2020年10月3日土曜日

Alici Fritte アリーチのフリット

艶々で鮮度の良いカタクチイワシをさっと衣にくぐらせて、高温の油でかりっと揚げたアリーチのフリット。
ぽってりした白無地の皿にどさっと無造作に盛った感じが南イタリアのローカル食堂のよう、気取らない雰囲気の庶民的な一皿です。

秋はイワシやサバ、サンマなど青魚がとびきり美味しい季節ですね。
近年、不漁が続いていたイワシの漁獲量がここ何年か回復基調にあり、今年はとくに春から夏にかけて入荷が安定してたようで、毎日のように安くて立派なサイズのイワシが店頭に並んでいました。
受け売りで適当に書いてるわけではなく、ずっとテレワークだったためお昼や夕方にちょっと歩いていける距離のスーパーに買物に行くので、実際に自分で見て感じていたことです。
大きなのが4尾から5尾で298円あたりが相場でした。
安いので少なくとも週一で買ってきて、夜は炭水化物を控えているため刺身やマリネをおつまみ兼夕食で何度となくいただきました。
残暑の頃には入荷がないなんて日もちらほらありましたが、ここにきてまた安定して獲れだしたようで、売場を賑やかにしてくれています。
ちなみに、明日10月4日はイワシの日だそうです。
読んでそのままの 1=イ、0=ワ、4=シというわけですね。笑

一方、秋に日本近海に回遊してくるサンマは、この時期にしか獲れない秋の味覚の代表といえますが、残念なことにここ何年かは不漁が続き、昨年の水揚げ量はここ半世紀でも過去最低だったそうです。
どれぐらい最低だったかというと、なんと最盛期のわずか1割。
宮城県沖で獲れた新鮮なサンマの塩焼きを無料で振る舞う恒例の目黒のさんま祭りも、昨年は前の年に獲れた冷凍ものが使われました。
そして今年はその最低だった昨年よりさらに悪化するようなんです。
水産庁の発表では今年のサンマは日本近海への来遊量が極端に少なく、漁の主体となる一歳魚の割合も低いため、小さくて痩せてるのに値段はやたら高いという状況が続いています。
秋刀魚は大きくて丸々と太って腹に脂が乗ってるのが美味しいわけで、高いのはまだいいとしても痩せてるサンマは買う気がせず、今年はまだ一度も食べていません。

サンマの不漁の要因は、公海での中国漁船などによる乱獲によるものとする説もありますがそれらの影響はさほどでもなく、むしろ地球規模の環境変動による資源量の減少のせいではないかと言われています。
レジームシフト(魚種交代)という言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、これは数十年周期で地球規模での気候変動が繰り返され、その影響により水産資源の漁獲量が大きく変動するというもの。
わかりやすいのが海水温度で、近年の北太平洋は温暖レジームにあってサンマやアジ、スルメイカ、カタクチイワシなどが豊漁期だったほか、温暖な海域を好む回遊魚の北限がより北に移動し、秋に北海道でブリが大漁となるなどの異変も起きていました。
一方、現在は寒冷レジームにシフトしつつある時期だとされ、サンマやスルメイカの漁獲量が減少に転じ、これに代わって冒頭で書いたようにマイワシの漁獲量が回復基調にあります。
秋の風物詩であるサンマが今後ますます獲れなくなるのは残念ですが、イワシが今後も安く買えるのは嬉しいですよね。

さて、今日の素材カタクチイワシは、実は日本で最も漁獲量が多い魚。
でも、そのわりに鮮魚売場ではちっとも見かけませんよね。
それもそのはずで、カタクチイワシは主に煮干しや目刺しなどの干物に加工されるほか、魚醤の原料になったり、近年では国産のアンチョビやオイルサーディンなどの缶詰の原料や家畜の飼料に使われます。
また、カタクチイワシの幼魚はご存知のとおりしらすの原料。
つまり、加工品として食卓に欠かせないおなじみの魚なんです。
そんなカタクチイワシも寒冷レジームでは減少するとされていますが、今のところ漁獲量が減っているという話は聞きません。
ただ、そもそも鮮魚で流通することが稀なので、見つけたら即買いして是非ともイタリア料理に仕立てたいですね。
日本ではイワシといえば主にマイワシを指しますが、イタリアでは逆にカタクチイワシが一般的、カタクチイワシとくればイタリアンです。

イワシはイタリアでももちろん大衆魚。
高級なレストランなどではなかなか扱ってないですが、トラットリアやオステリアといったローカル食堂や庶民酒場では人気の食材。
ぽってりした白無地の皿にどさっと盛って、南イタリアっぽい雰囲気でいただきたい一品です。

Ingredienti (per 2 persone)

カタクチイワシ20尾
白ワイン大さじ1
適量
黒胡椒適量
小麦粉適量
片栗粉小麦粉の半量
サラダ油適量
オリーブオイル少々
レモン1/4個
プレッツェーモロ5枝

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

カタクチイワシは新鮮なものはウロコがついてるので、水で洗いながら手でウロコを落とします。
包丁で頭を落として内臓を取り除き、流水で洗って白ワインにしばらくひたします。
キッチンペーパーで水気を拭き取り、塩胡椒で下味をつけます。

衣はかりっと揚げるために小麦粉に片栗粉を少々混ぜます。
揚げ油はオリーブオイルだと食味が重たく、べちゃっと揚がってしまうためサラダ油をメインに風味付け程度にオリーブオイルを混ぜます。

油を火にかけ、中温から高温に熱します。
イワシに衣をまぶし、余分な衣をはたいて揚げていきます。
揚げたてを皿にどさっと盛り、プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)の粗みじん切りを散らせば出来上がり。
櫛切りのレモンを添えて食べる前に搾りかけていただきます。

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