2019年8月10日土曜日

Linguine con il Brodo di Pesce 真鯒のブロードと夏野菜のリングイネ

夏の高級魚マゴチの洗いのカルパッチョ仕立てからの、骨についた身をすき取って素揚げした茄子やズッキーニとともにコチの出汁で炊いた、ちょっと賄い料理みたいなパスタ。
旨みの強いコチのスープとオリーブオイルが合わさりとろりと乳化して野菜やパスタにしみた、魚介の香りいっぱいの日本人好みの一皿です。

一般消費者にはあまりなじみのない夏の高級魚マゴチ。
知名度もそれほどなく流通量も多くないうえ、入荷すればレストランや料亭がいい値で持っていってしまうため、スーパー等で目にする機会もあまりないレアキャラです。
お店ではまず見ないよねって会話をヒラメ釣りによく行くという知人と交わしていたところですが、嬉しいことにマゴチ釣れたからとわざわざ届けてくれたのがつい先日のこと。
50cm近い立派なサイズでした。
ヒラメもマゴチも砂底の海底を好む底棲魚で、だいたい同じポイントに生息していて、生きた小魚などを捕食する獰猛な肉食性というところも似ているため、どちらも同じ釣り方で釣れます。

その嬉しい頂きものを早速捌いて刺身に引き、まずは普通に山葵醤油で一品、次は削ぎ切りにした身を氷水でこりっと締めた洗いでもう一品、そしてイタリア料理は洗いにして締めた身でカルパッチョと、刺身系の料理三品を堪能しました。
先週の記事がそのカルパッチョですね。
刺身のお味の方はというと、クセや臭みはまったくなくて、脂の乗りは白身魚らしく控えめで、適度にしっとりしてどこまでも淡白、ほのかに甘みがあって凛としたなんとも上品な味わい。
それもそのはず、マゴチは白身魚の種類が少なくなる夏がまさに旬。
夏の和懐石はスズキかこのマゴチがないと成立しないと言われるほど、夏の風物詩というか夏の申し子みたいな魚なんですね。

コチは身も美味ですが、頭や骨からも旨みの強い出汁がとれます。
下処理(霜降り)をしっかりやれば臭みもほとんどないので、生姜などなくても味噌だけで美味しいアラ汁ができます。
せっかくの新鮮な釣りもの頂きものです、頭から尻尾の先まで無駄なく使い切らない手はありませんよね。
もちろんこの出汁はイタリア風に言えば極上のブロードディペッシェ、アラ汁だけでなくイタリア料理にも使います。
骨からすき取った身と素揚げした夏野菜をブロードでさっと炊いたのが今日のパスタのソース。
魚介の香りいっぱいなところが日本人好みで実に美味しいです。

このように大物が一尾まるごと手に入ったときは刺身料理を何品かと、アラで出汁をとりパスタも作っちゃうのがお決まりのパターン。
何年か前に釣りもののスズキを頂いたのですが、そのときはオレンジとケイパーのソースのカルパッチョに仕立てて、すき身とアラのスープでズッキーニとハーブのオイルソースのパスタに。
その翌年の夏も頂いてしまったので、今度は昆布締め(マリネ)にしてカラスミをすりおろした一品に、やはりすき身と出汁でサフラン風味のブイヤベースみたいなパスタを作っています。
一尾で二度楽しむというか、一石二鳥というか、本来なら捨ててしまう部位を有効利用するあたりはちょっと賄い料理のようでもありますが、こんな賄いならむしろ贅沢というものです。

さて、イタリアの都市部では家庭の食卓に魚料理が登場するというのはあまりなく、今日のような魚介のパスタは夏のバカンスで食べるような非日常的なご馳走。
海辺のテラス席なんかで冷えた白ワインといただきたい一皿です。
日本も来週はお盆ウィークですね。
どうぞ事故などなく良い夏休みをお過ごしください。
このブログも、お正月以外休むことなく毎週更新を続けてきましたが、お盆週の来週末はお休みしようと思います。
みなさんがお休みのときは訪問者も少ないですしね。

Ingredienti (per 2 persone)

リングイーネ220g
マゴチのすき身適量
にんにく2片
茄子1本
ズッキーニ1/2本
トマト1/2個
バジリコ10枚
白ワイン1/2カップ
マゴチのブロードレードル2杯
オリーブオイル大さじ4
ローリエ1枚
レモン1/4個
適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

コチのアラは塩をふって冷蔵庫にしばらく置き、出てきた水分と一緒に魚臭さも抜けるのでその水は捨てて流水で洗います。
骨や皮目についている身をスプーンで削ぎ取ります。
身をすいたアラは一度熱湯をまわしかけて霜降りにしてから鍋に入れ、水から煮て出汁(ブロード)をとります。

にんにくは包丁の腹で潰し、茄子とズッキーニは銀杏切りに、トマトは乱切りに、レモンは櫛形にカットします。
茄子とズッキーニはサラダ油でかりっと素揚げにしておきます。

フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れ弱火にかけます。
オイルに香りが移ったらマゴチの身を加えて木べらで炒め、白ワインを注いで強火でアルコールを飛ばします。
素揚げしておいた茄子とズッキーニ、ブロード、ローリエを加え中火で10分ほど煮込み、途中でトマトも加え塩胡椒で味を調整します。
汁気はやや多めのしゃばしゃばぐらい、フライパンを揺すってソースをとろりと乳化させていきます。

パスタを茹で始め、アルデンテよりも硬めで上げてフライパンに移し、ソースをパスタに吸わせながら煮含めていきます。
皿に盛りバジリコの葉を手でちぎって散らし、エキストラヴァージンをまわしかけ、黒胡椒を挽いてレモンを搾りかければ出来上がり。

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