2018年4月14日土曜日
Carpaccio di Tonnetto alla Senape 春鰹のカルパッチョ 新玉ねぎと粒マスタードのソース
藁焼きにして薬味たっぷりの土佐造りで食べる春の鰹はクセのない鮪や白身魚と違って外国人にはやや血生臭く感じる素材、舌にピリッとくる辛味と酸味でより食べやすい味に仕立てます。
春爛漫の陽気になってくるといよいよ初鰹の季節、スーパーや飲食店の店頭にも初鰹入荷の文字が踊りはじめましたねぇ。
春鰹とも呼びますが初鰹と呼ぶ方が一般的でしょうか。
この呼び名、厳密にはまだ肌寒い頃に鹿児島などで獲れるものが春鰹、陽春の頃に高知や静岡で揚がるものを初鰹と呼び分けているようです。
それって意味が逆のような気がしないでもないですが笑、いずれにせよさっぱりした赤身の春の鰹のことを指しているので、広義にはどちらも同じ意味だと思っててよさそうです。
この時期の鰹にわざわざ初とか春をつけて呼ぶのは、今さら言うまでもないですが、カツオには春と秋と二度の旬があるから。
春と秋とでは別の魚のように味わいが異なるところもドラマチックで、季節感を大切にする日本人の心を掴んで放さないんですね。
私たちが食べている鰹はそのほとんどが二歳魚で、生後一歳の冬までは南のフィリピン周辺海域で過ごし、二歳になり春を迎えると餌を求めて黒潮に沿うように北上し始めます。
西表島や石垣島(先島諸島)、沖縄諸島、奄美諸島を経て鹿児島沖合に出現、鰹の産地として名高い南国土佐には4月頃に到達します。
鰹がこの時期に食べているのが主にアジやトビウオ。
餌に脂がほとんど乗ってないので、それを食べる鰹の方も脂肪の少ないさっぱりした味わいになるわけです。
もともと鰹は血合いが多い魚なんですが、脂が乗っていないとなおさら血生臭く感じるので、香ばしく炙ってたたきにして、たっぷりの薬味と一緒に食べる土佐造りがこの時期の鰹に合った食べ方なんですね。
鰹の群れはこの後さらに和歌山、静岡と本州南岸に沿って北東に進み、房総沖あたりにやってくるのが5月頃。
ちなみに江戸っ子が嫁を質に入れてでも食べたかった初鰹というのは、江戸からほど近い鎌倉や小田原で獲れたものだったそうです。
水揚げされた鰹はただちに馬や船で江戸まで運ばれ、冷蔵庫も氷もない時代だったにもかかわらず刺身で食べられていたというから驚きです。
鰹はそのまま北上し北海道の東沖合あたりまで達するものもいますが、群れの多くは黒潮と親潮がぶつかり合い餌となる魚が豊富な漁場として知られる宮城県の金華山沖にひと夏居座ります。
食べる餌もイカやサバ、イワシなどにシフトしていくため、この頃にはしっとりと脂が乗って戻り鰹のような味わいになります。
つまり東北地方では赤身の初鰹は食べられない代わりに夏の間中ずっと脂の乗った鰹が食べられるというわけですね。
さて、近年和食とりわけ寿司や刺身は海外でも高い人気を誇っていて、魚を生で食べる習慣がなかった国や地域の人たちにも浸透しています。
もともと和製イタリアンだった魚介のカルパッチョも、本場イタリアに逆輸入され今ではすっかり定着していますよね。
ただ、イタリア語の料理サイトなどを見てて気づくのが、生(刺身)で食べられている魚はマグロやメカジキ、鯛、鱸などほぼ決まっていて、くせがなく生でも食べやすい魚ばかりだということ。
刺身を食べ慣れている日本人ですらちょっと血生臭いと感じる春の鰹はきっと外国人にとってはかなり食べにくいはずです。
春の鰹には同じ時期が旬の新玉ねぎをよく合わせますが、すりおろしてピュレにしたものをソースのベースにすると、舌にぴりっとくる辛味が血合いの多い赤身と相性が良いことに改めて気付かされます。
カルパッチョのソースに不可欠な酸味は粒マスタードで。
これなら春の鰹でも外国人をおもてなしできますね。
Ingredienti (per 2 persone)
春カツオ | 100g | ||
にんにく | 1/2片 | ||
新玉ねぎ | 1個 | ||
粒マスタード | 小さじ2 | ||
オリーブオイル | 適量 | ||
白ワインヴィネガー | 少々 | ||
塩 | 適量 | ||
黒胡椒 | 適量 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
にんにくと新玉ねぎの半分はすりおろし、玉ねぎの残り半分は縦に薄くスライスにします。おろした玉ねぎとにんにく、粒マスタード、オリーブオイルをボウルでよく混ぜ合わせ、塩胡椒で味付けします。
粒マスタードにヴィネガーが入っていますが、味を見て酸味が足りないようならヴィネガーを少々加えます。
カツオは身が軟らかいため厚みのある平造りにするのが一般的。
カルパッチョは薄く切りますがカツオの場合はあまり薄くならないよう注意し、斜めに削ぐようにして平造りよりもやや薄めに引きます。
平皿にカツオの身を並べていきますが、同じ向きに並べるのではなく、皿の外側からパズルをはめるように隙間なく並べていきます。
上からソースをたっぷりまわしかけ、軽く黒胡椒をひきかけ、スライスした新玉ねぎを真ん中にこんもり乗せれば出来上がり。
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はじめまして。
返信削除いつも魅力的なレシピを楽しませていただいております。
今年は一味違った初鰹を堪能できそうです!
ありがとうございます!
sachiko様
削除お返事が遅くなってしまいましたが、コメントありがとうございます。
私自身は鰹の血合などへっちゃらですが、やや苦手だった家族も美味しいと食べてたのでもう何度かリピしています。
今後ともよろしくお願いします。