2020年6月27日土曜日

Spaghetti all'Aglione con Ruccola 新にんにくのアリオーネソースとルッコラのスパゲッティ

みずみずしい旬の新にんにくをふんだんにきかせたアリオーネソースのパスタに、間引きしたルッコラを彩りに添えていただく初夏の一皿。
にんにくたっぷりでも新にんにくだとどこかまろやかで優しい味わい、美しい田園風景が続く初夏の南トスカーナの香りが漂います。

この時期、にんにくが旬を迎えていますね。
にんにくなんて一年中あるのではと思った方、間違いではないですが、それは収穫後に乾燥させて水分量を少なくしてから倉庫などに一定期間貯蔵されたもの。
じゃがいもや玉ねぎなどもそうですが、野菜や果物がなんでもかんでも穫れたて新鮮かというと、そうではないんですね。
例えば、以前に甘夏とセロリのサラダ仕立てという記事で、夏みかんは冬に実が成りますが、収穫してすぐは酸味が強くて食べられないため、一定期間貯蔵して甘みが増してから初夏の頃にようやく店頭に並ぶため夏みかんと呼ぶという話を書きました。
ハロウィンでおなじみのかぼちゃも秋冬のイメージがありますが、実は夏野菜なんです。
穫れてすぐは味がしないのでしばらく貯蔵して甘みが増してから出荷が始まるため、出まわるのは秋冬になるというわけです。

にんにくやじゃがいもの場合、貯蔵したりする理由は穫れたてで水分を含んだ状態より傷みにくく日保ちがする、貯蔵しても風味が劣化しないことに加え甘みが増したりして美味しくなる、需要に合わせて計画的に出荷できるようになる、などのメリットがあるためです。
ただ、夏みかんやかぼちゃと違って、収穫したてのみずみずしいものも食べられるし貯蔵したものとはひと味違った美味しさがあることから、旬の時期には新ものとして流通します。
ご存知のとおり、新にんにく、新じゃがいも、新玉ねぎと呼ばれるものがそうで、水分をたっぷり含みあっさりした味わいなのが特徴です。

にんにくの原産地は中央アジア。
遊牧民が暮らすチベットやイラン、アフガニスタンなどがあるあたりでシルクロードを通じて東西文化融合の要所だった地域。
そのため、にんにくは古くから東は中国料理や韓国料理、西はイタリア料理やフランス料理に欠かせない香味野菜のひとつとして、肉の臭みを和らげたり食欲をそそる香味をつけるのに使われてきました。
日本には平安時代の頃に中国経由で伝わったそうですが、当時の日本は肉や油もの料理を食べる習慣がなかったことから、食材としては刺激が強すぎて、主に薬や強壮剤として使われていたそうです。
精進料理などでにんにくやニラ、葱が使われないのも、この強壮作用が煩悩を増長するとされていたからなんですね。

現代の日本でも、にんにくといえば滋養強壮やパワーの源的な位置づけだったり、焼肉や餃子、もつ鍋、豚骨ラーメンなどパンチのきいた味を演出する食材という認知のされ方をしています。
さらに食べたあとは匂うのであまり肯定的なイメージがないですよね。
これがフランス料理やイタリア料理だと同じにんにくの香りでも印象が違ってくるから不思議です。
なんていうか、いい意味で農家の味というか、田舎っぽい雰囲気の味に仕上がる気がします。

さて、今日はそのにんにくをふんだんに使ったトマトソースのパスタ。
このソースのことをアリオーネソースといいます。
トスカーナ地方にピチという手打ちうどんのような郷土パスタがあり、このパスタにアリオーネソースを合わせるのが定番で、このブログでも以前に自家製ピチ新にんにくのアリオーネソースを公開しています。
トスカーナ料理の多くはもともと農家の料理がベースにあります。
例えば精進料理のような豆料理。
いんげん豆のスープにショートパスタを浮かべたパスタエファジョーリ小鳥風というネーミングの白いんげん豆のトマト煮込み、ひよこ豆のチェチーナなどはトスカーナらしい典型的な田舎料理です。
豆料理以外でも、硬くなったパンや雑草(のような野菜)を使ったり、少量の具材でもお腹が膨れやすいシチューのような煮込み料理が多く、二日目のカレーみたいに翌日また煮込んだという意味のリボッリータ、パッパ(パン粥)、野菜シチューの真ん中に卵を割り入れたグラタンのようなアクアコッタ、硬くなったパンを水で戻してサラダ仕立てにしたパンツァネッラなど著名な郷土料理がずらりと並びます。

今日のパスタはピーチではないですが、もっちり太めのスパゲッティを使って素朴な味わいにしています。
また、アリオーネソースだけでは見た目が単調なので、ちょうど間引きしたばかりのベランダのルッコラを彩りに添えてみました。
成長の遅いルッコラセルバティカの若芽も季節の味です。

Ingredienti (per 2 persone)

スパゲッティ(2.2mm)220g
新にんにく6片
ホールトマト1缶
唐辛子1/2本
オリーブオイル大さじ4
ペコリーノ適量
ルッコラセルバティカ適量
適量
黒胡椒適量
パスタの茹で汁レードル2杯

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

新にんにくは細かいみじん切り、唐辛子は種を取って輪切りにします。
ホールトマトはザルで漉して皮や種を取り除いておきます。

フライパンを弱火にかけてオリーブオイルをたっぷりしき、にんにくをソフリットして香りを出し、唐辛子も加えます。
にんにくが色づき始めたらホールトマトを加えて、トマトを潰しながら中火で10分ほど煮込み塩で味を調えます。

隣でパスタを茹でます。
途中、茹で汁をフライパンに加えてのばし、茹で上がったパスタも加えソースを吸わせながら和え、もう一度味見をして塩で調整します。

皿に盛って黒胡椒を挽きオリーブオイルをまわしかけます。
ペコリーノチーズを削りかけてルッコラの葉を添えれば出来上がり。

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