2018年6月10日日曜日

Sarde Marinate agli Agrumi 入梅鰯のマリネ 柑橘ソース

しっとりと脂が乗り銀皮がきらきら輝いて見た目も美しい旬の入梅鰯をレモンとオレンジの果汁でマリネし、今の季節に相応しくフルーティですっきりした味わいに仕立てた夏鰯のマリネ。
大きくて肉厚な身は削ぎ切りにして銀杏に切った柑橘類とともに並べ、蒸し暑い昼下がりに冷えた白ワインといただくとびきりの一皿です。

イワシのマリネをやるたびに思うのが寿司ネタの光りもの。
寿司は世界に誇る和食文化の最たるもののひとつで、硬めに炊いた米を酢と合わせた酢飯と生の魚介を握る江戸前寿司がその代表。
ネタは生で食べるのを基本としつつ、場合によってはそれぞれの食材に最も適した技法で調理して寿司に仕立てます。
ふっくらと煮て煮詰めを塗った煮穴子や煮蛤、背中が曲がらないように竹串を真っ直ぐ打って蒸した蒸し海老、生だと歯ごたえが頼りないので茹でてしこしこした食感にした茹でタコ、最近ではネタの表面を炙って旨みを増幅させた炙りトロや炙りサーモンなんてのもあります。
そして光りものと呼ばれる青魚=サバやコハダ、アジ、サヨリ、キス、今日のイワシなどがそうですが、これらは足が速い=傷みやすいため、生ではなく酢で締めるのが一般的。
流通や保存技術の進歩により今では必ずしも酢で締めなくてもそのまま刺身で食べたりもできますが、〆めることで魚自体の生臭さを消したり旨みを引き出したり風味づけにもなるんです。
そして何より光りものといえば昔からそうするのがお約束。
酸で締めてないと光りものを食べた気にならないから、寿司の世界では今でも青魚は酢で締めて出すのが一般的です。

それにしても酢ってすごい。
普通のご飯に生魚を乗せて握ったらご飯が生臭くなりますが、酢飯ならそうならないですもんね、まさに先人の知恵ですよね。
それと青魚を酢締めにするのだって、生のままでは他の魚より生臭さがきついので酢で〆めてみようなんて誰がいつ考えたのか知りませんが、結果としてはとても理にかなってるわけです。
ただこの〆めるというのは魚の身に含まれる水分量を減らして保存性を高めることなので、実際に〆めてるのは酢ではなくて塩の方。
捌いた青魚に塩をたっぷりふってしばらく置くと水分が出てきますが、このとき水分と一緒に臭みも抜けるんですね。
この臭みを含んだ水気や塩は酢で洗い流します。
そして別に用意した漬け酢にしばらく浸します。
酢には先のように臭み消しや旨みを引き出し風味づけしてくれるという効果があり、加えて殺菌作用もあるためまさしく一石四鳥。
ほんと昔の人はよく考えたもんですよねぇ。

西洋の調理技法でこの酢締めとよく似てるのがマリネ。
酸味のあるドレッシングに漬け込んで食べる料理のことで、魚に限らず肉や野菜もマリネします。
魚のマリネの場合はいきなりドレッシングに漬けると臭みが残るので、寿司の光りものと同じようにいくつかの工程を踏みます。
まず塩漬け=ソットサーレで〆めて身の水分と臭みを抜きます。
次に酢漬け=ソットアチェートで殺菌しつつ風味づけします。
日本の場合は半生ぐらいの絶妙な酢の入れ方をしますが、生魚を食べる習慣のなかった西洋では身が真っ白になるまでしっかり漬け込みます。
ヴィネガーで漬けるとややトゲのある酸味に、今日のようにレモンとかオレンジなどの柑橘類を使うとフルーティな仕上がりになります。

寿司の光りものは塩漬けと酢漬けで完成しますが、マリネはこのあとのオイル漬け=ソットオーリオという工程が外せません。
身の表面をオリーブオイルで覆うことで、酸化や劣化を防いで保存性を高めているわけです。
それにあちらではオリーブオイルは日本でサラダ油などを使う感覚とは違い、風味づけのための調味料として料理の仕上げにまわしかけたり、パンに垂らしかけて食べたりするもの。
とくに南イタリアやオリーブオイルの産地リグーリアやトスカーナではほんとになんにでもたっぷり使います。
冷蔵庫で冷やしてイワシの身にオイルがなじんだら、とびきり美味しいマリネの出来上がりです。

Ingredienti (per 2 persone)

マイワシ(大)4尾
レモン2個
オレンジ1/2個
オリーブオイル大さじ3
ローリエ1枚
新にんにく1/2片
塩胡椒適量
プレッツェーモロ5枝

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

イワシは頭を落として腹を開きワタを取り除いて流水で洗います。
薄皮を剥いて両面にたっぷりの塩をふり30分ほど冷蔵庫で〆めます。
イワシから水分が出てきますが、そのとき魚臭さも一緒に抜けるので、水でよく洗い流してから水気をふきとります。

にんにくは芽を取り除いて薄くスライスし、レモンとオレンジは何枚かスライスして銀杏に切り、残りは搾って果汁にします。

にんにくと柑橘果汁、オリーブオイルをボウルに入れて混ぜ合わせて、マリネ用のドレッシングを作ります。
水分と油がよく混ざるようスプーンなどで撹拌し乳化させてください。
ジップロックなどにボウルのドレッシングとイワシ、ローリエを入れ、軽く揉んでドレッシングを馴染ませてから空気を抜きチャックを締め、冷蔵庫で1時間ほど寝かせます。

塩で締めたイワシから塩分が出るため塩を加えていないので、マリネの漬け汁を味見して足りないようなら塩を加えます。
漬け汁は捨ててイワシだけを皿に盛り、銀杏に切った柑橘類を散らし、オリーブオイルをまわしかけて指の腹でぺたぺたと馴染ませます。

プレッツェーモロ(イタリアンパセリ)のみじん切りを散らし黒胡椒を挽きかければ出来上がり。
脂がのっているので胡椒をしっかりめに挽いた方が美味しいです。

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1 件のコメント:

  1. こんばんは★我が家も イワシのマリネを よく食べますが、通常のイワシを揚げてからマリネするスタイルなので今度作ってみようと思います。柑橘系が爽やかにサッパリと美味しそうだ 𓌈

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