2020年12月5日土曜日

Maiale Bollito con Fagioli Lessi トスカーナ風茹で豚

適度に脂身があり煮ても焼いても美味しい豚肩肉をかたまりで茹でて、その煮汁で炊いた白いんげん豆を添えた豚肩肉のボッリート。
分厚くスライスした肩ロース肉は断面までしっとり、肉の旨みを吸ってぱんと膨らんだ豆もほっこり沁みる初冬の一皿です。

このブログをご覧になる方はイタリアンレストランでディナーコースを召し上がる機会がそれなりにある方なのかなと思いますが、最近食べた料理で印象に残ってるのは何ですか。
やっぱりメインの肉料理でしょうか。
それとも前菜、もしくはパスタ、デザートでしょうか。

前菜だと、今どきはどこも盛り合わせで出すことが多いと思います。
季節の魚介のカルパッチョ野菜のグリルやサラダキッシュのようにカットした玉子焼きフリッタータスライスしたての生ハムやチーズ、煮豆ブルスケッタ田舎風のパテフリット小魚などを揚げてから甘酢に漬けた南蛮漬けカルピオーネなどなど、わくわくするような料理がちょこっとづつ盛ってあって楽しいですよね。
たかが前菜でしょ、などと侮るべからずです。
前菜の数々にこそイタリア各地の郷土料理のエッセンスが詰まってるしお店の考え方やシェフの力量も推し量れるというものです。

そして前菜に続いて出てくるのがプリモピアット。
いわゆるパスタやリゾットといったイタリア料理特有の炭水化物主体の料理で、日本のイタリアンレストランでは和食の形式に倣ってコースの最後に〆めの料理として出される場合もあるようですが、本来は前菜と主菜の間に出されるもの。
プリモピアットが第一の皿で、メインはセコンドピアット=第二の皿と呼ばれていますよね。
リゾットよりもパスタをチョイスするケースが多いと思うのでパスタを例にしますが、こちらも前菜に負けないほど郷土色豊かに作り込まれたソースがパスタにしっとり絡んで、とびきり美味しいはずです。
家庭で作るパスタのように水分をどんどん吸ってぱさぱさになるなんてこともなく最後までしっとり美味しい状態で食べられますし、パスタを食べ終わっても皿にソースがたくさん残るところも贅沢。
やっぱりプロの仕事は違います。

ではメイン料理はどうでしょうか。
第二次大戦後に今のイタリア共和国が成立したわけですが、それ以前はイタリアの各地方は様々な国家に征服されたり分割されたりというのを歴史的に繰り返し、人種や文化の異なる地域がたまたま寄せ集められてひとつの国家として成り立ってるのが現在のイタリアです。
つまり昔からイタリア料理というものがあったわけではなく、各地方の郷土料理を集めて体系づけしたものが現代イタリア料理。
そのなかでもコースのメイン料理として提供されるのが、肉料理からはスペツァティーノやトリッパなどの煮込み料理やビステッカ、ミラノ風コトレッタ、ローマのサルティンボッカ、ポルケッタ、挽肉団子料理のポルペッティ、うさぎ肉の煮込みや鶏肉の猟師風煮込みなど。
魚料理では漁師料理ズッパディペッシェ(地方で呼び名はいろいろ)にヤリイカに詰物をして調理したカラマリリピエーニ、海老やタコなどのフリットやシチリアのカジキマグロのグリルなどがあります。

でも、ディナーコースで食べたメイン料理って〇〇和牛のローストとかではなかったですか。
そうなんです、私たちがイタリアンレストランでいただくディナーとはちょっと特別で非日常的な食事。
そのメインとなる主菜が田舎っぽい郷土料理だったりするのは、なんかちょっと違うし、そこをあまり期待してないのではないでしょうか。
お店側もコースはそれなりの料金設定をしているため、メイン料理にはある程度原価の高い素材を使わないといけない事情があります。
美味しいのは間違いないでしょうし顧客の満足度も高いと思いますが、でもそれってイタリアっぽいようでイタリア料理ではないですよね。

今日の煮豆を添えた茹で豚ボッリートもそんな田舎っぽい一品。
とくに高価な素材を使ってるわけでもなく、レストランで食べる機会はそういうわけであまりないかもしれないですが、季節的には秋も深まり冬の入り口に立ったこれからの時期に身体が欲する料理。
意外に簡単なので是非家庭で作ってみていただきたい一品です。
豚肉といんげん豆の炊き合わせはイタリアでは定番すぎる組み合わせ、肉の出汁を吸ってぱんと膨らんだ豆がほっこり沁みます。

Ingredienti (per 4 persone)

豚肩ロース肉ブロック1kg
にんにく2片
セージの葉5枚
ローリエ2枚
白いんげん豆(乾燥豆)200g
白ワイン1/2カップ
適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

白いんげん豆は前の日からたっぷりの水で戻します。
豚肩ロースのブロックは叩いて筋を切ってから塩をたっぷり擦り込み、ネットに包んでおきます。

大きめの鍋に水、白ワイン、セージ、ローリエを加えて沸騰させ、肉を擦り込んだ塩ごとそのまま投入し塩茹でにしていきます。
茹で時間は40分ほど。
肉を取り出し竹串を刺して透明な肉汁が出てくれば大丈夫です。
アルイホイルにくるんで温かい場所に置いておきます。

鍋にいんげん豆を戻し汁ごと加え、しょっぱいようなら少し捨てて水を足し、中火にかけます。
沸騰したら弱火にして、アクが出てきたらすくい取ります。
1時間ほど煮て豆が軟らかくなったら塩胡椒で味を調えます。

肉を分厚くスライスします。
穴あきレードルで豆をすくってスープ皿に敷き、その上に豚肉を乗せてオリーブオイルをひとまわしし、黒胡椒を挽きかければ出来上がり。
芳醇な香りの白ワインと合わせていただきます。

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5 件のコメント:

  1. 最近更新がありませんがお元気でお過ごしでしょうか?
    美味しそうなレシピばかりで,一度作ろうといくつもメモをとっています.

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  2. イタリア人が日常に食べるイタリア料理を極めて的確にお伝えになるWeb-Siteと楽しみにしています。更新されていないようにとてもきになります。これまでのレシピをまとめて書籍にされることも大いに期待しています。

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  3. Siamo proprio in attesa la tua notizia simpaticissima, ci manchi tanto e tanto. Spero che tu stia bene e che comincerai a piu presto possibile. Ti mandiamo piu sinceri saluti.

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  4. お元気ですか?参考にして作っている者です。
    どれも美味しくてとても温かい食卓になります。
    更新ないので寂しいです。
    新しいお料理、是非紹介してください。

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  5. 私もいつも参考にさせて頂いております。巷のイタリアンレストランより、イタリアで食した料理を想い出させて下さいます。私も更新を楽しみに待っています。

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