2018年10月20日土曜日

Carpaccio di Ricciola d'Autunno 北海道産秋鰤のカルパッチョ仕立て

地球規模の温暖化で近年この時期に北海道で揚がる秋の新風物詩ブリをイタリア風の刺身料理でいただく秋鰤のカルパッチョ仕立て。
白身魚だと思われがちな鰤ですが見ての通り本来は鮪や鰹と同じ赤身、カルパッチョで美味しいのも脂が乗り切っていない秋鰤ならではです。

ブリといえばご存知のとおり冬が旬。
水温がぐっと下がる厳冬期にはマグロの大トロのようにびっしりと脂が乗ったいわゆる寒鰤が市場を賑わせます。
富山の氷見産など高級な寒鰤をいただくなら刺身かブリしゃぶの二択、いや、刺身の一択でしょうか。
小皿にちょんとひたしただけでぱっと醤油をはじくほどに脂が乗って、上品な甘みが口の中いっぱいに拡がります。
切り身で売られているものなら照り焼きかブリ大根も美味。
小骨が邪魔で魚が嫌いだという方やお子様でもぱくっと食べられるし、肉厚で大きい身は食べごたえがありますよね。

冬が旬などと聞くと鱈や鮭のように水温が低い海域に棲む魚なのかなと思ってしまいますが、ブリは18℃ぐらいの温暖な海域を好む回遊魚。
冬から春にかけては暖かい九州南部まで下り、水温が上がり始める頃に繁殖行動をとり徐々に北上し、夏から秋にかけては北海道の道南あたりまで到達します。
とはいえそこまで上ってくるブリの数は多くなく期間も短いことから、北海道でブリを専門に狙った漁というのは行われてこなかったですし、たまたま網にかかったものが僅かに流通する程度。。。でした。
それもほんの数年前までの話です。
異変はある年突然やってきて、秋鮭を狙った定置網漁でサケの代わりに大量のブリが水揚げされたのです。
ブリは旬の時期の寒鰤こそ高値をつけますが、脂が乗ってない季節外れのものは安価に取引されるため、最盛期を迎える秋鮭漁にとってブリは邪魔ものでしかなく、漁業関係者も一様に困惑したそうです。

地球温暖化により大気だけでなく海水温も上昇し、私たちの感じ得ないところで刻一刻と地球規模の大きな変化が進行しています。
沖縄では、碧く美しい珊瑚礁でサンゴが白化したり死滅するなどして、珊瑚礁で生活している魚たちなど生態系への影響が出始めています。
魚たちの生息圏がだんだん北上し、従来は北限よりも北だった北海道でブリだけでなくメカジキやトラフグなど本来北海道で獲れることのない暖流の魚が獲れ始めています。
温暖化に対する警鐘をいくら鳴らしたところで、国家間の利害や思惑が働き世界規模での取り組みがなかなか進んでいません。
地球の将来が憂慮されますね。

さて、当初は異変でしかなかった北海道の秋鰤もわずか数年後の今では北海道の秋の新風物詩となりつつあります。
季節外れだとして見向きもされなかったものが、脂が乗り過ぎず適度な脂の乗りがありブリ本来の赤身の旨みが感じられ、寒鰤とはまた違った美味しさがあるとして再評価されはじめたのです。
余市の天上鰤といったブランド化の動きも進み、秋にあえて北海道産のブリを買い求める人も増えてるそうですよ。

脂の乗った魚は刺身では旨いんですが、イタリア料理のカルパッチョに仕立てるとなるとちょっと難しくて、全体にしっとりオリーブオイルをまわして作るのではマグロのトロや寒鰤はいかにも不向きな印象。
カルパッチョに向くのは鯛やスズキのようなさっぱりとした白身魚や、マグロや鰹でも脂がさほど乗っていない赤身のもの。
ブリの場合は、血合い以外の部分が白いというイメージから白身魚だと思い込んでる人も多いと思いますが、本来はマグロや鰹と同じ赤身。
市場に流通するブリの八割近くが養殖もので、年間を通じて旬の状態といえるほど人工的に太らせて脂の乗ったものが出荷されてるため、脂で身が白く見えるんです。
天然ものでも冬の寒ブリはやはり身が脂で白く見えますが、旬を外すとブリが赤身の魚だということがよくわかります。
この、ブリ本来の赤身の旨みとほどよい脂の乗りが味わえる秋のブリ、今後ますます秋の味覚として定着していくこと間違いないですよ。




Ingredienti (per 2 persone)

秋ブリ(北海道産)120g
にんにく1片
ブロッコリスプラウト適量
オリーブオイル大さじ2
レモン1/2個
適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

マグロやカツオなどと同じでブリも身が軟らかいため、刺身にする場合厚みのある平造りにするのが一般的ですが、カルパッチョの場合は薄く切ります。
ただし、あまり薄くても歯ごたえがなくなるため斜めに削ぐようにして平造りよりもやや薄いかなぐらいに引きます。

にんにくは1/2は芽をとってスライスします。
残りは皿に断面を擦りつけて香りを移します。

皿にブリの身を並べていきますが、同じ向きに整然と並べるのではなく皿の外側からパズルをはめるように隙間なく並べていきます。
スライスしたにんにくを散らし岩塩を挽きかけます
塩の量が少ないと味がぼけるので、ちょっと多いかなぐらいでちょうどいいと思います。

オリーブオイルをまわしかけて、全体にまんべんなくいきわたるように指の腹で軽く押してなじませます。
真ん中あたりにブロッコリスプラウトをこんもりと盛り、スライスしたレモンを乗せます。
仕上げに黒胡椒を挽きかければ出来上がり。
食べる直前にレモンを搾っていただきます。

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