2020年2月9日日曜日

Pasta al Pesto di Spinaci con Canestrelli 小柱とほうれん草ペーストの春待ちパスタ

旬のほうれん草をジェノベーゼのようなグリーンペーストに仕立てて、江戸前のぷりぷりの小柱を合わせた春が待ち遠しい季節のパスタ。
立春は過ぎたとはいえまだ暖かさと寒さが交互に訪れる三寒四温の頃、冬のものをベースにしつつ春らしい貝の味とパステルカラーの組合せで季節の変わり目の食卓を春色に彩ります。

2月4日は立春でしたね。
ニュースや天気予報などで暦の上ではもう春ですなんて言ってますが、春の始まりの日=立春とは、気温が下降から上昇に転じる日のこと。
つまり真冬と隣り合わせなのでこの頃はまだまだ寒いんです。
二十四節気では、立春の次の節気が雨水でちょうど雪溶けの頃とされ、その次の節気が啓蟄で冬眠していた虫たちがぽかぽか陽気で土の中から這い出してくる頃とされています。
春が来たなぁと実感するのは暦よりも一ヶ月ほど先になるわけです。
それでも、暗く長いトンネルを抜けたかのように冬のあとに訪れる春は四季の中でもいちばん待ち遠しい季節のひとつ。
少々寒くても早く春気分を先取りしたくなります。
それに応えるかのように冬物一掃セールの後は街のショーウィンドウが一斉にパステルカラーに染まり、テレビからは春色のチークやリップのCMが盛んに流れてきます。
食卓もそろそろ春らしく彩ってみたい。
今日はそんな春らしい淡いグリーンソースのパスタです。

緑色のパスタといえば、香り高いバジリコのペーストをリングイーネと和えたリグーリア地方伝統のペストジェノベーゼが有名ですよね。
ただ、バジリコは夏野菜なのでさすがに真冬のこの時期はないですし、あのスパイシーな香りと風味はやはり夏ならでは。
春を感じるパスタとしてはちょっと違うかなという感じです。
この時期らしい野菜では、苦味のきいたクレソンやルッコラ、菜の花、ブロッコリー、春菊などがいいかなと思います。
ブロッコリーはあらかじめペーストにするというより、軟らかく茹でてフライパンの中でくたくたに煮崩したプーリア風が有名ですね。
今日はほうれん草のペーストにしたんですが、風味がとても柔らかくて春っぽいのと、冬野菜なので季節の変わり目にいただく春待ちパスタのソースとしてもしっくりきます。

緑色のパスタを作る場合、味や香りはバジリコのそれとは違ってても、見た目をジェノベーゼに寄せてオーソドックスに作るのが無難です。
伝統的なジェノベーゼはさやいんげんとじゃが芋が入ります。
ソースのグリーンに埋没して目立たないさやいんげんはいいとしても、じゃが芋のように白っぽいものを入れて、それ以外の色ものは入れずにあまり奇をてらわないのがおすすめ。
季節的には里芋や山うど、蕪、カリフラワー、西洋梨なんかが良さそうですが、ソースとの相性も考えて決めるといいですね。
今日はさいの目に切ったじゃがいもをイメージして小柱を入れました。
貝の味は春を連想させるので春待ちパスタの具としてもぴったりです。

その小柱ですが、普通の家庭ではややなじみが薄いかなと思いますが、直径1cmぐらいの文字通り小さな貝柱。
お寿司の軍艦巻きに乗っかってるのを見たことがある方もいますかね。
帆立の貝柱を小粒にしたような感じですが、実は帆立とはまったく別の江戸前で獲れる青柳という貝の貝柱が小柱。
同じ貝柱なので味は似てなくもないですが、江戸前天丼のかき揚げにはこの小柱が欠かせないとされ、やはり帆立貝とは別物です。
たまにレシピのサイトで帆立の小柱などと書いてる方がいますよね。
まぁ、通販などで紛らわしいネーミングの商品があったりもしますが、先にも書いたように小柱とは青柳の貝柱を指す固有名詞。
小さな貝柱=小柱ではないので、レシピを公開するほどの料理好きなら恥ずかしい思いをしないよう食材の勉強も必要かなと思います。

さて、立春も過ぎて文字通り穏やかに晴れた日が続いていますが、今は暖かい日と寒い日が数日周期でやってくる三寒四温の時期。
そんな春が待ち遠しい季節は、いきなり春らしさ全開の献立ではなく、冬のものと春らしいものの両方を皿の上に共存させ、季節の変わり目を意識した献立にするのが良いですね。
今日のパスタの場合は冬野菜のほうれん草を使っていますが、見た目は淡い色調の春色グリーン、具材も春を思わせる貝を入れています。
冬でもないし春でもないのが今の時期。
そんな過渡期の季節をお皿の上に表現するのも、四季を愛で、季節感を大切にする美しき日本文化ならではだと思いませんか。

Ingredienti (per 2 persone)

リングイーネ(生パスタ)260g
ほうれん草1束
松の実大さじ1
にんにく1片
オリーブオイル適量
パルミジャーノ適量
小柱80g
適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

ほうれん草は葉の部分だけを3分ほど茹でます。
粗熱をとってから手でぎゅっと絞って水気を切りざく切りにします。

にんにくは粗みじん切りに、チーズは粉状に削ります。
フードプロセッサでほうれん草、にんにく(半量)、松の実、塩胡椒、オリーブオイル、チーズを攪拌しペースト状にします。

フライパンを弱火にかけ、残りのにんにくを加えて香りを出します。
小柱を加えて強火で香ばしく焼き目をつけたら火を止めます。
これと並行して深鍋に湯を沸かして生パスタをもっちりと茹でます。
茹で上がったパスタをフライパンに移し、ほうれん草ペーストも加えてソースを絡めるようによく混ぜます。
もう一度味を見て必要なら塩で味を調整します。

皿に盛って黒胡椒を挽きオリーブオイルをまわしかければ出来上がり。

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