2020年8月29日土曜日

Seppioline Impanate al Forno 新いかの香草パン粉焼き

旬の走りの希少な新いか(甲イカの赤ちゃん)に香草パン粉をまぶし、オーブンで香ばしく焼いた新イカのインパナータ。
ぷっくりまん丸で短足で頭でっかちな容姿が愛くるしい新イカですが、ぱつんと歯切れのいい食感は小さくてもやはり甲イカならではです。

今日の素材は旬の走りの新イカです。
寿司通の方ならよくご存知と思いますが、お盆の時期から秋口頃までのごく短い期間に出まわる小さなイカのことです。
コハダの幼魚=新子が夏のお楽しみなら、この新イカの季節は初秋。
どちらも時期がとても短く、次来たときに食べようなんて思っていると次はもう出会えないかもしれない季節限定の味です。

一瞬の季節を愛でる希少な素材だけにどちらも仕入れ値は高価。
出まわり始めの頃はとくに値が張るので、寿司屋でお客に出すにしてもとんとんか赤字覚悟なんだそうですが、それでも出してくれるところが親方の懐の深さというか江戸っ子らしい粋というもの。
新子はシャリを包むようにして何枚もつけたりすることもありますが、原価を度外視した親方の心意気なのでありがたく頂いてください。

新子がコハダの幼魚なら新イカは何かって話ですが、キャプションにも書いたとおり甲イカ(別名スミイカ)の赤ちゃんのこと。
その甲イカはイカのなかでもとくに食べて美味しいとされるヤリイカやアオリイカと並んで、上品な甘みと歯応えの良さで市場での評価も高い高級なイカのひとつ。
刺身で美味なのはもちろんですが、火を通しても軟らかく、それでいて噛んだときにぱつんとした歯切れのよさがあるのが特徴です。

甲イカの本来の旬は冬から5月頃まで。
産卵期になると沿岸の浅場に寄り付くため、春に流通量が増えます。
寿命は産卵期の春を起点とした一年で、春に孵化した稚イカは夏の間に小さなエビや小魚を食べて成長し、秋口には5cmほどに達します。
それがちょうど今頃、網にかかるわけですね。
なので今が新イカの旬の時期という言い方もされますが、旬はあくまで大人の甲イカが美味しい冬から春にかけて。
そして子どもの新イカの場合は旬の走りという表現を用います。
旬ではなく旬の走りなので本来の旬の味には及ばない未熟な味ですが、約一年ぶりのお待ちかねの味に舌鼓を打ち、やがて訪れる本番の季節に想いを馳せたりするのが旬の走りの楽しみ方。
初もの好きの江戸っ子たちは、嫁を質に入れてでも初鰹を食べたがったと俳句に読まれていますが、旬の走りの新子や新いかも初ものなので、さぞかしこぞって味わったことでしょう。

さて、甲イカはヤリイカとともにイタリア料理でもおなじみのイカ。
真っ黒なスミを使ったイカスミ料理はこの甲イカで作るんです。
イタリア語でヤリイカはカラマーロで甲イカがセッピア。
あのセピア色の語源です。
イカ墨の色は黒ではなくてセピア色なんですね。
ちなみに赤ちゃんの新イカの場合は小さいという意味の接尾語がついてセッピオリーネとなります。

タコやイカなどの頭足類はにんにくやオリーブオイルとの相性がやたら良いので、シンプルなイタリアンに仕立てると抜群に旨いですよね。
今日はにんにくの風味をきかせた香草パン粉をまぶしオリーブオイルをたらしてオーブンで焼いた香草パン粉焼き(インパナータ)。
焼いてる間から香ばしい匂いがあたりに漂うので、例によってワインを飲みたくて待ちきれなくなりますが、しっかり火を通す必要がないのでそんなにお待たせしません。
新イカのちょっと未熟な甘みとぱつんとした歯ごたえにパン粉の食感、ワインのつまみにこれ以上ないという一品です。

Ingredienti (per 2 persone)

新イカ200g
オリーブオイル適量
白ワイン適量
適量
黒胡椒適量
レモン1/4個
per la Mollica
パン粉30g
にんにく1/2片
アンチョビ1/2尾
プレッツェーモロ5枝
オリーブオイル大さじ1

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

新イカの捌き方は大人の甲イカと同じです。
胴体の色が黒褐色をしている側のすぐ下に甲羅があるので、縦に包丁で切れ目を入れて開き、甲羅を取り出します。
甲羅の下に内臓があるので、奥の方にあるスミ袋を破かないように注意しながら引っぱり出します。
脚は内臓と一緒にとれてしまいやすいので、なるべく胴体にくっつけたままにして、胴体の薄皮を剥き、目とクチバシを取り除きます。
捌いたイカは白ワインですすぐように洗って水気を拭きとり、塩胡椒で軽く下味をつけておきます。

香草パン粉(モリーカ)を作ります。
にんにくは皮を剥いて包丁の腹で潰し、パン粉は粉状にふるいにかけ、プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)は粗みじん切りにします。
フライパンにオリーブオイルをしいて弱火にかけ、にんにくを置き入れアンチョビを加えて木べらで潰します。
香りが出たらにんにくは取り出しパン粉とパセリのみじん切りを加え、焦げないように木べらで混ぜながら炒めます。
きつね色になる前に火を止め、余熱で焦げてしまわないようすぐに別の容器に移しておきます。

オーブンを200℃に予熱します。
新イカに香草パン粉をまぶして耐熱皿に置き、少量のオリーブオイルをたらしかけ、オーブンに入れて5分ほどローストします。
ふつふつしてパン粉にかりっと焼き色がつけば出来上がり。
櫛切りのレモンを添えて食べる前に搾りかけます。

関連記事 - 季節の魚介の前菜料理

Pesce Spada al Salmoriglio
夏カジキのグリル サルモリッリオ仕立て
Sarde Marinate con Finocchio
入梅鰯のマリネ フェンネルの香り
Seppioline Grigliate
新いかのグリル
Ventosa di Piovra Cruda
水蛸の吸盤のクルード


0 件のコメント:

コメントを投稿