2017年4月29日土曜日

Frittura di Avannotti di Trota 稚鮎のフリット

青葉が目に眩しい季節になると出始める旬の稚アユをフリットにして、蓼(たで)酢に見立ててバジリコとパセリにヴィネガーの酸味がきいたピュレを添えた和製イタリアンな一皿。
ひと口に春の味覚といっても肌寒い立春の頃と汗ばむ陽気の時期とではだいぶ趣も違いますが、盛夏が旬のアユの仔だけに夏が待ち遠しい今の季節の前菜にぴったりです。

アユといえばその名を聞いただけで条件反射のように浮かんでくるのが川のせせらぎの音色に釣り人、対岸の清々しい深緑、蝉の声、入道雲、夕立ち、虹といった、ノスタルジックな古き良き田舎の夏の光景。
となりのトトロ、河童のクゥと夏休み、サマーウォーズなど夏が舞台のアニメ映画にも描写されている田舎の風景とも重なります。
青草のにおい、カブトムシ、向日葵、夏祭り、花火...
あぁやっぱり日本の夏っていいなぁ。

さて、アユは日本を中心に東アジア一帯に生息する淡水魚。
その容姿はしなやかで美しくていかにも女性的、また食味はどこまでも上品で淡白であるがゆえに清流の女王と称され、古来より夏の風物詩として親しまれてきました。
成魚のアユは動物性の餌は食べずにもっぱら川底の岩についた苔を食むこと、そして苔がよくついた岩のまわりに縄張りをつくって侵入者には体当たりして追い払おうとすることから、この習性を利用して鮎釣りは餌ではなく友釣りという独特の方法で行います。
釣り糸の先にオトリ鮎をつないで苔のついた岩の近くを泳がせ、縄張りを主張して体当たりをしてきたところをオトリの後ろの針に引っ掛けて釣るというもの。
釣ったアユはなんといっても蓼酢を添えた塩焼きで食べるのが定番。
アユの身は香ばしいスイカやキュウリに似た独特の香りがあることから香魚の別名もあります。

そんな典型的な川魚という感じのアユですが、実は秋に孵化するとすぐ海に下り、幼魚の間の半年間を海で暮らします。
アユの寿命は一年なので、一生のうちのなんと半分は海で過ごしていることになりますね。
海といっても塩分濃度がそれほど濃くない環境を好むため、河口からはそれほど遠くに離れることはなく、またこの期間はまだ鱗が形成される前のシラスやシラウオのような幼生です。
そして春になるとアユらしい姿をした稚魚に成長し、生まれ故郷の母川の河口に集まり身体を淡水に慣らす準備をしてから遡上していきます。
激流の中をまだ小指ほどの大きさしかない稚アユたちがぴょんぴょんと一生懸命ジャンプし気丈に川を上っていく姿には感動すら覚えます。

鱒など淡水魚を使ったイタリア料理はロンバルディア州やヴェネト州の山あいの湖水地方に見られますが、鮎はイタリアには生息しておらず、また極めて日本的な印象の川魚であることから、和の要素を織り込んだ和製イタリアンに仕立てるのが粋。
和食もイタリア料理も旬の素材をシンプルに調理し季節を感じるという考え方が本質にあるのでしっくりとなじみます。
魚体に波打たせて清流を泳ぐ姿に見立てた盛付けなどをよく見ますが、家庭ではそこまではしないにせよ、蓼酢に見立てた酸味と苦味のきいたグリーンソースを添えると引き締まります。




Ingredienti (per 4 persone)

稚アユ20尾
薄力粉適量
サラダ油適量
レモン1/2個
にんにく1/3片
プレッツェーモロ10枝
バジリコ10枚
ワインヴィネガー小さじ1
オリーブオイル適量
パン粉少々
適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

まずグリーンソースを準備します。
刻んだバジリコとプレッツェーモロ(イタリアンパセリ)、みじん切りのにんにくに少量のオリーブオイルを加えながらすり鉢ですり潰して、塩とヴィネガーを加えます。
パン粉を加えて粘度のあるピュレ状になれば出来上がり。

稚アユは流水で洗って水分をふきとってから軽く塩胡椒で下味をつけ、薄力粉を薄くはたきます。
溶いた衣を厚くつけると特徴的な顔や黄色いヒレが隠れてしまい何だかわからなくなってしまうためです。
サラダ油を180℃に熱し稚アユを揚げていきます。
皿に盛ってサルサヴェルデと櫛切りのレモンを添えれば出来上がり。

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