2017年7月2日日曜日
Spigola Marinata con la Bottarga Grattugiata 夏鱸の昆布締め(マリネ) すりおろしたカラスミとともに
二晩かけて〆めて飴色に染まった身は水分が程よく抜けて噛みごたえももっちり、カラスミの塩気と熟成味が淡白なスズキによく合います。
昨年に引き続き今年も知人が浜名湖産のスズキを送ってくれました。
金曜日の夜からお仲間たちと夜通し釣りをして、翌朝に発送してくれたものが日曜の朝に東京に着荷したのですが、リリースするほどたくさん釣れたと事前に聞いていたとおり今年は4尾も入れてくれてました。
それにしても夏場のスズキといえば高級魚なみに価格が高騰するうえ、入荷すれば割烹や料亭がまるごと持っていってしまうため一般消費者の手元になかなかまわってこない希少品。
そんな時期にこうして旬のスズキがいただけるのも釣物ならではです。
元イタリア料理人で釣りと子供が大好きな愛知の知人に感謝です。
ところで魚でも野菜でもそうですが、旬という言葉の使われ方は大きく二通りあると思います。
ひとつはもちろん一年を通じて最も美味しくなる時期のこと。
魚介類の場合、その多くは産卵期を控えた時期がこれにあたります。
この時期は餌をたくさん食べて栄養を蓄えようとするため、まるまると太って脂が乗ってくるわけです。
春に旬を迎えるアサリやハマグリなどの二枚貝や、ちょうど桜が咲く頃に身体を婚姻色の桜色に染める桜鯛(真鯛)なんかがそうですね。
そしてもうひとつの旬とはたくさん獲れて市場が賑わう時期のこと。
両者は時期が一致することが多いですが、そうでない場合もあります。
例えば初夏の風物詩の初鰹や近海もののマグロは脂の乗りという点ではまったくと言っていいほど物足りませんが、大規模な季節回遊によって魚群の通り道となる海域ではまたとない漁期を迎えます。
漁港は活気にあふれ、消費者も一年に一度訪れるこの時期を待ちわびていることから、脂の乗った本来の旬とはまた違うさっぱりとした味わいのもうひとつの旬として認知されています。
一方、スズキの旬が夏とされている理由を考察してみると実に面白い。
まずスズキの産卵期は晩秋から冬にかけて、つまりは秋がいちばん脂が乗って美味しいということになりますが、秋は秋刀魚や戻り鰹といったもっと脂の乗ったこてこての青魚に食欲をそそられますし、秋の味覚を象徴するきのこや木の実、果物など美味しいものが目白押しで、スズキのような淡白な白身魚は完全に埋没してしまうんですね。
実際、築地市場では秋にスズキの取扱量がぐっと少なくなります。
いちばん美味しい時期なのに旬と認めらないなら他の季節はどうかって話ですが、冬と春は白身魚の双璧とも呼ばれるヒラメと桜鯛(真鯛)がまさに旬を迎えているため、こちらもやはり出番がありません。
ところが夏になると食欲もなくさっぱりした白身魚の需要が高まるのにヒラメもタイも猫すら跨いで通るというほど味が落ちてしまいます。
客が所望するままうっかり売ろうもんなら、あそこの魚屋(料理店)のヒラメ(タイ)はまずいよなどと風評が立っても困るので店主はきっとこう言ったはずです。
「何を仰いますかお客さん、夏の白身といえばスズキですぜ」と。
実際、春先から活性が高まり摂餌量も運動量も十分のスズキは身に味が乗ってきたところだし、餌を追って川や湖にも入ることから微かに川魚のような香りがあり、夏場にはこれが清涼感と感じるわけです。
スズキ料理を代表する洗いも夏でこその味わいですもんねぇ。
さて、今日はそんな旬の夏スズキにひと手間かけて昆布締めにしてからオリーブオイルとカラスミをあしらった和製イタリアン。
季節感を出したいときや刺身料理では和食の技法や考え方を忍ばせたくなるんですが、昆布で〆めるという和製マリネにすりおろしたカラスミを調味料代わりにかけたところは地中海風です。
Ingredienti (per 4 persone)
スズキ | 半身の背側 | ||
昆布 | 2枚 | ||
粗塩 | 大さじ2 | ||
酢 | 適量 | ||
ルッコラ | 1/2束 | ||
ボッタルガ | 適量 | ||
オリーブオイル | 適量 | ||
白胡椒 | 少々 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
スズキは三枚におろした半身を中骨部分で切り分けて柵取りし、背側の身の尾の方から身と皮の間に包丁を入れて皮を引きます。粗塩をふって冷蔵庫で30分ほど締めて余分な水分を排出します。
その間に酢にひたした布巾で昆布を拭いて軟らかくし板状に広げます。
スズキから出た水分を捨てて布巾で塩と水気を拭きとり、昆布で巻くか上下を挟んでラップにくるみ冷蔵庫で一晩から二晩寝かせます。
使った昆布を皿に敷いて斜めに削ぎ切りにしたスズキを並べます。
真ん中に刻んだルッコラをこんもりと乗せ、軽く白胡椒を挽きオリーブオイルをたらしかけます。
カラスミをすりおろして散らしかければ出来上がり。
関連記事 - 刺身でいただくイタリア料理
Tartare di Tonno Fresco マグロのタルタル仕立て |
"Carpaccio di Spigola agli Agrumi 夏スズキのカルパッチョ オレンジとケイパーのソース | Gamberi Crudi al Basilico ボタン海老のクルード バジリコのソース |
Orata Cruda con Tapenade 桜鯛のカルパッチョ仕立て リグーリア風 |
0 件のコメント:
コメントを投稿