2017年6月17日土曜日
Sarde Marinate alla Menta 入梅鰯のマリネ ペパーミントの香り
しっとりと脂が乗り口の中でとろける旨さは高級魚にも引けをとらないほどですが、青背の大衆魚であるが故に日々の食卓にも躊躇なく出せる普段着のような手軽さが嬉しいですね。
日本人もイタリア人も大好きな庶民の魚といえばイワシですよね。
寿司や刺身はもちろん、塩焼きにフライ、干物、そしてたくさん穫れて安価なのですり身にしてつみれに加工されたり、幼魚や稚魚は煮干しやしらすの原料にもなります。
イタリアでもマリネやバーベキューグリルで丸焼きにしたブラーチェ、フリットや香草パン粉焼き、塩漬けアンチョビやコラトゥーラ=魚醤の原料としても利用しますし、また和のイメージのあるシラスもオムレツやかき揚げのようなフリッテッレなどで食べます。
このブログでも日本の南蛮漬けに似たスカペーチェやトマトで煮込んだアンコーナ風、シチリア名物ベッカフィーコ、しらすもブルスケッタやピッツェッテ、パスタなどいろいろな料理を作ってきました。
でもいちばん頻繁に登場してるのが実はこのマリネなんですよね。
マリネとは素材を塩やヴィネガーで〆めてオイルに漬けた料理のこと。
日本でも光りもの=青魚は大概酢締めにしますが、青魚は足が早いのでこのへんの考え方は万国共通なのでしょう。
この青ものの足の早さは体内の消化酵素によるもので、彼らは回遊性で泳ぐスピードも非常に速く運動量が多いため体内で酵素がたくさん生成されるんですが、死後はこの酵素が自分自身の体の消化を促進する働きをするため、結果として腐敗が進みやすいんです。
そこで青魚を寿司や刺身で食べようという場合は、傷みにくくするため〆めるという下処理を施しておくのが一般的。
この〆めるという行為ですが、塩をふって置いておくと浸透圧の作用で身に含まれる水分が抜け出るんですが、この含有水分量が減少することによって腐敗の進行を遅らせようというもの。
魚を干物や乾物にすると日保ちするようになるのと理屈は同じです。
昔の人はよくそんなことを思いついたもんですよね。
でも、考えてみればみんな大好きなあの江戸前寿司だって冷蔵庫もなく流通も発達していない時代に屋台から発祥したわけです。
もちろん当時は生ものは扱えないので、目の前の東京湾で揚がる魚介をあらかじめ加熱するなどの下処理をしたもの、例えば蒸し海老や煮貝、穴子なら蒸して煮ツメを塗るとか、鮪は醤油に漬けてヅケにするなど、それぞれのネタに合った調理法を工夫し提供していたそうです。
そしてアジやコハダ、イワシなどの光りものは酢締めです。
ただし現代のように刺身に近い半生の状態ではなく、それこそ真っ白になるまでしっかり〆めていたものと思われます。
よく酢で〆めると言いますが、さっきも書いたように実際の脱水工程は塩が担っているので〆めているのは酢ではなく塩です。
水分と一緒に生臭さも抜けるので下処理としては一石二鳥です。
あとはさっと洗って生姜の入った酢に漬け込むだけ。
塩も酢も生姜も強力な殺菌作用があり、当時の寿司ネタとしてはとても理にかなった調理法だったわけですね。
イタリアのマリネもこのへんはだいたい同じで、まず塩で〆める工程が "Sotto Sale" ソットサーレ、酢漬けが "Sott'Aceto" ソットアチェートで最後がオイル漬け工程の "Sott'Olio"=ソットオーリオです。
オイル漬けは日本の酢締めにはないですが、食材を空気に触れさせないことで保存性を高めるところが理にかなっています。
さて、これまで盛付けやソースが違うパターンで幾度となく作ってきたイワシのマリネですが、今日は初夏(梅雨)らしくペパーミントの葉をあしらった爽やかな仕立て。
ミントの葉を生のイワシと一緒に口に運ぶと、ちょっと大葉に似た風味が感じられるので、マリネより刺身派という人にも好評です。
そしてなにより蒸し暑い梅雨の気候によく合います。
Ingredienti (per 2 persone)
マイワシ(大) | 4尾 | ||
粗塩 | 大さじ4 | ||
新にんにく | 1/2片 | ||
白ワインヴィネガー | 1/2カップ | ||
オリーブオイル | 大さじ2 | ||
ローリエ | 1枚 | ||
レモン | 1個 | ||
ペパーミント | 2枝 | ||
黒胡椒 | 適量 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
イワシは頭を落として腹を開きワタを取り除いて流水で洗います。薄皮を剥いて両面にたっぷりの塩をふり30分ほど冷蔵庫で〆めます。
イワシから水分が出てきますが、そのとき魚臭さも一緒に抜けます。
レモンを搾ってスライスした新にんにくとローリエ、オリーブオイル、塩胡椒とともにボウルで攪拌してドレッシングを作ります。
イワシを流水で洗い流してから水気をふきとり、半身を三等分ぐらいに切り分け、適度な塩抜きを兼ねてヴィネガーに数分漬けます。
ペーパーで拭いてからボウルのドレッシングに漬け込み、冷蔵庫で味を馴染ませます。
皿に並べて黒胡椒を挽きミントの葉をちぎって散らせば出来上がり。
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