2020年6月6日土曜日

Casarecce al Tonno e Pomodoro 近海鮪とトマトのカサレッチェ

この時期に日本近海に回遊してくるマグロをオリーブオイルで香ばしくソテーし、トマトソースでいただく初夏のマグロのパスタ。
主に鯵やトビウオを食べているこの時期のマグロは脂の乗りが控えめ、今が漁期のシチリア周辺のマグロと同じでさっぱり味です。

日本人が大好きなマグロ。
魚なのに生臭いという感じがあまりなく、赤身はさっぱりしているのに旨みがしっかりあり微かに鉄分の酸味があって香りがいいんですよね。
そして脂の乗ったトロともなれば融点の低い上質の脂が舌の上で溶けて中枢神経を刺激し脳が快感だと感じるほどの美味しさ。
主な旨み成分であるイノシン酸と醤油や酢飯の相性がいいため、刺身も旨いですが江戸前の握り寿司で食べることで旨さが増すんですねぇ。
以前は寿司といえば今より高級な存在でしたが、回転寿司の登場によりファミレス的な感覚で家族で食べに行けるものになりました。
そして大人にも子どもにもいちばん人気なのがマグロ。
お寿司の食べ方のセオリーとして、まずは卵焼きからとかあっさりした白身の魚からなど諸説ありますが、そんなの気にせずまずマグロから、次に違うネタに行ったらまたマグロ、その次の次もまたマグロといった感じでマグロ率が高い人も結構いるんじゃないでしょうか。笑
寿司桶に盛られたお寿司や刺身の盛合せでも、彩りという点でマグロの真っ赤なアクセントがないと映えないですもんねぇ。

マグロが寿司で食べられるようになったのは江戸時代末期の頃。
当時、マグロが異常なほど獲れた年があり値段がぐっと下がったため、屋台のファストフードだった寿司に使われるようになったそうです。
当時もっぱら食べられていたのは赤身だけ。
それも醤油に漬けるヅケで握られていました。
脂が多いトロは劣化が早くて扱いにくかったのと、当時の人々の好みに合わなかったことから、アラと一緒に捨てられていました。
なんとももったいない話ですよね。笑
トロが食べられるようになったのは時代が下って昭和に入ってから。
食の西洋化により日本人の嗜好が変化したことと、冷蔵庫の普及により傷みやすいネタが扱えるようになったためです。

さて、そんな日本人が大好きなマグロの旬っていつなんでしょうか。
需要が旺盛で一年中途切れることなく売ってるし、その多くが冷凍品のためわかりづらいですよね。
実は脂が乗る真冬が旬なんです。
有名な大間のマグロは冬場に流通の最盛期を迎えます。
冬に脂が乗るのは水温が低くなるのに備えて皮下脂肪を蓄えることと、この頃に食べている餌が脂の乗ったイワシやスルメイカだから。
青森県最北端に位置する大間は津軽海峡をはさんで函館と向い合わせ、ご存知のとおりこのあたりはスルメイカの好漁場として名高い海域。
ねっとりとしたイカの身がマグロの脂と関係が深いんです。

一方、鰹に初鰹と戻り鰹の二度の旬があるように、マグロにも冬だけでなくもうひとつの旬があります。
春から初夏にかけて日本近海に回遊してくるマグロが初夏の風物詩。
この時期は産卵後であることと脂の少ないアジやトビウオを食べているため、脂の乗りが少なく初鰹みたいにさっぱりした味です。
それでも、近海マグロの入荷がしばらくなかった後に唐突にやってくる春マグロのシーズンに市場は活気づきます。

イタリアで食べられるマグロも、日本の初夏のマグロと似ています。
地中海のマグロはスペインとモロッコの間のジブラルタル海峡を通って大西洋から地中海に入り、シチリア島の近海で産卵します。
イタリアではサルディーニャのカルロフォルテという街とシチリア州のトラーパニがマグロ漁の基地港として有名。
漁期はマグロが回遊してくる5月から6月の限られた期間だけ。
季節柄エサとなるのが日本近海と同じく脂の乗っていないアジなどで、マグロ自身も脂の乗りは少なくさっぱり系です。

今日はそんな初夏のマグロをにんにくの香りが立ったオリーブオイルでソテーし、オレガノの香りのトマトソースに仕立てました。
使うパスタもシチリアのご当地パスタのカサレッチェ。
シチリアのローカル食堂で出てきそうな一皿になりました。

Ingredienti (per 2 persone)

カサレッチェ220g
生マグロ150g
ホールトマト1缶
にんにく2片
塩蔵ケイパー大さじ2
オリーブオイル適量
白ワイン1/2カップ
乾燥オレガノ適量
適量
黒胡椒適量
パスタの茹で汁レードル2杯

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

マグロはひと口サイズに切り分け、にんにくはスライスします。
塩漬けケイパーはぬるま湯にひたして塩抜きしておきます。

フライパンを弱火にかけ、たっぷりのオリーブオイルとにんにくを加えじっくりと香りを出します。
マグロを加えて中火でソテーし、白ワインを注いで強火でアルコールを飛ばしたら、火を弱めてケイパー、ホールトマトを加えます。
塩と胡椒、オレガノを加えて味を調整します。

並行して深鍋に湯を沸かしてパスタを茹でます。
パスタが茹で上がる少し前に茹で汁をフライパンに加えます。

パスタを表示より短かめに茹で上げてフライパンに移し入れ、ソースの旨みをパスタに吸わせながらマンテカーレします。
もう一度味を見て足りないようなら塩で調整します。
皿に盛ってヴァージンオイルをさっとまわしかければ出来上がり。

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