2016年3月19日土曜日
Zuppa di Cozze e Polpetielli 飯蛸とムール貝のズッパ ナポリ風
てんこ盛りの貝やタコを食べ進めていくと、皿の底から魚介のスープをたっぷり吸ったパンが現れて二度楽しめるという一皿です。
ムール貝のズッパといっても今日の主役は今が旬のイイダコの方。
瀬戸内では春の風物詩、俳句の世界でも3月の季語になっています。
一年を通して漁獲され、季節による食味の差もそれほどないのですが、春に出まわる雌のイイダコが米粒ほどの大きさの卵をぎっしりと抱き、これがなかなかの美味だというので春が旬とされています。
イイダコの卵は見た目だけでなく食感も硬めに炊いたご飯粒そのもの。
だからこの卵のことを飯(イイ)と呼び飯蛸という漢字をあてます。
イイダコの食べ方の定番は姿のまま煮た桜煮。
頭(実は胴体)をめくって飯が見えるように煮ると、花が咲いたように飯がぱっと拡がって見映えがする一品になります。
もちろん小さくてもタコなので卵がなくても身も普通に美味しいです。
子持ちの雌を珍重するのはそもそも関西圏が発祥で、関東から東北ではあまりそこ(飯があるかどうか)にこだわりがなかったとか。
理由は、関東東北でイイダコが盛んに揚がるのは飯を抱く時期より前の秋冬で、抱卵期の春先にかけては漁船がカニなどの漁に移行するため、そもそも飯持ちのイイダコの水揚げが少なかったからだそうです。
流通が発達した現在では飯の旨さは全国区になりましたが、この時期の雌は値段も高いので、タコの身そのものを味わいたいイタリア料理ならあえて雄を選ぶというのが経済的でいいかも。
さて話は変わって、キリスト教の春の一大イベントといえば復活祭。
英語圏ではイースター、イタリアではパスクワと呼ばれます。
イエスキリストが十字架にかけられて死に、三日目の日曜日に蘇ったとされる日のことで、春分の日を過ぎて最初の満月の後の日曜日がそれにあたり、2016年は来週の日曜日=3月27日がそう。
ローマ法王のお膝元イタリアでは国民の大半が敬虔なクリスチャンで、イエスが十字架にかけられたという金曜日は肉を食べない日として定着していて、とりわけ復活祭の前の聖木曜日(最後の晩餐)と聖金曜日はイタリア中が魚料理を食べることになっています。
イワシにマグロにアサリ、ヤリイカにスカンピといろいろあるなかで、ナポリで聖木曜日と聖金曜日に食べるのがムール貝のズッパ。
"Zuppa di Cozze"=ズッパ ディ コッツェ、もしくは単にズッパとだけ呼ばれ、ムール貝のスープという名前なのに大概タコも入っています。
それに皿の底に敷いたパンが汁気をほとんど吸ってしまうので、スープという名前なのにちっともスープらしくない。
こういう適当なところもナポリ風なんですかね。笑
そして土曜日は復活祭のための料理やお祭りの準備でどこも大忙しで、日曜日当日は卵や子羊料理で盛大にイエスの復活をお祝いします。
Ingredienti (per 4 persone)
イイダコ | 10杯前後 | ||
ムール貝 | 500g | ||
にんにく | 2片 | ||
唐辛子 | 1本 | ||
バゲット | 1/2本 | ||
白ワイン | 1カップ | ||
オリーブオイル | 1/2カップ | ||
レモン | 1個 | ||
プレッツェーモロ | 5枝 | ||
塩胡椒 | 適量 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
イイダコは後頭部(目がついてない方)に指を入れ薄い膜を破り、墨袋を破れないように優しく取り出し、胴体を指で強く握って脚の付け根にあるクチバシを押し出すようにして取り除きます。全体を塩揉みしてぬめりを取り、流水でよく洗います。
ムール貝はヒゲを引き抜いて取り除き、殻をたわしで洗います。
レモンは櫛切りに、にんにくは芽をとって包丁の腹で潰します。
プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)は粗みじん切りにします。
深鍋にたっぷりのオリーブオイルとにんにくを入れて弱火にかけます。
にんにくの香りが立ったら唐辛子を加え、イイダコを脚から置き入れて少し炒め煮にしてからムール貝も静かに置き入れます。
白ワインを注いで蓋をして強火で蒸し煮にし、ムール貝が開いたら火を止め、味を見て塩胡椒で調整し、プレッツェーモロを散らします。
イタリアではタコはくたくたになるまで軟らかく煮ますが、イイダコの場合はそれだとタコのウインナーみたいに小さくなっちゃうので、火が通る程度にさっと煮るだけにします。
ポーションサイズのテッラコッタの器に軽く炙ったバゲットを敷いて、具材とスープを注ぎ入れ櫛切りのレモンを添えれば出来上がり。
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