2016年4月23日土曜日

Calamaretti Crudi 蛍烏賊のクルード パセリとレモンの香り

シーズンも終盤に差し掛かってきてそろそろ高揚感も薄れてきた感じのホタルイカですが、こんな生鮮ものが手に入ったら話は別です。
ぱつんとした歯ごたえと濃厚なわたの旨みは小さいながらも新鮮なイカの刺身ならでは、サルサヴェルデと削ったレモンの皮の香りで今の季節らしく爽やかに仕立てました。

ホタルイカの漁期はだいたい3月から6月頃まで。
まだ肌寒さの残る春先から出まわり始めるため、春の訪れを告げる食材というイメージが定着していますよね。
日本一のホタルイカの産地として名高い富山でも今は早い時期から漁を行っていますが、以前はホタルイカ漁の解禁は4月でした。
山陰など他の産地のものが早くから出回るため、旬の到来を待ちわびた初物買いの需要を持っていかれてしまうということで、富山でも漁期を早めることにしたのが背景だと思われます。
実際、俳句の世界では蛍烏賊は春とはいっても晩春を表す季語。
春先のものより最盛期かそれ以降のものの方が味も濃く美味しいので、この春はもう十分食べたという方も、もう一度この時期のホタルイカを味わってみてはいかがでしょうか。

ところでホタルイカの漁獲量がいちばん多いのはもちろん富山県、かと思いきや意外にも最近では兵庫県にその座を譲っています。
でも市場で高値がつくのは昔も今も富山産、なかでも滑川漁港で揚がるものは別格です。
これは、天然の生簀とも呼ばれる富山湾の独特な地形がもたらす恩恵とそれを活かした漁法によるもので、ホタルイカが産卵のために富山湾に入ってきたところを定置網で獲っているから。
ダメージの少ない釣りものの魚が上物扱いされるのと同じで、底引き網などで一網打尽にする他の産地のものとは全然違って傷みも少ないし、産卵に備えて身が肥えて味も乗って、漁場も沿岸から目と鼻の先なので鮮度抜群の状態で水揚げされる一級品。
さらには富山湾の至宝ともいうべき貴重な水産資源を絶やさないよう、産卵を終えて沖に帰っていくところに網を仕掛けるという徹底ぶり。
寿命が一年のホタルイカは産卵後はまもなく死んでしまうため、これをいくら獲ったところでせいぜいヒラメやカレイの餌を少々横取りしてるだけ笑、自然に優しい理想的な営みといえます。

鮮度落ちの早いホタルイカは普通は釜茹でにされて店頭に並びます。
もちろんそれも旨いですが、生のものは身がふたまわりぐらい大きくてぷりっとした食感と濃厚なワタの旨みがとびきり美味。
普段なかなかお目にかかれないと思うとなおさらです。
でもホタルイカを生のまま食べる際はワタに線虫が潜んでいる可能性があるとかで、最近はやたらと注意喚起されています。
ひと昔前までは誰も何も気にせず普通に刺身で食べていたもんですが、ここは不本意でも一昼夜凍結させてしっかり寄生虫対策を施します。
凍結させると細胞組織が壊れてアミノ酸の量が増えたり、適度に熟成も進んで旨みが増すというメリットはありますけどね。

さて、イタリアではちょうどホタルイカと同じぐらい小さなヤリイカの赤ちゃん=カラマレッティをパスタやフリットなどの料理にします。
刺身もいいけどパスタやフリットでも食べたいですねぇ。

Ingredienti (per 2 persone)

生ホタルイカ150g
レモン(皮)適量
黒胡椒適量
per la Salsa Verde
プレッツェーモロ30枝
にんにく1/2片
アンチョビ1尾
塩漬けケイパー大さじ1
ワインヴィネガー小さじ1
オリーブオイル大さじ3
塩胡椒少々

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

まずはサルサヴェルデを用意します。
プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)の葉とにんにくを刻んでハンドブレンダーで他の材料とともに撹拌し、ゆるいペースト状にします。
密閉すれば冷蔵庫で数週間は日保ちします。

生のホタルイカは線虫対策のため一昼夜凍結させて流水で解凍します。
今日はそのまま使いましたが、目玉と嘴と背骨を取り除いて口に入れたときの異物感をなくすと上品に仕上がります。

解凍したホタルイカは一杯づつていねいに水気をふきとって皿に並べ、香りのよいオリーブオイルをさっとまわしかけます。
サルサヴェルデをスプーンで散らすようにかけ、ワックスや防かび剤を塗布していないレモンの皮をグレイターで削りかけます。
仕上げに黒胡椒を軽く挽きかければ出来上がり。

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