2017年2月18日土曜日

Pasta con Panna e Spinaci ハムと寒締めほうれん草の春待ちパスタ クリームソース

霜にあたって甘みがぐんと増したちぢみほうれん草をバターでソテーし芳醇なクリームソースを纏わせたハムと寒締めほうれん草のパスタ。
立春もとうに過ぎたというのにまだ寒く本格的な春の到来が待ち遠しいこの時期にぴったり、冷えた身体も温まるし春霞がかかったかのような淡い色調が逸る気持ちを充たしてくれる一皿です。

一年を通して店頭に並ぶほうれん草ですがもちろん本来は冬野菜。
白菜やねぎ、大根などと並んで冬の食卓には欠かせないですよねぇ。
でも冬野菜だからといって寒ければ寒いほど元気がよくなるというわけではなく、真冬の厳冬期には寒さに耐えきれず活力が低下します。
場合によっては霜焼けして葉が茶色く傷んで変色し、野菜としての商品価値がなくなってしまうことだってもちろんあります。
でも、そうならないぎりぎりのところで収穫するとどうなるか。

ハウスなどですくすくと育った野菜が突然霜にあたると、凍結などから野菜自身の身を守るため組織中に含まれる水分量を減らしたり、さらにでんぷん質を糖に変えようとします。
0℃で水は凍るけどアイスキャンディが凍らないのと理屈は同じ。
糖分濃度が高いと凍りにくくなることを野菜は知っているんですね。
その結果、自ら水分を減らし萎びて瑞々しさはなく見栄えは悪いけど、代わりに甘みがぐんと増して別もののように美味しくなるんです。

このようにリスクを冒してわざわざ霜や冷気にあてて生産されるのが、寒締め野菜といわれる野菜たち。
宮城県は旧矢本町の農家がもともと(見栄えが悪いため)自家消費用に作っていたというちぢみほうれん草もそんな寒締め野菜のひとつ。
今では宮城県が誇るブランド野菜として全国的に知られるようになり、県内だけでなく東北各地や北関東でも作られるほどになりました。
普通種のほうれん草と比べ甘みも栄養価も数倍、糖度はフルーツ並みでスィーツに使われることもあるというから驚きです。

さて、適度にえぐみのあるほうれん草は油脂分や乳製品と相性が良く、ベーコンと一緒に炒めたりオムレツやグラタンで美味しいですよね。
イタリア料理ではオイルとにんにくでシンプルにソテーしたり、茹でてリコッタなどと混ぜてラビオリやトルテッリの詰物にしたり、詰めずにそのまま丸めて茹でたマルファッティ(またはラビオリニューディ)、ジェノベーゼのようなペーストにしてパスタソースに、手打ちパスタに練り込んで緑色のパスタにしたりといった使い方をします。
普通の黄色いパスタとほうれん草を練り込んだ緑のパスタを二色一緒に使ったパスタ料理のことを、その見た目から麦わらと干し草のパスタ=Paglia e Fieno などと郷愁を誘うネーミングで呼びますが、二色使いであることがわかるよう淡い色のクリームソースで和えるのがお約束。
まだ肌寒い早春の時期に食べたくなる一皿なんですよねぇ。

パスタソースの定番カテゴリのひとつのようなクリームソースですが、イタリアでは生クリームを使った料理は戦後の復興期に流行したものの現在はちょっと古くさいというか、懐かしい味という位置づけ。
高カロリーなので健康志向という点でも敬遠されがちです。
でも本格的な春の訪れを待つ今の季節だけは例外。
春霞がかかったかのような淡いパステルカラーの見た目と身体が温まる濃厚ソースは、春を待ちわびる人々の心にぴったりと共鳴します。




Ingredienti (per 2 persone)

スパゲッティ250g
ほうれん草1束
ハム100g
生クリーム200ml
牛乳300ml
バター30g
パルミジャーノ20g
適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

ほうれん草は流水で洗って根を落とし半分に切り分けます。
ハムは短冊状に刻み、パルミジャーノは削っておきます。

フライパンを中火にかけてバターでハムとほうれん草を軽く炒めます。
生クリームと牛乳を加え、ふつふつしてきたら弱火にして塩胡椒で味を調整し、そのままパスタが茹で上がるのを待ちます。

パスタは表示よりも少し早めに茹で上げ、フライパンに移してクリームソースを絡めながら煮含めていきます。
もう一度味を見て必要に応じて塩で調整します。
火を止めて削ったパルミジャーノを加えて混ぜ合わせます。
皿に盛って胡椒を挽きかければ出来上がり。

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