2018年10月6日土曜日
Calamaretti Impanati al Forno 小ヤリイカのインパナータ
軟らかくてぱつんと歯切れのいいところは小さくてもやはりヤリイカ、レモンを搾って冷えたワインといただくこの時期だけの一品です。
ヤリイカの走りの季節がやってきましたね。
本来の旬は冬から春にかけての短い期間で、見た目も美しくほんのりと上品な甘みがあって刺身などでこのうえなく美味。
さらには刺身だけでなく火を通しても硬くなったりもっさりすることがなく軟らかいままだし、それでいて噛むとぷりっとして歯切れが良く、加熱調理しても美味しいちょっと高級で格上のイカです。
そんなヤリイカのライフサイクルは春を起点とした一年。
春に孵化した赤ちゃんイカは、ひと夏を越して人差し指ほどの大きさの幼イカにまで成長し、晩夏から初秋にかけて網にかかったものが走りの秋の味覚の小ヤリイカとして流通します。
冬まで待ちきれないヤリイカ好きな方には嬉しい秋の便りですね。
小ヤリはこの後もオキアミや小魚、甲殻類などの餌を食べてぐんぐんと大きくなり、冬には40cmほどの成体に成長します。
冬場は比較的深場に生息するため漁獲量はさほど多くなく、主に料亭や割烹からの需要をまかなう高級イカとして少量が流通し、一般消費者が店頭で目にすることはなかなかありません。
これが春先になると産卵のために浅場に寄り付くようになり、漁獲量がぐっと増えて値段も手頃になってきます。
店頭でもよく目にするようになり一般消費者も買いやすくなりますが、シーズン最後の市場の賑わいもそう長くは続かず、産卵時期を過ぎるとぱったり姿を消し、秋の小ヤリのシーズンまで入荷がなくなります。
ヤリイカはイタリア料理でもおなじみの食材。
油で揚げたフリットや中に詰め物をしたリピエーニ、魚介がたっぷりの漁師風パスタやリゾットのペスカトーレなんかに使われます。
日本ではイカ類はとくに区別なくすべてイカと総称しますが、西洋ではヤリイカのような姿の筒イカとずんぐりした体型の甲イカでは呼び名が異なり、英語の場合は前者がスクイッド、後者がキャトルフィッシュ、イタリア語では前者がカラマーリで後者がセッピアと呼ばれます。
カラマーリはイカ類の総称であるとともに、本来はヤリイカそのものを指す固有名詞でもあることから、イタリアでは流通量が多くて大衆的なイカの代名詞のような存在がヤリイカということになります。
日本で流通量の多いイカはなんといってもスルメイカ(真イカ)。
季節が限られるヤリイカに比べていつでもどこでも安く手に入るので、お店で食べて美味しかったペスカトーレを家庭でも作ってみようなんてときに、イカならどれも同じでしょ的な感覚でスルメイカで代用したりすることも多々あるかと思います。
魚介をふんだんに使った地中海料理はやはり夏が似合うので、日本では季節的にヤリイカが手に入らないからというのもあると思います。
でも、スルメイカは火を通すと硬くなり、食感が(ヤリイカに比べて)悪くなるため、そんな風にペスカトーレを作ってもお店で食べるのとは何か違うし、美味しくできないねってなるんですよね。
一度食べ比べてみるとよくわかると思いますが、その差は歴然。
イカならどれも同じ、ではないので、イタリア料理には必ずヤリイカを使うことをお勧めします。
さて、小ヤリイカはこの時期しか出会えない秋を告げる味。
ひと口でぱくっといけるほど小振りで、刺身にするには労多くて益なしといった感じですがそこは小さくてもやはりヤリイカ、加熱調理しても食感を損なわないので、揚げものなどで美味しくいただきます。
イタリア料理ならフリットや、今日のようなインパナータ=パン粉焼きがお勧めです。
イタリアでは魚介料理にチーズはある意味禁じ手なんですが、小さくて魚介の臭みがない小ヤリなら積極的に使っても大丈夫。
下味をつけた小ヤリをオリーブオイルにくぐらせ、チーズを混ぜ込んだパン粉をしっかりとまぶし、トレイに並べたらさらにオリーブオイルをまわしかけてオーブンでしっとりジューシーに焼き上げます。
パン粉が吸ったオリーブオイルが香ばしく焼けて、魚介のピッツァでも焼いてるかのようないい匂いが家中に漂いますよ。
Ingredienti (per 4 persone)
小ヤリイカ | 200g | ||
小麦粉 | 適量 | ||
パン粉(細挽き) | 適量 | ||
オリーブオイル | 適量 | ||
パルミジャーノ | 適量 | ||
岩塩 | 適量 | ||
黒胡椒 | 適量 | ||
レモン | 1/2個 | ||
プレッツェーモロ | 5枝 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
小ヤリイカは開きにして中を掃除し、薄皮を剥きます。できるだけ脚が胴体からとれないように作業しますがとれてしまっても問題はありません。
両面に軽く(小さいのでほんとにごく軽く)塩胡椒をして下味をつけ、小麦粉をはたきます。
イタリア風の細挽きのパン粉をバットに広げます。
普通のパン粉しかない場合は目の細かいザルに一旦開けて手で揉み砕きながら漉して細かくします。
パウダー状に削ったパルミジャーノをパン粉に混ぜます。
オーブンを190℃に余熱します。
ボウルにオリーブオイルを注いでヤリイカをくぐらせ、パン粉をつけてクッキングシートを敷いたオーブントレイに並べます。
ひととおり並べ終わったら各々のヤリイカの上に再度オリーブオイルをたらしかけます。
オーブントレイを上段に差し込み、パン粉の表面がかりっときつね色になるまで10分ほど焼きます。
焼き上がった小ヤリイカは重ならないよう平皿に並べます。
プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)の粗みじん切りを散らしかけてレモンを搾れば出来上がり。
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