2019年12月14日土曜日
Linguine Fresche con Baccala alla Livornese 鱈のリヴォルノ風とリングイーネ
魚をソテーしたときのフライパンの香ばしいお焦げも残らず白ワインで剥がし、旨みが溶け込んだソースが生パスタにもっちり絡みつきます。
令和元年の今年もいよいよカウントダウンに入ってきましたね。
忘年会にクリスマスにお正月と家族や友人が集うイベントが続きますし師走というだけあってやたらと忙しいシーズンです。
人が集まれば美味しいお酒に美味しい料理が必要不可欠。
寒いので熱燗に鍋料理などお酒も料理も温まるものがいいのと、やはりこの時期に美味しい旬の食材をいただきたいですよねぇ。
ただ、冬は芽吹きの春や実りの秋と違い食べるものが少なくなる季節。
野菜コーナーは色とりどりとかみずみずしいといった雰囲気とは無縁の暗くて地味な色合いに包まれ、鮮魚売場は干物や乾物の割合が増えて、あまり購買意欲をそそられないのもこの時期らしい光景です。
そんななかにあって、寒さにじっと耐え凍結しないよう自ら糖度を高め甘みが増した冬野菜や、寒さに負けないように皮下脂肪を蓄えることで脂の乗った冬山のジビエ(獣肉)や凍える北の海に暮らす魚介類など、寒くなるにつれ美味しくなるものだってあります。
今日の食材の鱈もそのひとつ。
なにせ魚編に雪と書いて鱈(タラ)ですからね。
名前のとおり雪が舞い散る北の冷たいオホーツク海などの深場に暮らす深海性の魚で、旬も漁期ももちろん真冬。
同じ海域で獲れるタラバガニ(鱈場蟹)の語源にもなっています。
店頭では生の鱈の切身というのはあまり見かけることがなく、軽く塩をした塩鱈が一般的。
というのも鱈は傷みやすく足の速い魚で、実際、刺身で食べたことなどないという人がほとんどの加熱調理専門の魚。
なので、鮮魚ではあるけど生のままではなく薄塩を施し、身に含まれる水分量を減らして傷みにくい状態で流通させるわけです。
味は淡白でさっぱりしてるなどと言われますが、店頭に並んだときには既にほどよく熟成が進み、独特の臭気をまとった状態です。
でもこれが、調理するとまったりして濃厚な旨みに変わります。
深海魚らしく白身なのによく脂が乗っているのも特徴。
身は火を通すとぷりっとなって身離れよく食べやすいし、鍋はもちろん焼いても蒸しても揚げても美味しい魚です。
タラは温暖な地中海には棲んでいないため、イタリアでは鮮魚のタラが水揚げされることはありません。
それなのに、世界でいちばんタラを消費している国は実はイタリアだというから驚きです。
理由はもうご存知のとおりで、北欧のノルウェーなどからタラを干した加工品が輸入され、これがあたかも昔からある伝統的なイタリア食材であるかのように定着し、北から南までイタリア全土で愛され食べられているから。
かちかちに干した鱈がストッカフィッソで、がっつり塩漬けして干したものがバッカラ。
どちらも何日か水につけて戻してから料理に使います。
乾物なので保存食品として、そして内陸や山間部では貴重な海の蛋白源として重宝されてきたことに加え、宗教上の理由により、肉を食べてはいけない日=魚を食べる日があったことも需要に拍車をかけました。
さらに驚くのは、新鮮な魚ならいくらでも獲れるナポリやヴェネチアのような港町でもバッカラの需要は少なくないということ。
海沿いの地域にもバッカラを使った伝統料理がたくさん存在します。
こうなるともはや国民食ですね。
さて、豆や肉料理のイメージが強いトスカーナ州ですが、リグーリア海に広く面してるので漁業も盛んです。
なかでも有名なのが、中世にメディチ家の元で栄えたリヴォルノ港。
トスカーナ州を代表する港なのでトスカーナ地方の伝統的な漁師料理の多くはこの港の名を冠しリヴォルノ風と名づけられてたりします。
肉料理などでフィレンツェ風が多いのと同じですね。笑
今日のバッカラのリヴォルノ風も有名な郷土料理。
塩鱈の切身なのでバッカラではなく本来はメルルッツォと呼称するべきところですが、なにせバッカラのリヴォルノ風があまりにも有名なのでイタリア語の記事タイトルもあえて Baccala です。
本来メイン料理として出される鱈のリヴォルノ風ですが、鱈だけ食べて鍋に残ったトマトソースでパスタというのはありがちですが、今日のは鱈がごろごろ入ったまま贅沢にパスタソースにした一皿。
バカンスの香りいっぱいの夏の南イタリア風とはまた違う、北の地方の初冬の港町の香りが漂います。
Ingredienti (per 2 persone)
リングイーネ(生パスタ) | 260g | ||
塩鱈 | 180g | ||
小麦粉 | 適量 | ||
ホールトマト | 1缶 | ||
にんにく | 1片 | ||
オリーブオイル | 適量 | ||
塩漬けケイパー | 数粒 | ||
白ワイン | 大さじ1 | ||
塩 | 適量 | ||
黒胡椒 | 適量 | ||
プレッツェーモロ | 5枝 |
※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください
Preparazione
塩ダラはひと口サイズに切り分け、塩胡椒で下味をつけておきます。にんにくは包丁の腹で潰し、塩蔵ケイパーはぬるま湯につけて塩抜き、プレッツエーモロ(イタリアンパセリ)は粗みじん切りにします。
フライパンをじっくり弱火にかけてオリーブオイルをしき、にんにくを置き入れて香りを出してから取り除きます。
塩ダラを皮目を先に両面をかりっとソテーし一旦取り出します。
タラから出たゼラチン質がフライパンの底につくので、白ワインを注ぎ旨みを木べらではがしてホールトマト、ケイパーを加えて少々煮込み、味を見て塩胡椒で調整します。
生パスタをもっちりと茹で上げてソースに加えソースを吸わせます。
ソテーしたタラをソースに戻して馴染ませます。
皿に盛って黒胡椒を挽き、プレッツエーモロを散らしオリーブオイルをまわしかければ出来上がり。
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