2016年8月20日土曜日
Carpaccio di Pesce Azzurro 夏鯵のカルパッチョ
青魚にしては淡白で身に歯ごたえがある鯵は、削ぎ切りにしてオイルをまわすカルパッチョで持ち味が活きます。
イタリア料理といえばトマトにオリーブオイルに新鮮な魚介類、というイメージもありますが、海沿いの地域や観光地ではそういう側面もあるものの本来は狩猟民族なのでやはり肉食が中心。
実際、国土のほとんどが海に囲まれていて漁業もそこそこ盛んなのに、魚介の消費量はヨーロッパでは平均以下なんだそうです。
よく食べられているのが海老やイカ、ムール貝といった甲殻類や貝類、魚ではアンチョビなどの加工品を除けば白身魚の方が圧倒的に人気。
青魚="Pesce Azzuro" はまたの呼び名が "Pesce Povero"=哀れな魚、つまり下等な魚という偏見がいまだにあり、イワシやサバなどは比較的食べられている方でアジは市場でもなぜか人気がありません。
アジは日本人が大好きな魚のひとつですよね。
たくさん獲れる大衆魚で値段も安いし、旬は夏ですが季節を問わず通年獲れる身近な存在で、料理のバリエーションも豊富。
国民的な魚のひとつと言っても過言ではないぐらいです。
刺身で旨いのは言うまでもないですが、刺身以外では小アジや豆アジを丸ごとから揚げにして甘酢にじゅっと浸けた南蛮漬けも美味。
二度揚げしてから浸ければ骨まで軟らかくなって、これを頭から丸ごと食べるのが美味しいので、小ぶりのサイズのものが向いています。
一方、中型以上のサイズならアジの開きが旨い。
温泉宿の朝食の定番、というより日本の朝の食卓のイメージそのまま。
保存食が本来の目的だったわけですが、最近では熟成された旨みの魅力の方が科学的にも注目されるようになってきています。
同じ焼魚なら鮮魚のアジより開きの方が断然旨いですもんねぇ。
いやいや、アジは塩焼きがいちばん、と仰る方もいると思います。
確かに日本の魚料理といえば一に刺身、二に焼き魚というのが定番で、アジ料理のなかでも塩焼きは外せない感があります。
でも、青魚の塩焼きの魅力はサンマやイワシ、サバのように脂が乗って皮目に脂が浮いてじゅうじゅう焦げたり、火に脂がぽたぽた落ちて煙でもうもうと燻された香ばしさなどです。
脂の乗りが少ないアジは青魚というよりも白身魚の塩焼きみたいだし、それでいて鯛やスズキほどの上品さもなく味が薄くて水っぽい感じ。
イタリアでアジの人気がないのはこのあたりが理由かも。
さて、イタリア料理が日本人の口に合うのは、季節感や素材そのものの味を大切にするところが和食の考え方と共通するから。
一方、食に関して非常に保守的で伝統的に自国の食文化を重んじ外国の食文化に対する関心が低いイタリアも、シンプルで健康的な日本料理に対しては親近感を持っていると言われています。
その象徴のひとつが魚介のクルードやカルパッチョといった刺身料理。
カルパッチョはそもそも生肉料理のことで、魚のカルパッチョは日本の刺身料理をアレンジした和製イタリアンなんですが、寿司や刺身などの和食文化がイタリアに逆輸入される形で浸透していきました。
青魚にしては身に歯ごたえのあるアジは、もとより薄く削ぎ切りにした刺身を皿に並べるカルパッチョにぴったり、淡泊でオリーブオイルとの相性もいいし青魚特有のクセもほとんどありません。
煮ても焼いても美味しくない魚というレッテルを貼られたアジですが、刺身で旨いと再評価される日もそう遠くないかも。
Ingredienti (per 2 persone)
アジ | 中3尾 | ||
ワインヴィネガー | 1/2カップ | ||
砂糖 | ひとつまみ | ||
レモン | 1/2個 | ||
にんにく | 1/2片 | ||
オリーブオイル | 大さじ3 | ||
プレッツェーモロ | 5枝 | ||
塩胡椒 | 少々 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
アジはウロコを引いてから3枚におろし、皮を引いて小骨を抜きます。バットなどにワインヴィネガー、塩少々、砂糖を合わせて、アジの身を浸して軽く酢〆にします。
〆サバやイワシのマリネなどと違って風味づけが目的なので、浸す時間は10分程度、〆るというより洗う感じです。
にんにくは薄いスライスに、プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)は粗みじん切りに、レモンは銀杏切りにします。
アジは水気を拭き取ってから斜めに削ぎ切りにして皿に並べます。
フグ刺しのように同じ向きに綺麗に並べるのではなく、向きはランダムでいいのでパズルをはめるように隙間なく配置していきます。
塩をぱらぱらとふりかけてレモンとにんにくを散らし、オリーブオイルをまわしかけ、指の腹でぺたぺたと全体に行きわたらせます。
プレッツェーモロを散らし黒胡椒を軽く挽けば出来上がり。
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