2019年4月20日土曜日
Polpetielli Marinati 飯蛸のマリネ
平成最後の春も終盤に差しかかり令和になる頃には暦の上ではもう夏、春の名残りと夏っぽさが同居した季節の変わり目らしい一皿です。
今日4月20日は二十四節気の穀雨です。
春の雨が百穀を潤すという意味なんですが、この頃になると時季外れの寒の戻りで霜が降りたりする心配がなくなるので、雨でしっとり潤った田畑は種蒔きの適期を迎えるというわけです。
押入れにしまった冬服やストーブをまた引っ張り出すこともなくなり、変わりやすい天気もこの頃から安定した晴天が続くようになります。
空気の色も春先の霞がかかったパステルピンクやパステルイエローから澄んだグリーンやブルーに変わってきます。
穀雨の次の節気は立夏なので、暦の上では今日から春の最後の半月間に入ったことになります。
献立を考えるうえでも、晩春のこの時期には春らしい魚介や野菜などが旬の盛りを過ぎようとし、一方で夏の走りのものが顔を見せ始めるなど店頭が賑やかに彩られますので、春のものは名残りを惜しんでメインに据え、そこに走りの素材も散りばめ、できるだけ輪郭がくっきり立ったシャープな味つけで彩りよく仕立てます。
春が旬と言われるイイダコはそんな春の名残りの素材のひとつ。
本来タコは夏らしい味付けが似合うので、春から初夏への季節の移ろいを演出するのにもってこいなんですよね。
イイダコは小さいけどタコの赤ちゃんということではなく、成長してもこれぐらいの大きさにしかならない小型のタコです。
北は北海道南部から南は九州まで沿岸部を中心にどこにでもいるタコで波の穏やかな内湾や防波堤の中などで一年中ごく普通に見られます。
関東から東北では主に秋から冬にかけて水揚げされるため、イイダコの旬が春という雰囲気はなく、イイダコ=春は関西圏の価値観。
春に米粒ほどの大きさの卵をぎっしり抱く雌のイイダコが美味だとして珍重され、瀬戸内の春の風物詩などと素敵な呼称をもらっています。
イイダコの卵は見た目だけでなく食感も硬めに炊いたご飯粒に似ていて卵のことを飯(イイ)と呼びます。
これがイイダコの語源で、飯蛸という漢字をあてます。
そんな子持ちのイイダコ料理の定番は姿のまま煮た桜煮。
頭(実際は胴体)をめくって飯が見えるように煮ます。
そうするとまるで花が咲いたように飯がぱっと拡がって、見映えがする一品になります。
イイダコは東アジア近海の固有種でイタリアにはいませんが、代わりにこれとよく似た小型のモスカルディーニ(ジャコウダコ)というタコが地中海やアドリア海に生息していて食材としてもわりと一般的です。
イイダコをイタリア料理に仕立てる場合、卵よりもタコの身そのものを味わうわけなので子持ちである必要はありません。
それに飯持ちの雌はそうでない雄に比べてかなり値も張りますしね。
タコは大蒜やオリーブオイルやトマト、オレガノなどハーブとの相性がやたらいいので、スペイン風ではありますがアヒージョのように大蒜とオイルで煮たり、刻んで煮込んだラグーでパスタにしたり、フリットやカルパッチョ、軟らかくなるまでトマトで煮込んだアッフォガートなども定番中の定番です。
あと、茹でたじゃがいもと合わせた温サラダもよく見ますよね。
タコとじゃがいもってちょっと意外な組み合わせという感じもしますがタコの旨みをじゃがいもが吸って美味しいんですよ。
イイダコの場合はもともと小さいうえに加熱し過ぎると縮んでしまい、それこそウインナーのタコさんみたいに小さくなっちゃうので、煮込み料理にはあまり向いてないかもしれません。
火は軽く通すだけにして、見た目の可愛いらしさをいかした前菜などに仕立てるのが良さそうです。
今日はイイダコをさっと茹でてぷりぷりとした食感を残し、熱いうちに酸味のきいたドレッシングに漬けて味を染み込ませたマリネ。
春の名残りのイイダコをレモンとトマトの酸味でさっぱりと仕立てた、初夏らしい雰囲気の一品になりました。
冷えた白ワインか、春らしくロゼと一緒にどうぞ。
Ingredienti (per 2 persone)
イイダコ | 300g | ||
ミニトマト | 50g | ||
にんにく | 1/2片 | ||
新玉ねぎ(小) | 1/4個 | ||
オリーブオイル | 適量 | ||
レモン | 1/2個 | ||
白ワイン | 大さじ1 | ||
塩 | 適量 | ||
黒胡椒 | 適量 | ||
プレッツェーモロ | 5枝 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
まずはイイダコの下処理をします。後頭部(目がついてない方)に下から指を入れて、薄い膜を指で破って中の墨袋を破れないように優しく取り出します。
クチバシが足の付け根にあるので、胴体を指で強く握って押し出すようにして、取り除きます。
全体を塩揉みしてぬめりを取り、流水でよく洗います。
ミニトマトはへたを取って四等分に切り分け、レモンは搾って果汁に、にんにくと新玉ねぎはみじん切りにします。
これらを全部ボウルに入れてオリーブオイルを加えて攪拌し、塩胡椒で味付けしてドレッシングにしておきます。
小鍋に少量の湯を沸かして白ワインを加えます。
イイダコの頭(胴体)をつまんで脚先から湯に何度かひたしてそのまま湯に落とします。
30秒ほど茹でたら引き上げ、熱いうちにドレッシングに漬けます。
茹で汁大さじ1をすくってドレッシングに加えます。
そのまま粗熱をとって冷蔵庫で味を馴染ませます。
漬け汁ごと皿に盛って黒胡椒を挽きかけます。
粗みじん切りのプレッツェーモロ(イタリアンパセリ)を散らしかけて出来上がり。
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