2019年3月9日土曜日
Insalata di Sedano e Arance 甘夏とセロリのサラダ仕立て
柑橘類なので結実するのは冬ですが甘くなるまで寝かせて春から初夏にかけて出まわるから甘夏(夏みかん)、時代が流れても絶やすことなく残していきたい古き良き日本の味です。
昭和世代にとっては、味も、言葉の響きも懐かしい夏みかん。
聞いたことがないという人はまずいないと思いますが、では夏みかんのことをどれぐらい知ってるのかというと結構曖昧だったりします。
はっさく、伊予柑、ポン柑、デコポンなど似たような柑橘類もいろいろありますので、なんとなくそれらの総称が夏みかんのような気もするしそうじゃない気もして、わりと基本的なことが実はわかってない。
そもそも名前に夏がつくから夏の果物だと思っていませんか。
夏の盛りの暑い時期に夏みかんは売っていませんよね。
食べ方もよくわからないし、柑橘類ならオレンジやグレープフルーツがあるからそっちを買うといった感じで、結局夏みかんなど買ったことも食べたこともないという方は多いと思います。
今の時代は酸味を抑えて糖度を高めた新しい品種のフルーツが全盛。
夏みかんはいかにも酸っぱそうだしちょっと古くさいイメージもあり、あまり興味がないのかもしれません。
夏みかんは江戸時代の頃に山口県で栽培が始まった文旦系の柑橘類で、今日使った甘夏(あまなつ)は夏みかんの品種のひとつ。
酸味が強い夏みかんは主にジャムやジュースなどに加工されますので、果物として店頭に並んでいる夏みかんはほぼこの甘夏です。
果皮は硬くて分厚いので果物ナイフで切れ目を入れて剥きます。
果実を包む内皮も厚いので内皮も剥くか、果皮ごと横半分にカットしてスプーンですくって食べたりします。
ちょっとグレープフルーツに似てますよね。
果肉は果汁をたっぷりと含み、粒のひとつひとつがぷちぷちして食感も楽しめるし、適度な酸味と仄かな甘み、清々しい苦味があります。
このほろ苦さがいわゆる夏みかんらしい味の特徴でもあります。
ところで、夏みかんというぐらいなのでてっきり夏が旬かと思いきや、そうではないから紛らわしいんですよねぇ。
実は夏みかんの旬はちょうど今頃から始まり初夏の頃まで。
でもちょっと待って、近所の農家の家の庭先などによく夏みかんらしきものがなっていて、季節は確か冬だったはず。
そうなんです、柑橘類なので結実するのはやっぱり晩秋から冬。
ただし、そのままでは酸味が強く生食に適さないため、倉庫に数ヶ月間貯蔵して酸味をとばし、春にようやく食べ頃を迎えるというわけです。
そもそも爽やかな柑橘類は汗ばむ季節に食べてこそ美味しい。
それまでは生食に向かないとされていたのが、このことが発見されると暑くなる季節に美味しい貴重な柑橘類として盛んに作られ、柑橘類では温州みかん(普通のみかんのこと)に次ぐ栽培規模を誇りました。
転機となったのは1971年のグレープフルーツの輸入自由化。
それまで高級品だったグレープフルーツが安価で大量に流入し、完全に夏みかんは市場を奪われ、衰退の一途をたどることとなります。
しかし最近のニュースでは、そのグレープフルーツも家計消費が大きく減少し、ここ10年で半減しているなどと報じられています。
消費者の嗜好や時の政治やメディアの影響などで、その時代その時代で好まれる(売れる)ものはめまぐるしく変遷しますし、生産者もそれに応えて新しいものを生み出してきました。
その答えのひとつが、先も書いたとおり酸味を抑え糖度をぐんと増した新しい品種の果物たち。
苺にメロン、梨、林檎、葡萄、野菜ではトマトやとうもろこしなんかも同じようにニーズに応えた品種たちが全盛です。
でも懐かしさを感じる味は時代が変わってもなくなってほしくないし、昔から変わらないところが良いというものだってあります。
さて、イタリアでは柑橘類といえばレモンとオレンジ。
どちらもシチリアが一大産地として有名ですが、オレンジに赤玉ねぎやフィノッキオというフェンネルの株元をスライスして合わせヴァージンオイルで和えたサラダはシチリアの冬の定番です。
でも、温暖なシチリアと違い、さっぱりして爽やかな柑橘類のサラダは冬よりも春めいてきた今頃に食べる方が美味しいに決まってます。
それならば、ちょうど旬を迎えている甘夏と、フィノッキオの代わりにセロリを使って日本の春らしい一品に仕立ててはいかかですか。
若い人には斬新で古い世代の人には懐かしい味がするはずです。
Ingredienti (per 2 persone)
甘夏 | 1個 | ||
セロリ | 1/3本 | ||
赤玉ねぎ | 1/4個 | ||
黒オリーブ | 10粒 | ||
アンチョビ | 1尾 | ||
ベビーリーフ | 適量 | ||
オリーブオイル | 大さじ3 | ||
ワインヴィネガー | 少量 | ||
砂糖 | 少量 | ||
塩 | 適量 | ||
黒胡椒 | 適量 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
甘夏は皮にナイフで十字に切れ目を入れて剥き、房に分けます。房に分けたら三日月の形の直線側を切り落とし実を取り出します。
そのうち1房をボウルの上で潰して搾り汁にしておきます。
セロリはピーラーで筋を剥き、薄くスライスします。
他にも赤玉ねぎや黒オリーブを入れたり、ドレッシングにアンチョビを加えたりしてもシチリアっぽくなります。
今日は春らしくパステル調の色合いにするため入れていません。
ボウルに甘夏の搾り汁、塩、オリーブオイルを加えてよく攪拌します。
味をみて酸味が足りなければヴィネガーを、甘みが足りなければ砂糖を少量加えます。
大きめのボウルに剥いた甘夏、セロリ、ベビーリーフ、ドレッシングをすべて合わせて冷蔵庫で少し馴染ませます。
皿に盛って黒胡椒を挽きオリーブオイルをまわしかければ出来上がり。
0 件のコメント:
コメントを投稿