酒のつまみに仕立てます。
吸盤は炒めたり唐揚げなどもいいですが定番なのが湯引き。
しっかり塩揉みしてぬめりをとり、熱湯でほんの数秒間湯がいてすぐに冷水にとり身を締めます。
吸盤に吸いついていた汚れも消毒されて、ぐにょぐにょと軟らかかった表面がぱつんとなり、歯ごたえがあるのにレアな味が堪能できます。

吸盤の湯引きはポン酢や山葵醤油で食べても旨いですが、言わずもがなタコはにんにくとオリーブオイルの香りと相性が良すぎて、それだけでたちまち絶品イタリアンのおつまみになる優れもの。
春の陽気の下で飲む冷えたワインのお供にもぴったりです。




Ingredienti (per 4 persone)

ミズダコの脚1本
適量
オリーブオイル適量
レモン1/4個
黒胡椒適量
乾燥オレガノ少々
プレッツェーモロ5枝

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

ミズダコの脚は包丁で吸盤を切り落として皮を剥きます。
筒状の白身は別途、刺身かタコしゃぶでいただきます。
生のままでは軟らかすぎて切りづらいため、半冷凍にして薄くスライスするといいです。

脚から外した吸盤はしっかり塩揉みして吸盤内の汚れやぬめりをとり、流水で塩を洗い流します。
熱湯でほんの数秒間湯がいてすぐに冷水にとり身を締めます。

吸盤の水気をふきとってからボウルに移し少しかじって味見します。
塩気が足りないようなら塩少々と乾燥オレガノ、オリーブオイルを加え混ぜ合わせたら冷蔵庫で少しなじませます。

皿に盛ってレモンをたっぷり搾りかけ、黒胡椒を挽き、粗みじん切りのプレッツェーモロ(イタリアンパセリ)を散らせば出来上がり。

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