2019年12月22日日曜日

Capesante Impanate 帆立貝柱の香草パン粉焼き

香草パン粉をまぶした帆立貝柱をテッラコッタに一粒づつ間隔を開けて配置し、溶かしバターをかけてローストした冬のアンティパスト。
刺身用の貝柱は中まで火を通す必要もないので、バターがふつふつしてパン粉にかりっと焼き色がつけば食べ頃です。

もうだいぶ昔のことですが、北海道にサーフトリップに出かけて道南の苫小牧あたりの海岸でキャンプをしていたときのことです。
季節は初秋ぐらいだったと思います。
東北地方を東に抜ける台風並みの低気圧の影響で前日は海は大荒れで、波面が落ち着く翌日がベストコンディションという期待感から、ここで野営することにしたんですね。
朝一で波をチェックしようと日の出とともに起きてみると、地元の人が波打ち際で何かを一生懸命に拾い集めています。
何かなと思ってよく見たら、帆立貝がたくさん打ち上げられていたのでびっくり。
早速こちらも真似して拾い集めて朝から豪華に浜焼きを堪能したなんてことがありました。

言うまでもなく北海道は広大で手つかずの大自然がいっぱい残る大地。
日本の他の地方ではまず見られないような、非日常的でドラマチックな自然の営みに出会すことも多々あります。
天然の帆立貝の生態をよく知らなかったので、帆立貝ってこんなふうに海岸に打ち上がってくるもので、それを拾って獲るものなんだと知ってびっくりしました。
北海道ってやっぱりスケールが違う。
これにはみんな心底すげーってなりました。

いえいえ、いくら北海道と言えどもそんなはずはありません。笑
あとで聞いた話ですが、実は前日の時化の影響で沖の養殖設備が破損し養殖帆立が流されてきたものだったとか。笑
海岸で帆立貝を拾い集めていたのは養殖業者の人たちだったんです。
だから、何を拾ってるんですかとたずねても無愛想だったし、こちらが真似して拾い始めてもだめとも言えず渋い顔をしてたというわけです。
さすがに北海道といえど、帆立貝が普通に海岸で拾い放題なんてことはあるわけないですもんねぇ。
勘違いも含め、今思えば貴重な体験でした。

さて、帆立貝は癖がなくて淡泊でさっぱりしてるのに貝類特有の旨みがしっかりあり、どんな調理法でも持ち味が活きる素材ですよね。
食べ方も千差万別ですが、日本人なのでまずは刺身から。
貝柱の刺身は淡白だけど旨みがあふれ出てきて、ほんのり甘みもあって刺身としてはかなり上品なお味。
醤油はあまりつけすぎずグリコーゲンの甘みを味わいたいです。
刺身のほかでは炉端焼きもいいですよね。
殻付きのまま七輪に乗せて、殻がぱくっと開いたところにお酒と醤油をたらせば、日本酒が進みすぎること間違いなしです。
あと、ここにバターをちょっと落とすと、純和風な浜焼きとはまた違い風味に奥行きが出て旨いです。
そもそもバターでソテーしただけでも美味しいですしね。
バターだけでなく乳製品全般と相性がいいから、シチューやグラタンに入れても美味しい。
あとは、いい出汁が出るので帆立貝柱と帆立の出汁で炊く炊き込みご飯なんて、日本人でよかったなぁとつくづく思える一品です。

帆立貝はイタリア料理でもよく使われる食材。
グリルにフリットにソテーと、どうやっても美味しく食べられますが、貝柱とオレンジ色の舌=コライユをバターでソテーしたヴェネチア風の郷土料理とか、貝殻を皿に見立てて刻んだ貝柱に香草パン粉をまぶしてオーブンで焼いたグラティナータも定番です。

今日はそのグラティナータを前菜向け、というかワインのつまみ向けに一粒づつ食べられるようアレンジ。
ぷりぷりの貝柱に香草パン粉をまぶして耐熱皿に間隔を開けて配置し、溶かしバターをスプーンで一粒一粒かけてオーブンで焼きます。
焼いてる間から香ばしい匂いがあたりに漂うので、例によってワインを飲みたくて待ちきれなくなりますが、しっかり火を通す必要がないのでそんなにお待たせしません。
帆立貝の旨みとバターの芳醇な香りとパン粉の食感、ワインのつまみにこれ以上ないという一品です。

Ingredienti (per 2 persone)

帆立貝柱200g
白ワイン適量
適量
黒胡椒適量
バター20g
レモン1/4個
per la Mollica
パン粉30g
にんにく1/2片
アンチョビ1/2尾
プレッツェーモロ5枝
オリーブオイル大さじ1

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

まずは香草パン粉(モリーカ)を準備します。
にんにくは皮を剥いて包丁の腹で潰し、パン粉は粉状にふるいにかけ、プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)は粗みじん切りにします。
フライパンにオリーブオイルをしいて弱火にかけ、にんにくを置き入れアンチョビを加えて木べらで潰します。
香りが出たらにんにくは取り出しパン粉とパセリのみじん切りを加え、焦げないように木べらで混ぜながら炒めます。
きつね色になる前に火を止め、余熱で焦げてしまわないようすぐに別の容器に移しておきます。

帆立貝柱は白ワインでさっと洗って塩胡椒で下味をつけ、香草パン粉をまぶして耐熱皿に間隔を開けて配置します。
ソースパンを弱火にかけてバターを加えて溶かし、スプーンですくって貝柱の一粒一粒にかけていきます。

オーブンを200℃に予熱します。
帆立を乗せた耐熱皿を入れて5分ほどローストします。
刺身用の貝柱は中まで火を通す必要もないので、バターがふつふつしてパン粉にかりっと焼き色がつけば出来上がり。
櫛切りのレモンを添えて食べる前に搾りかけます。

関連記事 - 貝柱を使ったイタリア料理

Capesante in Insalata con Pomodoro e Basilico
フルーツトマトと帆立貝のサラダ仕立て
Tagliatelle alla Crema con Canestrelli e Radicchio
小柱とラディッキオのクリームソース タリアテッレ
Capesante Crude con Tapenade
帆立貝のクルード タプナード添え
Capesante Crude al Timo
帆立貝のクルード タイムの香り


0 件のコメント:

コメントを投稿