2016年7月23日土曜日
Carpaccio di Spigola agli Agrumi 夏スズキのカルパッチョ オレンジとケイパーのソース
稚鮎などの餌を追って河川にも入ってくるスズキは微かに川魚のような香りがあるため、ちょっとハーブをきかせたり柑橘系のソースを添えるのが定番です。
日本で美味しい白身魚として名高いのは冬のヒラメ、春なら桜が咲く頃の真鯛=桜鯛が双璧ですが、これらと肩を並べるほど美味とされるのが盛夏の鱸(スズキ)。
夏は猫も跨いで通るというほど味が落ちてしまうタイやヒラメに代わる上品な味の白身魚として、和食の世界ではスズキなくしては夏の和懐石コースが成立しないとまで言われています。
焼いて良し、蒸して良し、揚げて餡をかけたり南蛮漬けにしても良し、もちろん刺身で絶品というところが和懐石では重宝しますよね。
薄く削いだ身は透明感があって惚れぼれするほど美しく、氷水で締めて洗いにすれば見た目も涼しげ、夏の贅沢な味わいが食通を唸らせます。
このため、夏は割烹や料亭などからの引き合いが急増して高級魚なみに値段が高騰しますし、需要が高く一般消費者の手元になかなかまわってこなくなったりします。
売ってないなら自分で釣るという方もいますかね。
ルアーフィッシングではシーバスの名でも知られる人気ターゲットで、これは知人が釣って送ってくれた関東ではめずらしい浜名湖産。
お腹からカタクチイワシがごろごろ出てきたので、外洋から餌を追って湖に入ってきた回遊性の上物です。
ところで魚の旬とは、初鰹や初夏の近海マグロのように脂は全く乗ってないけど季節回遊等により大量に獲れる漁期を指す場合もありますが、一般的には産卵期を控えた時期に餌をたくさん食べ、まるまると太って脂が乗り一年でいちばん美味しくなる時期のことをいいます。
スズキの場合、夏が旬とされているのはこのどちらとも少し違います。
産卵を終えた直後の冬場は餌をほとんど食べずに深場でじっとしているため痩せていますが、春頃から活性が高まってきて持ち前の旺盛な食欲で餌をばりばり食べて運動量も増えるため、初夏の頃からぐっと食味が良くなってきます。
晩秋から冬にかけてが産卵期なので秋がいちばん美味しいということになりますが、秋はスズキのような白身魚よりも秋刀魚や戻り鰹といった脂の乗った青ものに食欲をそそられる季節。
逆に夏は、さっぱりとした白身魚が食べたい季節なのに選択肢が少なくなるため、相対的にスズキの存在感が増すというわけです。
さて、スズキはイタリアでも定番の食材で、腹に香草を詰めたグリルやロースト、ズッパ(アクアパッツァ)、カルパッチョなどで人気。
お造りで薄い削ぎ切りにするような身が締まったタイプの魚はもとよりカルパッチョにも向いていて、青魚よりも白身魚、それも食味が上品で淡白なスズキはイタリア人好みの素材といえます。
端正で凛々しい姿に似合わず獰猛な海のハンターで、餌を追って川にもどんどん入っていくため身は微かに川魚のような香りがあるのが特徴。
スズキの刺身を洗いにするのはこれを洗い流す習慣の名残りだそうで、カルパッチョにする場合もレモンとオレンジの柑橘ソースにフェンネルをきかせたものが定番。
フェンネルは日本ではあまり一般的ではないので、独特の風味と苦みのあるケイパーを使うとしっくりきます。
Ingredienti (per 4 persone)
スズキ | 半身の背側 | ||
オレンジ | 1 1/2個 | ||
レモン | 1/2個 | ||
砂糖 | ひとつまみ | ||
塩蔵ケイパー | 大さじ2 | ||
オリーブオイル | 大さじ3 | ||
塩胡椒 | 少々 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
オレンジは外皮と薄皮を剥いて中の実を一口サイズに切り分け、1/2個はレモンとともに絞ってジュースにしておきます。塩蔵ケイパーはぬるま湯にしばらく浸して塩抜きしてから包丁で叩いて刻み、オレンジとレモンのジュースに加えます。
ジュースにオリーブオイルを適量加えて攪拌しドレッシング状にして、塩胡椒と砂糖で味を調えてオレンジの実も加えます。
スズキは三枚におろした半身を中骨部分で切り分けて柵取りし、背側の身の尾の方から身と皮の間に包丁を入れて皮を引きます。
スプーンでドレッシングをすくってリムのある平皿に敷きます。
刺身包丁を使ってスズキを斜めに薄く削ぎ切りにし、一枚づつ皿の外側から並べていきます。
フグ刺しのように同じ向きに綺麗に並べるのではなく、向きはランダムでいいのでパズルをはめるように隙間なく配置していきます。
刺身を並べ終わったら、オレンジの実を散らして上からドレッシングをまわしかけ、軽く黒胡椒を挽いて出来上がり。
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