2015年3月21日土曜日

Orata Cruda con Tapenade 桜鯛のカルパッチョ仕立て リグーリア風

産卵シーズンを目前に控えて、魚体が美しい桜色に染まった真鯛の身を薄く削ぎ切りにした、春らしいカルパッチョ仕立ての刺身料理。
リグーリア州特産のタジャスカオリーブのペースト、南仏プロヴァンス伝統のタプナードを添えた大人の味の一品です。

端正で凛々しい姿をした真鯛は昔から祝い事などの席には欠かせない、日本人にとってはちょっと特別な位置づけの魚。
色が赤いところも縁起がよいとされてきた理由のひとつですが、そんな鯛の赤い色も春になるとドラマチックに変化します。
そう、ちょうど桜の開花に合わせるかのように、雌の鯛の体色が美しい桜色の婚姻色に発色するため、この時期の真鯛は "桜鯛" とも呼ばれ、旬の時期ともあいまって春の風物詩になっています。

鯛はイタリア料理でもよく使われるお馴染みの魚。
スズキなどとともに白身魚を代表する食材ですが、日本の真鯛のように赤くなく黒鯛のような色をした種類です。
お腹にハーブを詰めてグリルやローストや蒸しもので食べられますが、味はやや大味で、刺身で美味しいのはやはり身が締まった日本の鯛。
淡白で上品な味はオリーブオイルともよく合います。

さて、北イタリアに位置するリグーリア州ですが、アペニン山脈が北側の寒気をさえぎるため、高緯度ながらも一年中温暖な地中海性気候で、まるで南イタリアのような雰囲気の土地柄です。
料理もトマトやオリーブオイルをふんだんに使ういわゆる地中海料理。
ハーブや特産のタジャスカオリーブを多用した彩りよい盛り付けが特徴で南のものよりお洒落で洗練されています。
オリーブ、アンチョビ、ケイパーをペーストにしたタプナードは、南仏プロヴァンス地方発祥とはいえ、材料はむしろイタリアのもの。
リグーリアと国境を挟んで隣接していて、歴史的にもイタリア統一前は同じ国だったので、気候風土も食文化もよく似ています。

今日はそのタプナードをソースにしたリグーリア風の魚介の一皿。
まだ少し肌寒い春のリヴィエラをわたる潮の香りが漂ってきそうです。
いい食材が手に入ったときは、シンプルながらもちょっぴりこだわった料理に仕上げて、悦にひたりながらいただきたいですね。


Ingredienti (per 4 persone)

真鯛1柵
オリーブオイル大さじ1
岩塩適量
イタリアンパセリ3枝
おごのり適量
レモン1/2個
per la Tapenade
タジャスカオリーブ20粒
にんにく1/2片
アンチョビフィレ2尾
ケイパー大さじ1
オリーブオイル適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

まずタプナードペーストを作ります。
タジャスカオリーブは種を抜いて、にんにく、アンチョビ、ケイパーとともにざく切りにします。
オリーブオイルを少量加えてフードプロセッサにかけて、オイルを足しながらペースト状にし、黒胡椒を加えて味を引き締めます。
ケイパーが塩漬けの場合はレモン汁を少し加えて酸味を補います。
味を見て必要であれば塩も加えて調味します。
バジリコのペストと同様に、煮沸したガラス瓶に詰めてオリーブオイルの層で覆えば、1ヶ月ぐらいは冷蔵庫で保存が可能になります。

塩蔵のおごのり(テングサに似た海藻)は水につけて塩抜きし、水気をふきとります。
イタリアンパセリは粗みじん切りにします。

鯛は柵取りして、刺身包丁で尾の方から薄く削ぎ切りにしていきます。
平皿に潮の香りのするおごのりをまばらに敷きます。
薄くて透明な鯛の身を通して、おごのりの鮮緑色が透けて見えるようなイメージです。
刺身を外側から隙間なくランダムな向きに並べて軽く岩塩を削ります。
オリーブオイルをまわしかけて指で刺身全体にオイルを馴染ませます。

タプナードを刺身の真ん中に盛ります。
本来はオイルでもっと緩くのばして全体にまわしかけますが、黒っぽいイカ墨料理のようになってしまうので今日は見栄えよく盛っています。
食べるときにオイルで緩く溶いてソース状にして食べます。
粗みじん切りにしたイタリアンパセリを散らし、食べる直前にレモンを搾りかければ出来上がり。

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