2020年3月8日日曜日

Calamaretti Marinati con Salsa Senape 蛍烏賊と菜の花のマリネ 粒マスタードソース

ふっくら釜茹でにされた旬のホタルイカにさっと蒸した菜の花を添え、すりおろした新玉葱と粒マスタードのソースでマリネした春の前菜。
玉ねぎの辛味と粒マスタードの酸味がぴりっと大人向けの味、合わせるワインも甘くない辛口のロゼにして食卓を春色に彩ります。

3月に入り富山湾のホタルイカ漁もようやく解禁になりました。
昨年は不漁だったんですが今年はまずまず豊漁だそうで、来月にかけて漁のピークを迎えるそうです。
ホタルイカはもう既に何度か食べたよという方もいるかと思いますが、兵庫県など他の産地のものが富山県産よりだいぶ早くから出まわるのでそちらを買われたのでしょう。
かつてホタルイカといえば知名度も漁獲量も日本一だったのが富山県。
しかし今は漁獲量では兵庫県にトップの座を譲っています。
ホタルイカが兵庫県ってなんか意外な気もしますね。

実は、以前は富山湾の漁の解禁はもっと遅くて4月1日でした。
ホタルイカの旬のピークがその頃からになるので、そこまで待った方がサイズも大きくワタの味も濃厚で美味しいんだそうです。
実際、俳句の世界ではホタルイカは晩春の季語。
4月がホタルイカ漁の最盛期で6月中旬頃まで続くそうです。
ところが他の産地の解禁はどこもだいたい3月。
そちらが先に市場に流通するため、シーズン到来を待ちわびた消費者の初物買いの需要は富山県以外の産地に持っていかれていました。
そこでやむなく富山でも漁期を早め、3月1日を解禁としたわけです。
それなのに、近年はそれよりもさらにひと足先を行こうと、兵庫県ではいつのまにか2月上旬には漁を開始するようになっています。
こうなるともう、いたちごっこというかなんていうか。。。
しかも兵庫県の漁法は底引き網漁。
深場を一網打尽にするためたくさん獲れるし早くから漁を開始するので漁期も長く、結果として漁獲量で富山県を抜いてしまったわけですね。

漁獲量では日本一となった兵庫産のホタルイカですが、関係者の方には申し訳ないですが、一般論として、底引き網漁では傷ものが多くなり、漁期が早い分サイズも小さいので品質が良くないと言われています。
市場で高値がつくのは昔も今も富山産。
これは、天然の生簀とも呼ばれる富山湾の独特な地形がもたらす恩恵とそれを活かした漁法によるもので、ホタルイカが産卵のために富山湾に入ってきたところを定置網で獲っているから。
つまりダメージの少ない釣りものの魚が上物扱いされるのと同じです。
産卵期のため身も肥えて味が乗り、漁場も沿岸からは目と鼻の先なので鮮度抜群の状態で港に水揚げされます。
さらに富山湾の至宝というべきこの貴重な水産資源を絶やさないよう、産卵を終えて沖に帰っていくところに網を仕掛けるという徹底ぶり。
産卵のあとはまもなく死んでしまうため、これをいくら獲ったところで環境への影響は皆無で、湾の底で餌が沈んでくるのを待ってるヒラメやカレイの取り分が多少減るぐらいの話です。
ここまで知ると、兵庫県の関係者には申し訳ないですが少々お高くても富山産のホタルイカを買いたくなりますよね。

さて、ホタルイカをイタリア料理に仕立てるにはどうするかです。
ホタルイカは地中海にはいませんが、その土地その季節の食材を使って日本らしいイタリア料理を作るのは素晴らしいことです。
その際、イタリア料理の本質やおもてなしの心を大切に考えること。
ボイルされたホタルイカはワタの濃厚な味があり日本人にとってそこが美味しいんですが、外国人にはそれは雑味でしかありません。
そこで、こちらも旬の新玉ねぎをすりおろして粒マスタードと合わせ、玉ねぎのぴりっとくる辛味とマスタードの辛味と酸味(マスタードにはヴィネガーが入っています)でちょっと大人向けの味に仕立てました。
これは以前に載せた春鰹のカルパッチョと同じ。
春の鰹は血合いの味が特徴的だけど外国人はそれが苦手という理由で、このドレッシングで万人向けの仕立てにしたと書いたと思います。

ホタルイカの酢味噌和えと菜の花の辛し和えを足して二で割ったような今日の料理には、甘くない辛口のロゼを合わせてみます。
ロゼは日本では甘くて初心者向けというイメージで人気がないですが、本場ではそういう偏見はなく、辛口のロゼというのもあります。
淡いピンク色というところもこの季節にぴったりです。

Ingredienti (per 2 persone)

ホタルイカ(釜揚げ)150g
菜の花1/2束
にんにく1/2片
新玉ねぎ1個
粒マスタード小さじ2
オリーブオイル適量
白ワインヴィネガー少々
適量
黒胡椒適量
レモン1/4個

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

にんにくと新玉ねぎをすりおろして、粒マスタード、オリーブオイルを加えてボウルでよく混ぜ合わせ、塩胡椒で味付けします。
粒マスタードにヴィネガーが入っていますが、味を見て酸味が足りないようならヴィネガーを少々加えます。

菜の花は水でよく洗い、食べやすい大きさに切り揃えます。
蒸し器で3分ほど蒸して火を止め、蓋をしたまま冷まします。

ボウルのドレッシングにホタルイカと蒸した菜の花を加えてよく混ぜ、冷蔵庫でしばらくマリネして味を馴染ませます。
皿に盛り、櫛切りのレモンを添えれば出来上がり。

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