2018年12月23日日曜日
Minestra Maritata Napoletana 冬の青菜と肉のスープ ミネストラマリタータ
華やかさはまるでないですがこう見えてれっきとしたクリスマス料理、家庭ではこの時期になると大鍋でたくさん仕込んで毎日食べます。
イタリアの家庭料理を多少でもかじったことのある方は、このスープを見たらどう思うでしょう。
きっとイタリアっぽいねぇって思うんじゃないかと思いますが、逆に、そうでない人の感想は大概その正反対。
料理というよりまるで寄せ鍋とかのあとの鍋底に残った残骸みたいで、青菜はすっかり色褪せて歯ごたえがなくなってそうだし、じゃがいもやにんじんは原形をとどめてないから見えてないし、肉の切れ端は完全に出涸らしになっちゃってるようにもみえます。
つまり、明らかに火が通り過ぎているんですよね。
イタリア料理=トマトやパプリカやバジリコなどカラフルな夏野菜とかとろとろチーズや魚介料理というイメージを抱く人には、こんなものがイタリア料理っぽいとは夢にも思わないはずです。
鍋料理の残菜は意図してそうしてるのではなく残りものなので仕方ないとして、これから料理を作るというときに、わざわざこんな不味そうに作ることは普通はしません。
炒めものでも煮物でもそうですが、野菜類は火が通りやすいので適度に火を入れてしゃきっとした食感を残したり彩りよく仕上げるのが普通。
和食はもちろん中華でも洋食でも基本は同じです。
でも、イタリア料理では野菜はくたくたになるまで炒めたり煮崩したりする方がむしろ一般的で、これでもかってほど徹底的に火を通すことで野菜本来の甘みや旨みを引き出してるわけです。
今日のスープもそんながっつり火を通す典型的なイタリアの野菜料理。
彩りは悪いし煮崩れてるしでちっとも美味しそうに見えないんですが、こう見えてもれっきとしたナポリの伝統料理なんです。
そして面白いことにこんな地味なのになぜかマリタータ(=結婚という意味)という華やかなりし名前をつけてもらっています。
ミネストラがスープ料理のことなので、直訳すれば結婚したスープ。
英語ではイタリアンウェディングスープと呼ばれ、かつて南イタリア系移民たちがパスタやピッツァとともにアメリカに持ち込みました。
イタリア系移民はシチリア出身が多い気がするのはゴッドファーザーのイメージがあるからだと思いますが、実際には、ナポリ地方の出身者もたくさんいます。
移民が持ち込んだパスタもピッツァもナポリ料理ですしね。
ミネストラマリタータという名前の由来ですが、結婚式で出されるからかと思いきやそうではなくて、肉と野菜がとろとろの渾然一体となった融合状態を指して結婚という表現を使っています。
フランス語のマリアージュも結婚という意味ですが、ワインと食べものの相性が良いときや、別々の素材がひとつに調和した料理などを指してマリアージュと呼びますので、同じ使い方です。
結婚式とは関係がなくても、クリスマスや復活祭といったお祝いごとに縁があり、とくにクリスマスが近づいてくるとナポリの家庭ではこれを大きな鍋で大量に仕込み、毎日のように食卓に出すんだそうですよ。
これを食べながら日々クリスマスを待ちわびるんですね。
日本の煮ものやポトフやシチューでは芋や根菜類を多く使うんですが、ミネストラマリタータはビエトラ(ふだん草)やエンダイブ、チコリ、縮緬キャベツといった青菜が何種類も入るのが特徴です。
青菜は茶色っぽく変色するためなおさら見た目が悪くなるわけですが、野菜本来の甘みや旨みが全部スープに溶け出てなんとも滋味深い味。
つまり、葉野菜は具として食べるというよりスープの出汁にすることが目的なのかもしれないですね。
そして冬はちょっとこってりしたものが美味しく感じるので、野菜だけでなく何種類もの肉やソーセージも一緒に煮込むのが特徴。
今日は日本で普通に入手しやすい葉野菜を使い、肉は出汁の出る骨付き豚肉を使ってミネストラマリタータを作っています。
こくもしっかりあるので寒い季節には五臓六腑に沁みわたりますよ。
Ingredienti (per 10 persone)
骨付き豚肉 | 1kg | ||
にんにく | 2片 | ||
玉ねぎ | 中2個 | ||
じゃがいも | 2個 | ||
セロリ | 1/2本 | ||
にんじん | 1本 | ||
縮緬キャベツ | 1/2個 | ||
ケール | 1束 | ||
小松菜 | 1束 | ||
ほうれん草 | 1束 | ||
オリーブオイル | 適量 | ||
ローリエ | 2枚 | ||
パルミジャーノの皮 | 適量 | ||
塩 | 適量 | ||
黒胡椒 | 適量 | ||
パルミジャーノ | 適量 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
深鍋に水を張り塩少々とローリエ、あればパルミジャーノの皮を加えて骨付き豚肉を弱火で1時間ほど茹でます。骨から良い出汁が出てほろほろと身離れもよくなります。
火を止めたら鍋ごとそのまま放置し、肉が冷めたら取り出して骨を外しひと口大に切り分けます。
にんにくは粗みじん切りに、玉ねぎは半月切りに、にんじんとセロリ、じゃがいもは賽の目に、各種青菜はざく切りにします。
大きな鍋にオリーブオイルをしいて中火で香味野菜を先に炒め、続いて青菜を徹底的に炒めます。
焦げ付きそうになるけど野菜の水分でぐつぐつしてくるので大丈夫。
くったりして嵩が半分以下になりじゃがいもやにんじんが簡単に割れるぐらいになったら弱火にして肉のスープを加えます。
30分ほど煮込んだら塩胡椒で味を調整し肉も加えます。
スープ皿に盛って黒胡椒を挽いてパルミジャーノを削りかけます。
仕上げにオリーブオイルをまわしかけ、パルミジャーノを削りかければ出来上がり。
関連記事 - イタリアの冬のスープ料理
Minestra con Pasta Mista 冬野菜とパスタミスタのミネストローネ |
Zuppa di Fagioli Cannellini ハムといんげん豆のスープ |
Soffritto Napoletano ( o Zuppa Forte ) ぴり辛豚もつ煮込みソフリット |
Zuppa di Cipolle Gratinata ヴァルドスタ風オニオングラタンスープ |
今年もずっとブログ読めて良かったです:)
返信削除また来年も読むの楽しみにしてます☺︎
今も通勤の途中にブログ書いてるのですか?
いつもありがとうございます。
削除料理を作ったら写真を撮り、良いのが撮れたらイメージを膨らませ、季節感を考慮しアップする日を決め、あとは通勤途中に記事をiPhoneアプリでしたためます。
ずっと変わりません。笑