2018年10月14日日曜日
Pasta ai Bianchetti con Foglie di Crisantemo 秋しらすと春菊のパスタ
菊の香りを好まない西洋人が聞いたらぎょっとしそうな春菊なんですがイタリア野菜を思わせる収れん味や苦味がオリーブオイルと相性抜群、この秋もう何度も作ってるいちばん人気の一皿です。
春菊って子どもの頃は苦手じゃなかったですか。
食べ方はすき焼きが定番だと思いますが、あの甘く辛いすき焼きの味を葱も白菜もきのこも何ら邪魔することなく渾然一体となって馴染んでるというのに、春菊だけが馴染んでない。
協調性がない自己主張タイプというか、クセが強いし苦いしでほんとに不味かった記憶しかないんですよね。
ピーマンが嫌いな子も多いわけですが共通してるのがその独特の香気と苦味で、ピーマンはまだ調理のしかたによっては食べやすくできますが春菊は加熱するほどに苦くなるそうなので何をしてもだめなんです。
動物には危険から身を守るため本能というものが備わっています。
クセのある匂いや苦味は毒物かもしれないというサインなので、動物はまず食べようとはしません。
ぴりぴり辛い刺激物も同様ですし、酸味のあるものも腐敗してる可能性があるのでやはり本能的に避けようとします。
人間の社会においてはあらゆる情報体系が確立していますので、食べて安全かどうかわからないものを口にする機会なんてないし、何がどんな味でどう調理すると美味しいかをわかって食べてるわけです。
辛いものや苦いものも大人なら美味しく味わうことができます。
でも、子どものうちは理性より本能が勝ることが多いので、春菊は苦いから嫌いってなるんですね。
実際、子ども用のカレーは甘口だしお寿司もサビ抜きと決まってるし、餃子のタレは酢もラー油も入れずに醤油だけだし、冷奴や素麺に添える生姜も大葉も茗荷も変な味だからいらないってなるわけです。
それにしても春菊っていう野菜はいかにも日本的。
というか菊そのものがそういうイメージを持っていて、春の桜に対して秋を象徴する花が菊なんですよね。
もともと平安時代に中国から伝来したと言われる栽培品種の菊ですが、江戸時代には美しく仕立てて鑑賞したり品評会が催されたりする風習が盛んになり、咲き始めてから花弁が変化していく江戸菊や筆先のような花弁をもつ京都の嵯峨菊、花弁の垂れ下がった伊勢菊といったいわゆる古典菊と呼ばれる系統が確立していったんですね。
日本の優れた栽培技術により美しく進化を遂げた菊は、幕末には中国に逆輸入されていますし、イギリスを主としたヨーロッパにも伝えられて高い評価を得たとのことです。
さらに、日本的といえば、ご存知のとおり天皇家の家紋も菊紋。
菊紋は皇室の象徴であるとともに日本国の象徴としてパスポートの表紙にデザインされたり、硬貨に刻印されたりもしています。
菊と同じキク科の春菊は葉の形も観賞用の菊の葉によく似てるし香りも似ているので、日本的な菊のイメージが被ってくるんですね。
そんな和のイメージの春菊ですが意外なことに原産地は地中海沿岸。
なんと、春菊ってイタリア野菜だったんですねぇ。
でも、西洋ではキクの香りは好まれないため食用にされることはなく、食べられているのはもっぱら日本や中国などアジア地域だけ。
それでも地中海原産らしく、クセのある香りや強い苦味があるところはいかにもイタリア野菜っぽいんですよねぇ。
日本では鍋に入れて食べるのが定番ですが、苦い野菜は油と相性がよく油で揚げた春菊天は蕎麦屋でも人気の一品。
もちろんオリーブオイルとの相性も間違いなく抜群です。
今日はその春菊をしらすと一緒にしっとりとオイルソースに仕立てて、いわゆるペペロンチーノでいただきます。
しらすは春のものという印象が強いですが、漁期(旬)は春と秋。
初漁の春の小ぶりのしらすと違って、秋の方が大ぶりで脂も乗っていて味の濃いぷりぷりした味わいです。
春菊は名前に春とつきますがこれは開花時期のこと。
春菊の旬は晩秋から冬にかけて、つまり今の時期は春菊の走りの季節ということになります。
ふっくらと釜茹でにされた釜揚げしらすも春菊も、オリーブオイルとの取り合わせがとても良い素材。
美味しすぎて何度でも食べたくなる、この秋いちばん人気の一皿です。
Ingredienti (per 2 persone)
リングイーネ | 220g | ||
春菊 | 2/3束 | ||
釜揚げしらす | 300g | ||
にんにく | 2片 | ||
唐辛子 | 1本 | ||
塩 | 小さじ1 | ||
黒胡椒 | 適量 | ||
オリーブオイル | 大さじ4 | ||
パスタの茹で汁 | レードル2杯 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
にんにくはスライスに、春菊は適当にざく切りにします。唐辛子は種を除いて小口切りにします。
深鍋でパスタを茹で始めます。
フライパンにオリーブオイルをしいて弱火にかけ、唐辛子とにんにくを加え、にんにくの香りが出できたらシラスを加えます。
シラスの約半量は木べらで潰してペースト状にしていきます。
春菊を先に茎の部分を加え時間差で葉も加えて軽く混ぜ合わせます。
シラスに塩気があるので味を見て必要なら塩と胡椒をふります。
パスタのグルテンが十分に溶け出た頃合いの茹で汁をフライパンに加えフライパンを小刻みに揺すってソースをとろりと乳化させます。
パスタは表示よりやや早めに上げ、フライパンに移したら手早くあおりソースを吸わせながら煮含めていきます。
もう一度味を見て必要なら塩で味を調整します。
皿に盛って黒胡椒を挽きかけ、生の春菊の葉を飾り、オリーブオイルをさっとまわしかければ出来上がり。
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