2016年9月17日土曜日
Insalata di Tonnetto Scottato 戻り鰹のたたき サラダ仕立て
黒潮に乗って北上し餌の豊富な金華山沖でひと夏を過ごしたカツオは、春とは別物のようにまるまると太り二度目の旬を迎えます。
"目には青葉 山ホトトギス 初鰹"... 江戸時代の有名な句ですよね。
やたらと季節感あふれる句だなぁと思いきやそれもそのはず、青葉も、ホトトギスも、初鰹も全部初夏の季語で、これだけ季語を連呼されればそう感じるのも無理ないですよね。
俳句の世界では本来こういうのは季重なりといってあまり好ましくないとされているんですが、あえてこういう手法を使うことで逆に清々しい季節の訪れ心から歓迎している様がよく伝わってきます。
この句を詠んだのは江戸初期に松尾芭蕉らとともに活躍した山口素堂。
目(青葉)と耳(ホトトギスの声)と舌(初鰹の味わい)という五感で季節を感じているところが素晴らしいし、また最後が食べものの初鰹で終わっているところもいい。
季節のものを尊び味わう日本の食文化を象徴しているようでもあるし、初物好きの江戸っ子の気質が行間から読み取れます。
江戸時代の人々はいち早く季節のものを味わう初物に対して並々ならぬ執念を燃やしていたようで、高いお金を払ってでも初物を口にするのが粋の証しとされていました。
"まな板に 小判一両 初鰹" や、"女房を 質に入れても 初鰹" なんて句もあったぐらい当時の初鰹は高価で、今の貨幣価値で1本10万円もしたというから驚きです。
これほど珍重された初鰹に対し戻り鰹はいわゆる猫またぎ(猫も跨いで通るほど美味しくない)とされ見向きもされませんでした。
食の西洋化に伴い肉や脂っこいものを好む現代人と江戸時代の人々では嗜好も違うでしょうが、そもそも脂が乗った魚は鮮度落ちが早いため、流通が発達していなかった当時は商品にならなかったのだとか。
マグロのトロも然りで今思えばなんとももったいない話です。
さて、同じ魚とはいえ獲れる時期によって味わいが大きく異なる鰹は、春と秋とでは刺身の食べ方も変わってきます。
鰹は血合いが多く鉄のような味と生臭みのある魚、脂の少ない初鰹だとそれが顕著になるため、炙ってたたきにするのが美味しい食べ方。
一方、脂の乗った戻り鰹はマグロのトロにも引けをとらないぐらい風味があり、たたきもいいけどそのまま生の刺身で食べる方が一般的です。
でもイタリア料理にする場合は戻り鰹もたたきにします。
近年イタリアでもカルパッチョなどの刺身料理が普及してきましたが、なんだかんだ言っても癖のないマグロや白身の魚が中心で、まったくの生の鰹はかなり食べにくいはずです。
なんちゃってイタリア風居酒屋みたいなところで私たち日本人が食べるならいいとしても、ちゃんとイタリア料理に仕立てたなと思わせるなら炙ってたたきにするのが賢明です。
それと、マグロや鰹は身が軟らかいので刺身は厚めに引くのが普通で、薄く削ぎ切りにするカルパッチョには向かないし、脂が乗っているためオイルにひたしてしまうのもくどくなるので、ルッコラと一緒にサラダ仕立てにしてさっぱりとバルサミコのソースをあしらいました。
鰹のたたきはそもそも漁師料理、上品に盛るより豪快にどっさり盛ってとびきり旨い旬の戻り鰹をもりもり食べたいですよね。
Ingredienti (per 2 persone)
戻り鰹(皮つきの腹節) | 1本 | ||
にんにく | 2片 | ||
ルッコラ | 1束 | ||
バルサミコ酢 | 大さじ3 | ||
砂糖 | ひとつまみ | ||
オリーブオイル | 適量 | ||
岩塩 | 適量 | ||
黒胡椒 | 適量 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
ルッコラは水で洗ってから水気を切り、適当な大きさに刻みます。にんにくはスライスします。
ソースパンにバルサミコ酢と砂糖を入れて半量になるまで煮詰めたら、そのまま粗熱をとって冷ましておきます。
鰹の身に金串を扇形に打って皮目を主に全体を炙ります。
七輪やバーベキューコンロがあれば炭火に落ちた脂がばちばちと焦げて燻されたような香ばしさが身にも移って美味しく出来ます。
バーナー(トーチ)で炙ってもできます。
いずれにせよ秋の鰹は皮が硬いので、比較的軟らかい腹節を使い皮目をよく焼いて食べやすくし、他の面はさっと焼き目だけつけます。
大きめのボウルやバットに氷水を用意しておき、炙ったらただちに冷水にとって串を抜きます。
粗熱がとれたら水気をふき、通常の刺身ではしませんがここで軽く岩塩を挽いて全体に下味をつけてから、厚めに引いて平造りにします。
平皿にルッコラを盛って軽く塩胡椒とオリーブオイルで和えます。
刺身も盛り込んでにんにくを適当に散らし、オリーブオイルと煮詰めたバルサミコソースをまわしかけて黒胡椒を挽けば出来上がり。
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