2016年3月5日土曜日

Molluschi Crudi 春の貝づくし クルード三種盛り

旬を迎えた三種の貝をお造りにして、シンプルに塩とオリーブオイルで味わう春の貝のクルード三点盛り。
生の貝らしいほのかな甘みや磯の香りに、それぞれの食感の違いまでも楽しめる、貝好きにはたまらない春の一皿です。

海水温が上昇し始める春は、多くの魚介たちにとって繁殖シーズンでもあります。
産卵を直前に控えたこの時期には、それまで深場でじっとしていたのが沿岸部にまで回遊してきて活発に餌をとるようになり、身はまるまると太って脂が乗ったいわゆる旬を迎えます。
例えば魚編に春と書く鰆=サワラ、春告魚の別名があり目春という字をあてるメバル、北海道で春告魚といえば今も昔もニシン、桜が咲く頃に桜色の婚姻色に染まる桜鯛(真鯛の季節名)など、春らしい名前を持つ魚たちはみなこのような行動をとります。
そして魚のように活発に移動したりできない貝類も、その多くが春から初夏にかけて産卵期を迎えます。
とりわけ浅場の砂浜などに生息する二枚貝は、水温や日照時間の変化をいち早く感じとり繁殖の準備を始めます。
春が旬の二枚貝といえばアサリにハマグリが真っ先に浮かびますよね。
アサリなら味噌汁に酒蒸しにヴォンゴレ、ハマグリなら雛祭りの定番の吸物や、酒を垂らして七輪で焼いた焼きハマグリも旨いですよねぇ。
ただアサリもハマグリも生食ができないので、春に刺身で美味しい貝のなかから今日お造りにしたのが北寄貝、つぶ貝、青柳の三種。

ホッキ貝は北の冷たい海に生息しているので冬場は身が締まっていて、冬から春先にかけてが美味しい時期。
産卵期の間は資源保護の観点から禁漁となるため、シーズン終盤の春は食べ納めにして最も身に味がのった旨い時期となるわけです。
よく見る紅色の身は軽く湯通ししたもので、殻付きの活ホッキを捌いた状態の生身は地味な薄紫色、この方が磯の香りがして断然旨いです。

同じく冷水域に生息するツブ貝も冬から春が旬。
こちらは二枚貝ではなく巻貝で、同じ巻貝のアワビやサザエにも引けをとらないほどコリっとした歯ごたえは今日の三種の貝の中では一番で、磯の香りも強くて美味しい貝です。
ツブ貝の名で出まわる貝の種類は多く、北海道産のマツブで大きいものは一個数千円もする高級品ですが、剥き身加工されたロシア産の安価なものも正直なところ食味にそれほどの違いはないと思います。笑

春の貝として江戸前寿司に欠かせないのが内房特産のアオヤギ。
見た目はハマグリによく似た二枚貝で、富津あたりで潮干狩りをするとアサリと一緒によく獲れます。
アオヤギの小さな貝柱を小柱と呼び、寿司の軍艦巻きやかき揚げの原料として需要があるため、殻付きよりも加工された剝き身で流通します。
アサリのように砂抜きができないのも主に剥き身に加工される理由。
小柱をとった後のオレンジや黄色の身(足)の部分は舌切りと呼ばれ、強い甘みとアルデンテのパスタみたいにぱつんとした食感が特徴です。

さて、それぞれの個性の違いが楽しめる三種の貝のクルードに合わせるワインはヴェルメンティーノが定番、それも貝を生で食べる習慣のあるプーリア州のものならより気分を上げてくれそうです。

Ingredienti (per 4 persone)

ホッキ貝(殻付き)2杯
ツブ貝(開き身)100g
アオヤギ(舌切り)100g
にんにく1/4片
レモン1/2個
オリーブオイル適量
プレッツェーモロ5枝
塩胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

ホッキ貝は殻をたわしで洗い、水管の部分の隙間からオイスターナイフを指し込んで左右二ヶ所にある貝柱を切って殻を開きます。
殻から身を外してヒモと身(足)に分け、ヒモについている水管の先を切り落として塩で揉んでぬめりをとり、縁の黒い汚れを手で取り除いて適当な大きさに切り分けます。
身(足)はトサカのように尖った部分の反対側から包丁を入れて開き、黒い内臓を包丁の先で取り除いて塩水で洗います。
まな板にびたーんと叩きつけて身を締めてから適当に切り分けます。
ツブ貝とアオヤギは剥き身を使うので、切り分けるだけです。

にんにくとプレッツェーモロを粗みじん切りにして、オリ-ブオイルとともにボウルで合わせて、塩をふった貝の身を入れて和えます。
貝の刺身をそれぞれ平皿に三点盛りにして軽く黒胡椒を挽き、櫛切りにしたレモンを添えれば出来上がり。

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