2019年8月4日日曜日

Carpaccio di Pesce a Testa Piatta 真鯒の洗い カルパッチョ仕立て

立派なサイズの釣りもののマゴチを削ぎ切りにしてすぐに氷水で締め、淡白な味とぷりっと弾ける食感を楽しむ真鯒のカルパッチョ仕立て。
流通量が少ない高級魚をこうしていただけるのも釣りもの(頂きもの)ならでは、透き通った上品な白身が美しい盛夏の一皿です。

コチ、もしくはマゴチという魚をご存知でしょうか。
観賞魚のプレコの仲間に姿が似ていて頭でっかちで、頭部と比較すると胴体は小さく細長いので頭から尻尾が生えてるような風貌。
全体にやや扁平ですが、とくに頭が上から押し潰されたみたいな感じで見た目はかなりぶさいくなんです。
カモノハシの愛称で親しまれた700系の新幹線を彷彿とさせます。
底棲魚なので腹側は真っ平らで白く、背中側は茶褐色で表皮はざらっとしていて、色や質感はカレイやヒラメに似ています。
大きさは50cmから60cmほど。
砂地を好んで生息し、擬態して海底と同化したり砂を被ってすっぽりと身を隠し、知らずに近くにやってきた海老や小魚などを狙って捕食する獰猛なフィッシュイーター。
そういうところもカレイやヒラメに似ています。
旬は夏で、産卵のため浅場に寄ってきて活発に餌をとるので、ほどよく脂が乗って味もぐっと良くなります。
そしてなにより夏場は美味しい白身魚が少なくなる季節。
暑いので脂っこくなくさっぱりした白身魚が食べたくなる季節なので、夏の和懐石のお造りといえばマゴチかスズキのほぼ二択です。
まさに夏の風物詩ですね。

そんな高級料亭御用達のマゴチですが、流通量もさほど多くないうえ、入荷してもホテルやレストランがいい値段で持っていってしまうため、スーパーではなかなか見かけない一般消費者にはなじみが薄い魚。
でも釣りをする人にはわりとおなじみで、獲物に飛びつく獰猛な性質を利用してサーフからルアーで狙ったり、ボートから活きた餌を泳がせて釣ったりします。
ときには同じ砂底を好むシロギスを狙った釣りで、針にかかったキスにマゴチが食いついてきたなんて経験のある方もいるかもしれません。
今日のマゴチも嬉しいことにそんな釣り好きの知人からの頂きもの。
神奈川の三浦あたりでボートから釣ったものだそうです。

ところで、コチの仲間は日本の近海だけでなく広く太平洋やインド洋、地中海にも生息していて、その外見から英語圏では扁平頭という意味のFlatHeadという名前で呼ばれています。
刺身だけでなく調理しても美味しい白身魚なので、諸外国ではグリルやムニエル、フライなどで食べられ、味の評価もいいようです。
一方、イタリアではコチは漁業資源としてはさほど重要ではないようでコチの料理というのもあまり聞きません。
レシピが見つけられないのでイタリア語の呼び名もわからないですが、Flat Headと同じ意味のPesce a Testa Piatta とでも呼んでおきます。

さて、グリルやフリットは、釣れすぎて食べきれないほどあるときならそれもいいですが、日本人なのでまずは刺身でいただきたいところ。
釣りものなので新鮮だし、稀少な素材とくればなおさらです。
透き通った美しい白身を薄く削ぎ切りにして、早速味見してみます。
脂の乗りは控えめで味は淡白、ほのかに甘みがあります。
臭みなどはまったくなくて上品きわまりない味。
そして食感は意外と弾力があってもっちりしています。
気品があって凛とした雰囲気を持ち合わせています。
あの頭でっかちでぶさいくな姿や獰猛な習性からは想像がつきません。

マゴチの刺身は、冷蔵庫で三日ぐらい熟成させた方が旨みが増すなどと言われますが、ビールも夏はモルツよりスーパードライの喉ごしの良さが美味しく感じるのと似て、夏の白身魚も食味そのものよりキレのある歯ごたえがあるものが好まれます。
スズキやマゴチといった夏の白身魚は洗いが絶品と言われる所以です。
冬が旬のヒラメを洗いにするとか、あまり聞かないですもんね。
今日のカルパッチョの刺身も削ぎ切りにしてから氷水で締めたもの。
ぷりっとした歯ごたえの白身とオリーブオイルの相性は抜群で、昼から冷えた白ワインが止まらなくなります。

Ingredienti (per 2 persone)

マゴチ1/2尾
にんにく1/2片
適量
黒胡椒適量
オリーブオイル大さじ2
ルッコラセルバティカひと掴み
レモン1/4個
氷水適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

釣りもののマゴチは、まずは危険な背ビレと尻ビレをキッチンばさみで切り落とし、エラの脇の突起も切り落とします。
ぬめりが多いので軍手をはめて作業するとやりやすいです。
次にウロコを引いて流水で洗い、三枚におろします。
夏のマゴチは大きいものは全部メスなので真子を持っています。
卵は使わないのでとっておいてあとで煮付けにすると美味しいです。

三枚におろした身を尾の方からやや薄めの削ぎ切りにしていきます。
尾の近くは包丁を寝かせて斜めに、胴の真ん中では包丁を立てて引き、刺身の大きさが揃うようにします。
氷水を用意し、刺身に引いた身をくぐらせてひらひらと洗うようにして5分ほどひたし、取り出して水気を拭きとります。

にんにくは芽をとって皿に断面を擦りつけて香りを移します。
少量のオリーブオイルをたらして皿の底全体にいきわたらせます。
皿にコチの身を並べていきますが、同じ向きに整然と並べるのではなく皿の外側からパズルをはめるように隙間なく並べていきます。
塩をぱらぱらとふります、味がぼけないようちょっと多いかなぐらいでちょうどいいはずです。

オリーブオイルをまわしかけ、指の腹でぺたぺたと軽く押すようにして全体に馴染ませます。
黒胡椒を挽き、真ん中にルッコラセルバティカと櫛切りにしたレモンを乗せれば出来上がり。

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2 件のコメント:

  1. マゴチ釣りが好きでたまに行きます、こういうレシピ待っていました。
    是非次回釣り上げたら、挑戦してみます。

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    1. コメントありがとうございます。
      マゴチ釣りによくいかれるなんて羨ましい、是非とも作ってみてください。

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