2020年10月17日土曜日

Pollo alla Brace 地鶏のブラーチェ

宮崎からお取り寄せした地頭鶏(じとっこ)のもも肉を七輪で炙って、ペコリーノチーズを削りかけていただく地鶏のブラーチェ。
運動量が多く適度な弾力と噛みごたえがあるのが地頭鶏の特徴、定番は柚子胡椒ですが硬質チーズでイタリアンに仕立てても美味です。

以前、全国規模の公共団体に勤めていた時期があります。
東京生まれの東京育ちだったのもあり、それまでは日本の地方のことをあまり知らなかったのですが、この組織に在籍したことで日本の地方の良さを再認識するなど人生の良い通過点となりました。
在任中は東京の本部に5年、千葉と仙台に4年づつ赴任した後また東京に戻るなどしていましたが、東京の本部には地方の支部から頻繁に客人が訪問してきては、その都度手土産をいただいたりするわけです。
仙台の萩の月や甲府の信玄餅、伊勢の赤福など普通にお茶請けのようなものもありましたが、その土地の地酒だったり、お酒のつまみにもなる仙台の笹かまや函館の松前漬け、博多の明太子、福井の小鯛のささ漬けなんかも頂くので、定時後は客人も交え会議室で小宴会が始まることもままありました。

そして宮崎から客人が来るときは決まってこの地鶏の炭火焼きです。
当時はさほど知名度もなかったのですが、東国原さんが県知事になって流行語にもなった「どげんかせんといかん」というキャッチフレーズで積極的にメディアで郷土料理を宣伝してきた結果、今や言わずと知れた宮崎グルメのひとつとして全国に知られるようになりました。
ころころのひと口サイズにカットした地鶏を炭火で焼き、真空パックにしたお土産用の商品が駅や空港で売られています。
そのままでもいいですが、白い脂が溶ける程度にレンジでチンすれば、炭火で燻された香ばしさや、地鶏のジューシーな旨みや歯ごたえまで、郷土の味そのままにお持ち帰りできちゃう優れものなんです。
日本酒にも焼酎にも合うし、そのまま食べても美味しいし、地元っぽく柚子胡椒を少し添えても美味。
とにかく一度食べたら癖になる美味しさなんです。

でも、ご存じない方だと鶏を炭火で焼いたものって要は焼鳥と同じではと思う方もいますかね。
ところが宮崎名物のそれは焼鳥とは見た目も味もまるで違います。
まず串に刺さってないのと、なんといっても色が真っ黒なんです。笑
遠火でじっくり焼く焼鳥と違って、焼き網の上で転がしながら高火力で炙るように一気に焼くことで、鶏の脂が炭に落ちて炎と煙が立ち上り、薫香と一緒に黒い炭の燃えかすが肉にまとわりつくんです。
地鶏のジューシーな旨みと歯ごたえはもちろん、そのまっ黒い色や薫香の香ばしさが味のポイントになっています。

宮崎の郷土料理なので使う鶏も当然宮崎地鶏ということになりますが、県内で唯一地鶏と認定されているのが地頭鶏(じとっこ)です。
地鶏とは、農林物資の規格化、及び品質表示の適正化に関する法律で、在来種の純系によるものか素びなの生産の両親か片親に在来種を使ったものと定められています。
しかも、飼育期間が75日以上のものに限られ、28日齢以降は平飼い=鶏舎内または屋外において、鶏が床面(地面)を自由に運動できるようにして飼育する方法で1平米あたり10羽以下で飼育しなければならないとされています。
地頭鶏は霧島山麓において古くから飼育されていた在来種。
江戸時代に養鶏農家が藩主の地頭に献上していたため、いつの頃からか地頭鶏と呼ばれるようになったと言われています。

さて、今日はそんな地頭鶏のもも肉をお取り寄せして炭火で焼き上げ、イタリアンに仕立てた地鶏のブラーチェ。
ブラーチェとはイタリア語で炭火焼きという意味。
炭で焼くところまではほとんど同じ、仕上げにペコリーノを削りかけてイタリア風に仕立てただけです。
ということは、お土産用に売ってる真空パックの商品を使っても手軽に再現できちゃうわけですが、それだとレシピにならないので、地頭鶏の生のもも肉をお取り寄せし七輪で焼き上げています。
市販の普通の鶏肉(ブロイラー)でもできますが、肉質が軟らかいので歯ごたえのある地鶏を使う方が本場っぽく仕上がります。
ジューシーな地鶏の旨みと炭火で燻された薫香が、硬質チーズの甘みや熟成味と相性抜群です。




Ingredienti (per 2 persone)

地鶏もも肉1枚
白ワイン1/2カップ
適量
黒胡椒適量
鶏油(サラダ油でも可)適量
ペコリーノ適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

もも肉は包丁で筋をとり、しばらく白ワインにひたします。
手の平で塩をしっかりなじませ、小口に切って軽く胡椒をふります。

室内ではなくベランダなど安全な場所で七輪に炭火をおこします。
焦げつかないよう焼き網に油を塗って七輪に置きます。

鶏肉を網に乗せ、トングでころころ転がすように焼いていきます。
皮から脂が落ちて炎が上がるのですが、そうならないようなら油を直接たらしかけて炎を立ち上らせます。
炭の色がつくのと焦げるのとは違うので焦がさないよう注意するのと、焼き過ぎると硬くなるのでちょうどいい加減に焼き上げます。

鋳鉄のスキレットをガスの火にかけて温めます。
焼けた鶏を盛りつけ、ペコリーノチーズを削りかければ出来上がり。
冷めると脂が白く固まったり旨みが減少したりするので、スキレットに盛りつけることでいつまでも温かいまま美味しく食べられますよ。

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