2018年2月24日土曜日

Linguine con Calamari Primaverili 春ヤリイカのリングイーネ セピア色のソース

新鮮なヤリイカをオリーブオイルでさっとソテーして、自身の持つ墨とトマトでセピア色に仕上げた漁師町風ヤリイカのリングイーネ。
本来いか墨ソースはスミをたっぷり持っている甲イカで作るもの、でも高嶺の花だったヤリイカがぐっと値を下げてくるこの時期にヤリイカを堪能しない理由なんてありませんよね。

ヤリイカの季節ですねぇ。
冬から早春にかけて旬を迎えるヤリイカですが、冬場は深場にいるため釣りものなどが中心となり、漁獲量がそれほど多くありません。
そのため料亭など高級店向けの需要が供給を上回り、一般消費者のもとまでなかなかまわってこない高級かつ希少な存在。
その値段たるやスルメイカの10倍の1000円近くもするから驚きです。 でも、にわかに春めいてくる今頃の時期は産卵のために浅場に寄りつき漁獲量がぐっと増えるので、手頃な値段で店頭に並びだします。
まぁそれでもスルメイカの倍はしてますが。。。
つまり一般消費者にとってヤリイカの旬はとても短いんです。

ヤリイカとスルメイカを混同している方もいると思いますが、スルメも刺身は旨いですが、火を通すとぱさぱさと硬くなったりもっさりとした残念な食感になってしまいます。
イカってそういうものでしょと思いこんでいる人は、同じイカなら安いスルメの方を買うという人だと思いますが、その同じイカという発想がそもそも間違い。
ヤリイカは刺身で旨いのはもちろん、加熱調理しても身はぷりっとして噛むとぱつんとした歯ごたえがあり食味の違いは歴然。
それにヤリイカは地中海にも生息するイタリアでもポピュラーなイカでイタリア料理に使われる筒イカはもっぱらこのヤリイカなんですね。
ペスカトーレやアクアパッツァをヤリイカでなくスルメイカで作っても美味しくできないのはこのためで、イカに対する価値観を大きく変えてくれるイカでもあります。

そんな素敵なヤリイカですが、唯一欠点があるとすれば流通する時期が冬場に限られるということ。
魚介ソースのパスタは南イタリアの夏のバカンスのイメージそのもので夏に食べたいのに、夏は鮮魚のヤリイカが流通していないんです。
ヤリイカの寿命は産卵期の春を起点とした一年で、初夏の頃に孵化したばかりの稚イカは夏場はまだ赤ちゃん。
これが秋には子イカほどのサイズに成長、冬には立派な成イカとなって割烹や寿司店で食通を唸らせます。
そして産卵期間近の早春の頃になると打上げ花火のフィナーレのごとく市場を賑わせ、その後は火が消えたようにぱったりと姿を消します。
つまり一般消費者がヤリイカを存分に味わうなら今しかないんですね。

今日はそんな短い旬を味わうヤリイカのいか墨ソースのパスタ。
でもこれ、ちっとも黒くないと突っ込みが入りそうですよね。
実はイカスミソースってああ見えて実はトマトソースがベース。
というかほぼトマトソースそのもので、そこに新鮮なイカの墨を何滴かたらせばイカ墨ソースが出来上がります。
でも、そもそもイカスミ料理はヤリイカより持っているスミの量が多い甲イカ(別名スミイカ)で作るもの。
だからイカ墨のことをイタリア語でネロディセッピア(=甲いかの墨)と呼び、ヤリイカ(カラマーリ)の墨とは呼ばないんですね。

セッピアというのは実はセピア色の語源でもあります。
甲イカ=セッピアで作ると真っ黒になるのにヤリイカで作るとセピア色になるというのもなんだかややこしい話ですね。
真っ黒なイカスミパスタはヴェネチア風が有名ですが、イカ墨ソースに硬質小麦のパスタを合わせるのは南イタリアの港町あたりの郷土料理、それも漁師の家などで食べられる家庭料理といった雰囲気です。
色褪せた写真に例えられるセピア色も、春イカのパスタのセピア色なら冬のモノトーンから春のパステルカラーへの過渡期の色に見えますね。

Ingredienti (per 2 persone)

リングイネ250g
ヤリイカ中2杯
ホールトマト1缶
にんにく2片
玉ねぎ1/2個
白ワイン1/2カップ
唐辛子1本
プレッツェーモロ5枝
適量
黒胡椒適量
パスタの茹で汁レードル2杯

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

玉ねぎとプレッツェーモロ(イタリアンパセリ)は粗みじん切りにし、にんにくは縦半分に切って芽を取り除き包丁の腹で潰します。
ヤリイカは胴から脚とわたを引き抜いて背骨を外し、エンペラも外して薄皮を剥いて水洗いしてから筒切りにします。
わたと脚を切り離し、わたについた墨袋をつぶさないように取り置き、脚は水洗いして二等分に、エンペラもひと口サイズにカットして胴体とともに水気を切っておきます。

フライパンをごく弱火にかけ、たっぷりのオリーブオイルでにんにくの香りをじっくり出してから取り出します。
続いて玉ねぎを加えてソフリットし、途中で唐辛子も加えます。
ヤリイカを加えてさっと炒めてから白ワインを注ぎ入れ、火を強くしてアルコール分を飛ばしたらヤリイカを一旦取り出します。
ホールトマトを加えて少し煮込み、墨袋に楊枝で穴を開けて垂らし入れセピア色のソースに仕立てて塩胡椒で味を調整します。

隣でパスタを茹でて、茹で汁をレードルで2杯加えてのばします。
パスタは表示より短く上げてソースの旨みを吸わせながらアルデンテにもっていき、取り出しておいたヤリイカも戻し入れます。

皿に盛り付けてプレッツェーモロを散らし、黒胡椒を挽いて、仕上げに香りの良いオリーブオイルをまわしかければ出来上がり。

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