2018年10月28日日曜日
Linguine al Pesto con Prociuto Crudo ジェノベーゼソースのリングイーネ 生ハム添え
融点の低いパルマ産プロシュートの脂がいい感じにとろけてバジリコのスパイシーな香りと柔らかく融け合う秋の一皿です。
秋が深まってくるとバジリコの季節もそろそろ終わりです。
多くのハーブは多年草で地上の枝や葉が枯れたようになっても翌春にはまた芽吹いてくれますが、寒さに弱いバジリコは冬を越せない一年草。
そういうわけで秋はバジリコの収穫シーズンです。
いくらか涼しくなってきたなぐらいの頃ならまだ勢いがありますので、元気なうちに思い切って収穫してしまいます。
用途はもちろんバジリコのペスト、つまりペストジェノベーゼです。
大量の葉からでも少量しかできませんので、こんなにですかってぐらいまとめてばっさり全部収穫しちゃっても大丈夫。
自家製のペストはチーズを入れない状態で瓶詰めして表面を覆うようにオリーブオイルを満たしておけばしばらくは保存もききます。
パスタはもちろん肉料理やカルパッチョのソースに添えてもいいので、冷蔵庫にあると何気に便利ですよね。
ところで、朝晩はかなり冷え込むようになりそろそろコートやブーツを出したり炬燵や鍋を出したりといった冬支度の時期。
そんな10月のこの時期って意外と献立に悩みますよね。
秋真っ盛りではあるけど、秋刀魚に秋鮭、梨にぶどうに栗などいわゆる秋の味覚はひととおり食べてちょうど一巡した頃。
さて次は何を食べようかって感じではないでしょうか。
買物に行けば店頭にはまだまだ秋本番の食材がずらりと並んでますが、一方で、野菜売場はだんだんと白菜や水菜、春菊、大根などの冬野菜、西洋梨に林檎にみかんといった冬の果物が占めるようになり、鮮魚売場もイクラやたらこや牡蠣、ブリやタラなどのほか、殺風景な干物などが中心になってきて徐々に冬の気配を感じるようになってきます。
秋の味覚もそろそろ飽きたし、そうだ今夜は鍋にしよう、少し早いけどタラちりや牡蠣の土手鍋はどうかなぁなんて声も聞こえてきそうです。
このように、季節の変わり目といえば、一般的には走りの食材を使った献立で季節を先取りしたくなるものです。
とくに、長かった冬がまもなく終わろうとし春を待ちわびる立春の頃はそういう気持ちが強くなるものですし、夏が待ちきれない人にとっては初夏の時期もそうかもしれません。
でも歓迎されざる冬だけは話が別なんですね。
長く凍てつく冬は耐え忍ぶ季節、もうすぐ冬という無常観が際立つ頃にわざわざ先取りしてまで冬の味覚を早く味わおうとする必要なんてないということなんです。
和食の世界では、この時期の献立には冬になってから旬を迎えるものは例え市場に出まわっていたとしてもあえて使わないのがお約束。
夏から引き続きあるものと秋のもので構成するのを良しとしています。
きのこなど今が旬のものはもちろん積極的に使って、夏からあるものは名残りを惜しみしばし別れを告げるという意味を込めます。
魚介でいえば夏の名残りは鰯や鯖や鰹などの青背の魚や穴子、鱧などで鯛や平目といった白身魚はもう少し待ちます。
冬野菜も11月に入る頃に軟らかく味も良くなるのでそれを待ちます。
秋の真ん中=秋分の日もとうに過ぎ、今頃は二十四節気でいうところの寒露から霜降、立冬に至るいわゆる晩秋とされる時期。
冬の素材の使い始めは立冬(11月7日頃)の頃が目安となります。
さて、季節感を大切にするのは和食もイタリア料理も同じ。
その点で両者は考え方がとても似ています。
それならば夏の名残りのジェノベーゼソースは今の季節にぴったり。
逆に言えば使うのも今月いっぱいまでが目安になります。
しっとりと生ハムを添えてパルミジャーノをたっぷりあしらえば、夏のジェノベーゼとはまた違った秋らしい一面を見せてくれます。
パルマ産プロシュートの強い塩気とねっとりとした食感がちょうどいいアクセントとなり、融点が低いため脂身がしっとりとろけてバジリコのスパイシーな香りと柔らかく融け合います。
Ingredienti (per 2 persone)
リングイーネ | 220g | ||
パルマ産生ハム | 70g | ||
塩 | 適量 | ||
黒胡椒 | 適量 | ||
パルミジャーノ | 適量 | ||
パスタの茹で汁 | レードル1杯 | ||
per il Pesto | |||
バジリコ | 10枝 | ||
にんにく | 1片 | ||
松の実 | 大さじ1 | ||
塩 | 小さじ1 | ||
オリーブオイル | 適量 | ||
パルミジャーノ | 適量 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
まずバジリコのペストを作ります。ざっくり刻んだにんにくと松の実をすり鉢で砕くように潰し、ちぎったバジリコの葉、オリーブオイル、塩を加えてすり潰します。
バジリコは金気を嫌うので包丁で刻んだりフードプロセッサの金属の刃に触れると黒っぽく変色して食欲のわかない色になってしまいます。
イタリアではモルタイオと呼ばれる大理石でできたすり鉢を使います。
ちょっと面倒でも、すり鉢で根気よく作ってください。
たくさん作って瓶詰保存等する場合はこのまま、食べきってしまうならパルミジャーノも加えます。
深鍋に湯を沸かして塩を加え、パスタを入れて茹でます。
途中、茹で汁をレードルですくってボウルかフライパンに加え、粗熱をとってからペストを加えて混ぜてソースをのばします。
表示よりやや短めにパスタを鍋から上げて湯切りしペストに絡めます。
皿に盛って生ハムを乗せます。
黒胡椒を挽いてパルミジャーノを削りかければ出来上がり。
いつも愛読しています。季節の旬の食材を使ったイタリア料理とその背景と解説、まるでリアルタイムで進んでいく片岡護さんのエセーを読んでいるようです。先週片岡さんのレシピでジャガイモのジェノベーゼを作ったんですが、まだペーストが余っていました。プロシュートの合わせるなんて!今夜試してみます。
返信削除拙ブログを読んでくださりありがとうございます。和食の世界では10月は冬のものを使わないなんて目から鱗ですが、片岡シェフのエッセーというのもこんな感じなのですね?ぜひ読んでみたいものです。
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